キヤノンの自信というより、むしろ風格すら感じさせる(鹿野カメラマン)

 歴代の5Dシリーズを使ってきた僕がMark IVを手にした第一印象は、「あれ、重たくなった?」。だが、発表されたスペックを見ると、Mark IIIより60gも軽くなっており、重くなったというのは僕の錯覚だった。使い慣れたレンズを装着して持ち歩くと、ボディーが軽くなったので重心が若干レンズ側に寄ったことが、そう感じさせたのだ。

 電源スイッチを入れてレリーズを切ると、その感触はMark IIIともEOS 5Ds/5Ds Rとも異なる印象。キヤノンによると、ファインダーの像消失時間をMark IIIより短縮したそうだが、確実にそれを実感できる。Mark IIIのウイークポイントだった甲高いシャッター音も改良され、5Ds/5Ds Rのような上品な音になった。ただ、僕の体感ではミラーショックがやや大きい気がした。

 外観はまったくのキープコンセプト。ぱっと見てMark IIIと違う点といえば、マルチコントローラーの下に測距エリア選択ボタンが新設されたこと。これはカスタマイズ可能で、「測距エリアダイレクト選択」を選ぶと測距エリアの広さや形状をスムーズに変更できる。ただ、僕は基本的にスポット1点AFしか使わないので、このボタンに「ISO感度設定」を割り当ててみた。Mark IIIでは、右手人差し指で軍艦部のISOボタンを押したあと、その指でメイン電子ダイヤルを回していたのだが、測距エリア選択ボタンのおかげでより素早い変更ができるようになったのはありがたい。

 背面の液晶モニターがタッチパネル方式になったのは、大きな進歩といえる。デュアルピクセルCMOS AFに対応したおかげで、ライブビュー時のAFはMark IIIよりかなり速くなった。これら2つの改良点だけでも、Mark IIIからMark IVに買い替える価値はあると思う。

 蛍光灯下で撮影すると露出ムラが起こりやすいが、それを抑えるフリッカーレス撮影にも対応した。7D Mark IIにはすでに搭載されていたので、次期5Dには必ず搭載されるだろうと思っていたが、Mark IIIユーザー(とくに職業カメラマン)にとってはこれも買い替えのポイントになると思う。

 気になるのは、まったく新しい3040万画素CMOSセンサーの画質だ。今回使用したのは試作機で、製品版とは画質が異なるとのことだったが、実写した限りではマイナス要素など見当たらず好印象。5Dシリーズは、代を重ねるごとにダイナミックレンジの広い絵作りに進化していったが、Mark IVはJPEGの画像を見てもダイナミックレンジがかなり広いことが分かる。階調の幅が広い画像が必ずしもいいとは限らず、実際Mark IVの画像は僕個人の基準からすればやや眠たく、1D X系に近付いた印象だ。しかし、階調の幅というのは広いものを狭めることはできるが、狭いものをそれ以上に広げることはできないので、これは正しい進化だと思う。製品版はさらに調整される可能性はあるが、この傾向なら間違いないといったところだ。

逆光でシルエットになった部分を見ると、解像力の凄みを感じる。つぶれたように見えるシャドウ部分も、RAWデータを調整していくと階調がしっかりと残っていた(EF16-35mm F4L IS USM、1/100秒、F8、ISO100、RAWデータをDLO50%適用で現像 ※試作機による撮影)
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人形の質感をとてもリアルに再現。ダイナミックレンジが広いと、こうした質感描写にもいい影響をもたらす。青空のすっきりとした色合いにも、EOSらしさが感じられる(EF16-35mm F4L IS USM、1/400秒、F4、ISO100、RAWデータをDLO50%適用で現像 ※試作機による撮影)
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 新機能である「デュアルピクセルRAW」(DPRAW)によるボケシフトは、実際に試してみると確かに前ボケが左右に動く。ただ、いろいろと条件があるのか、僕が試した限りではボケの移動量はほんのわずかだった。ネイチャーなどで前ボケを少しずらしたいが、被写体はもちろんカメラもこれ以上動かせない……といったときには有効かもしれない。DPRAWでは、解像感補正やゴースト低減といった機能も得られるが、ファイルサイズが通常のRAWの倍になるので、なかなか常用しづらい。しかし、いずれはこれが標準のRAWデータに内包されるような気もする。今は過渡期かもしれないが、新機能を積極的に盛り込んでくるキヤノンの姿勢は大いに評価したい。

 で、Mark IIIユーザーの僕はMark IVに買い替えるのか?というところだが……。40万円超えの実売価格には躊躇してしまうものの、タッチパネルやフリッカーレス撮影、画質の進化などなど、Mark IVはすべてにおいてスペックアップしているわけで、結局は買い替えてしまうんだろうなぁ、というのが正直な感想だ。

鹿野貴司(しかのたかし) 写真家
氏名 1974年東京都生まれ。雑誌や広告のほか、カメラ・レンズのカタログなど、幅広い撮影を手がける。仕事でデジタルを使い倒す一方、フィルムをこよなく愛し、ハッセルブラッドやローライフレックスで作品を撮り続けている。9月下旬には3冊目の写真集「山梨県早川町 日本一小さな町の写真館」を平凡社から発売。個人ブログは「とれどれぐさ」。