IoT(インターネット・オブ・シングス)を活用して、住宅内のあらゆる家電製品を操作する――。

 そんな快適な住空間を提供する「スマートホーム」サービスに本格参入したのが東京電力グループだ。販売子会社の東京電力エナジーパートナーは8月7日、ソニーモバイルコミュニケーションズと共同開発した子どもの見守りサービス「おうちの安心プラン」の提供を開始した。東京電力の持つ営業力を生かして、早期に数十万件規模の契約獲得を狙うという。

 「これまで当社は電力を提供してきたが、社会の変化をチャンスと捉えて、IoTを活用した新たなインフラ事業者になれると考えている」と、東京電力エナジーパートナーの川崎敏寛社長は、スマートホームサービス参入の狙いを説明する。

 一方、ソニーモバイルの十時裕樹社長は「スマートホームは特に成長分野と捉えている」と期待を口にした。2社は今後、さまざまな住宅設備の司令塔を担うスマートホームのインフラ事業者を標榜する。

左から東京電力エナジーパートナーの川崎敏寛社長とソニーモバイルの十時裕樹社長
左から東京電力エナジーパートナーの川崎敏寛社長とソニーモバイルの十時裕樹社長

 おうちの安心プランは、そうした将来像を見据えた、スマートホームサービスの第1弾となる。ソニーモバイルが開発したWi-Fiルーター「スマートホームハブ」、玄関の扉の近くなどに設置するセンサー、設置したセンサーに反応する「スマートタグ」をセットで提供するサービスだ。

 サービスは専用のスマホアプリ「TEPCOスマートホーム」と併せて利用する。センサーは玄関の開閉や、室温の上下、スマートタグの通過などに反応し、利用者の設定に応じてスマートホームハブを通じてアラートがアプリに届く。

スマホ向けのアプリで家の様子が分かる
スマホ向けのアプリで家の様子が分かる

 具体的には、留守中の玄関の開閉を検知したときや、スマートタグを持たせた子どもが帰宅したときにセンサーが反応して、アプリに通知が届く。これにより自宅の異変や、子どもの無事を手元のスマホで確認できる。

 受け取りたい通知はアプリ上で設定可能だ。現状は玄関の開閉や、室温の上下、スマートタグ保有者の帰宅時など設定できる項目に限りがあるが、随時項目を追加して利便性の向上につなげる。

今後エアコンなども操作可能に

 東京電力とソニーモバイルは今後、スマートホームハブを軸にサービスを拡張していく。

 「スマートホームハブは通常のWi-Fiルーターとは異なり、(近距離無線通信規格の)『Bluetooth』や赤外線通信も搭載しているのが特徴だ」(ソニーモバイルのIoTビジネスグループバイスプレジデントの渡辺潤氏)。このスマートホームハブを通じてエアコンや照明、音響機器などを操作できるようにする。

 例えば、室温が高まったことをセンサーが設置したときに、自動的にエアコンが稼働するといった利用法を想定している。ソニー製品に閉じるのではなく、他社製品との連携も図るなど、オープンなサービスを目指すという。

スマートホームハブと持ち運び可能なプロジェクター「Xperia Touch」との連携デモを披露した
スマートホームハブと持ち運び可能なプロジェクター「Xperia Touch」との連携デモを披露した

 おうちの安心プランの利用料金はスマートホームハブ、およびセンサーの設置費用が1万8000円、月額費用は3240円となる。また、スマートタグ1つにつき4320円がかかる。

 2年間の利用を前提とした契約の場合には設置費用が無料になるものの、やや割高感が否めない。このギャップについては、新サービスを今後提供することで埋めていく。「既存の顧客は契約期間中であれば、追加料金を支払うことなく利用できるようになることを見据えた料金設定になっている」(東京電力エナジーパートナー常務取締役の田村正氏)。

 スマートホーム市場では、スマートスピーカーを開発する米アマゾンや米グーグルといった大手ネット企業とも競合となる。東京電力とソニーモバイル連合は、それらの企業との差異化が求められる。お茶の間の覇権争いは激しさを増しそうだ。

(写真・文/中村勇介=日経トレンディネット)

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