超小型コンピューターを使った電子工作などを楽しむギークな人々を指す言葉“メイカーズ(Makers)”。最近は、プログラミング教育の必修化やSTEM教育への注目度の高さから、自分の子どもを将来はメイカーズにしたい(?)と考える親たちからも関心が高まっている(関連記事「プログラミングの次はメイカーズ!日本で根付くか?」。そのメイカーズな人々が一堂に会するイベント「Maker Faire Tokyo 2017」(以下、MFT)が2017年8月5日、6日の2日間、東京ビッグサイトで開催された。
筆者には来年小学校に上がる長男がおり、プログラミングやSTEM教育は目下の関心事。長男本人も映画やアニメの影響で「将来は自分で戦闘用のスーツを作ってみたい」と日ごろから工作にいそしんでいる。MFTは子どもの興味をさらに引き出す絶好の機会と思い、長男を伴ってイベントに参加した。
作者の解説付きのデモンストレーションが楽しい!
MFTではほとんどのブースで実際に展示された作品を手で触れたり、動かしたりという体験ができる。長男が真っ先に食いついたのが、ホームセンターで売られているようなエンジンブロアーを使ったホバークラフト。
手作り感あふれるホバークラフトを制作したのは「超小型ホバークラフト研究室」というサイトを運営する伊東嗣泰氏。本業は会社員で、2011年から趣味でホバークラフトを作り始めたそうだ。試乗もできるとあって、ブースには人だかりができていた。
また、長いこと見入っていたのはロボットプロレスだ。二足歩行のロボットをリモコンで動かしながら、プロレスさながらにリングで戦わせており、観戦している子どもたちがロボットを動かす出展者の手元と、実際に動くロボットを見比べているのが印象的だった。
主催者によると、子どもたちがものづくりへの興味を持つきっかけ作りになればと2008年に有志でロボットプロレス団体を立ち上げ、これまでに日本だけでなく米国や中国でもイベントを開催しているという。
長男も少しロボットを操作させてもらった。まだゲーム機やラジコンで遊んだことがないので実際にうまく動かすことはできなかったが「自分の指令通りにモノが動く」という仕組みに興味を持ったようだ。
企業出展ブースでは最新「おもちゃ」にも触れる
企業が出展するブースも多かったが、長男が「やってみたい!」と食いついたのが、ソニーの新規事業創出プログラムから生まれた「toio」(トイオ)だ。
「toio」は、カートリッジを交換するとゲームや工作など数種類の遊びが楽しめるが、会場では自分で作ったブロックのロボをコントローラーを使って紙相撲のように対戦するゲームを体験した。リング状のコントローラーを前後左右に動かすだけなので、直感的な操作ができるらしく、ゲーム慣れしていない長男でも十分に楽しめた。
「toio」は、子どもにとっては単に「おもちゃ」かもしれないが、親から見れば「自分で作って楽しむ」という学びの要素も含まれている。メイカーズの域に達するのはなかなか難しいだろうが、こうして最新の技術に触れることで気軽に子どもが“メイカーズ気分”が味わえるのも魅力的だ。
エデュケーションゾーンが充実も、対象年齢は上?
事前に注目していたのは大学の研究室や中学高校の科学・技術部の出展者が集まったエデュケーション&キッズゾーンだったのだが、長男には少し内容が難しかったようだ。
「子どもプログラミング喫茶」という子ども向けのプログラミング体験メニューを15~20分程度で楽しめるブースもあったが、体験しているのは小学校中学年から高学年くらいの子どもが多かった。年齢により感じ方や楽しみ方が違うので、来年、再来年以降にまた再訪したい。
長男ではなく、筆者が個人的に興味を持ったのは「ファブ女」という出展者。カラーフードプリンター、レーザーカッター、3Dプリンターなどのデジタルファブリケーションを使ったものづくりを提案しており、会場では食べられるインクを使い、書いた絵をその場でクッキーにプリントしてくれた。大日本印刷の女性社員を中心とした有志のユニットということで、“ものづくり女子”の今後の活動にも注目したいところだ。
盛況のうちに幕を閉じたMFT。来年はさらなる規模の拡大も予想される。子どもはもちろん、大人も楽しめるイベントなので、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
(文/樋口可奈子)