“キャリアの後追い”の先を見据えた戦略が必要

 格安SIM・格安スマホの利用者拡大には、MVNO自身にも改善すべきことがあることも忘れてはならない。

 その代表的なものの1つが、勉強会でも記者から多く質問が挙がっていた、口座振替などクレジットカード以外での支払い方法への対応である。

 MVNOはサービスを安価に提供しながらも、ユーザーからの支払いを確実に回収できるようにしたり、スマホの分割払いの与信をしやすくしたりするため、決済手段をクレジットカードに絞っているところが非常に多い。だが地方のシニア層などには、クレジットカードを利用しない人も少なからずいる。

 MVNOが大手キャリアからの移行を見込むには、知名度やサービス、販売の充実だけでなく、入り口となる決済手段の充実も求められるようになってきているのだ。

 実質0円禁止の影響などによるユーザー層の拡大は、MVNOにとっては顧客拡大へとつながることから喜ばしいことであることは確かだ。だがユーザー層が広がれば広がるほど、MVNOに対して価格の安さだけでなく、キャリアと同じ、あるいはそれに近いサービスを提供してくれることを求めるユーザーも、また増えていくだろう。実店舗での販売や音声通話定額、そして決済手段の多様化が求められるようになってきたのも、ユーザー層が拡大し、従来とは異なるユーザーのニーズに応える必要が出てきたが故といえる。

 しかしながら、単にキャリアの後追いを続けるだけでは、当面のユーザー獲得には有利に働くものの、いずれキャリアの廉価版という位置付けにとどまってしまい、差異化も進まない。そして結果的には、一層の価格競争に巻き込まれて「格安」から抜けられなくなってしまうという危険性も秘めているように思う。

 それだけに2016年後半以降、MVNOには現在の市場拡大の先を見据えた戦略とサービス設計が強く求められるだろう。次の競争に備えた下地作りができるかどうかが、MVNO各社の将来を大きく左右し、「勝ち組」を決めることになるのではないだろうか。

(文/佐野正弘)