ロボ・ガレージ代表取締役でロボットクリエーターの高橋智隆氏は2017年7月26日に開催された「D3 WEEK 2017」で、「ロボット時代の創造」というテーマで講演した。2003年に京都大学工学部卒業と同時に「ロボ・ガレージ」を創業し、京都大学内入居ベンチャー第1号となる高橋氏は、人型ロボットの研究者として最近ではシャープのロボット電話「ロボホン」の開発で知られる。このほかにも、パナソニックの乾電池「エボルタ」でグランドキャニオンの崖をロープで登るロボット「エボルタくん」を開発するなど、ロボット分野では多くの実績がある。

ロボ・ガレージ代表取締役のロボットクリエーター、高橋智隆氏
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 エボルタの新型ロボット「エボルタNEOくん」は2017年7月にもノルウェーのフィヨルドをロープで登ったという。グランドキャニオンの2倍近くの距離があり、ロボットの性能は飛躍的に向上している。「ロボットに滑車を付ければもっと簡単にロープを登ることはできるだろう。しかし手足を使って一生懸命に登っている姿を見ると、たとえロボットで応援したくなる」と高橋氏は言う。

 講演会場にはロボホンをはじめ、実際にフィヨルドを登ったエボルタNEOくんなども持ち込まれたほか、ロボットが音声認識やAI(人工知能)で高橋氏と「会話」しながらデモンストレーションする場面もあった。さらにダンスや腕立て伏せといったロボットの愛らしい動きに、多くの参会者は魅了されていた。ロボットをつくることができるデアゴスティーニの週刊誌「週刊ロビ」の発刊にも加わっており、購入者の約4割が女性だったと明かした。もはやロボットは男性だけが関心を示すものではない。

 ロボットが周囲の状況を判断して自律的にサッカーボールを追う「ロボカップ」世界大会では、高橋氏が率いるチームが5年連続して優勝したという。試合の模様が映像で流され、人間のサッカー選手と全く同じ動きとは言えないが、それでもゴールを決めるロボットの姿は人間と重なった。

会場に持ち込まれたロボホンと高橋氏の掛け合いなど、ロボットのユニークなパフォーマンスに多くの来場者が魅了された
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「ロボカップ」世界大会での映像を会場で表示。ドイツのチームを相手に善戦する日本のロボットが相手の隙を見てゴールを決めた場面も
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 ロボットの性能向上につれ、多くの人はロボットの役割に大いに期待するが、「そこに誤解がある」と高橋氏は指摘する。今のロボットは「お手伝いさん」のようにはならないという。ある大手企業が先端技術を駆使して開発したロボットが、洗濯物をたたむことも満足にできなかったそうだ。人間にとって当たり前のような行為こそ、実はロボットにはたいへん難しい。逆に人間には難しい分析や探索などの分野こそ、ロボットの本領を発揮するものだという。そして、ロボットに期待される役割のほとんどが、現在のスマートフォンでも可能だという。

 だが、そこで重要になるのがユーザーインターフェースの役割だ。音声認識の性能は飛躍的に向上しているはずだが、実際に使われる頻度は少ない。やはりスマホに話しかけるには抵抗があるのかもしれない。ロボホンはそんなマイナスイメージを逆転させるコミュニケーションロボットの代表格で、「いわばスマホに手足を生やしたもの」と高橋氏は表現する。

 単なるスマホでも、コミュニケーションロボットとして顔や手足を持つことで、今までと異なる新しいユーザーインターフェースになる。デザインによっては、ロボットの枠を超えた新しい存在にさえなるかもしれない。「デジタルにデザインで人間の感覚や愛着を与えることで新たなサービスにつなげていく。そこにこそ未来があるのではないか。現在のスマホに代わって、ロボットを1人1台ずつポケットに持ち歩く時代を5年以内に実現させたい」と高橋氏は力を込める。

(文/大山繁樹=日経デザイン)

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