お掃除ロボットの代名詞とも言える「ルンバ」。世界で1800万台普及しており、ロボット掃除機シェアの6割以上を占めているという。

 ルンバの技術は、「スマートホーム」実現のカギになる――。7月26日に開幕した「「D3 WEEK 2017」(日経BP社主催、六本木アカデミーヒルズ)の基調講演で、米アイロボット VP of Technologyのクリス・ジョーンズ氏はこう話した。その心は――。

「The Future of Robots in the Smart Home」と題して講演した米アイロボットVP of Technologyのクリス・ジョーンズ氏
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 スマートホームとは、例えばこんなイメージだ。

 朝になると自動で寝室のブラインドが開き、エアコンがつき、お気に入りのラジオが流れる。枕元にいるホームロボット「テラ」に「娘の様子を見に行って」と頼むと、子ども部屋に入って娘と会話する。1階のリビングに降りると、お気に入りのラジオの続きがかかっている。

 朝食を食べていると娘が「カバンがない!」と騒ぐ。テラに「カバンはどこ?」と聞くと、「玄関にあります」と即答。家族が家を出ると、ルンバが家の中の掃除を始める。留守中、飼い犬が窓の外に向かって吠えているので、テラが窓の外を撮影したところ、郵便配達の姿が。家族が帰宅するとエアコンと照明が自動でつき、テラが留守中の家や犬の様子を写真とともに家族に伝える――。

 こんなスマートホームは、「そんなに先ではない未来に実現する」とジョーンズ氏は話す。「テクノロジーの多くは、既に存在している」ためだ。自動で調光できる照明は既にあるし、ルンバも実在する。ネットに接続された「IoT」(インターネット・オブ・シングス)機器も増えている。

 ただ実現には「問題もある」という。設定の複雑さだ。ブラインドやエアコンや照明1つひとつについて、どんな環境でどう動いてほしいのかを設定するのは面倒だ。「ユーザーは複雑なものは管理できない。スマートホーム実現のためには、家が自動で機器を設定する必要がある」。

 そのためのカギを、ルンバが持っているという。

スマートホームとルンバの共通点

 「スマートホームとルンバには、共通点がある。『知覚』(SENSE)、『行動』(ACT)、『思考』(THINK)の3つだ」とジョーンズ氏は言う。

 ルンバは壁や階段の位置をセンサーで「知覚」しており、ごみを吸い上げたり動き回ったりするなど「行動」もできる。電池が減ったら「充電しよう」と自ら「思考」し、経路を考えながら充電台まで移動する。

 スマートホームも同様に、周囲の温度や明るさ、部屋や家具などの配置をセンサーで「知覚」。温度が高ければエアコンのスイッチをオンにし、まぶしければブラインドを下げるなどの「行動」をする。ここまでは既存の技術で実現できているという。

 まだ実現できていないのは「思考」だ。「温度が高ければ冷房をつける」など、センサーがとらえた知覚情報に単純に反応する技術は既にある。だが、「冷房をつけるのは人がいる部屋だけにしよう。冷房効率を上げるため、ブラインドは下げよう」など、家全体や人の動きを勘案して「思考」できる技術はまだないという。

 そこでルンバの技術が生きる。ルンバはセンサーによって壁や家具や階段などの位置を把握し、マップを作りながら掃除している。同社のアプリを使えば掃除したエリアをマップ表示できるなど、「空間情報の理解に強い」(ジョーンズ氏)のだ。

 この技術をスマートホームに応用すればどうなるか。部屋や家具の配置、人の位置などを、ホームロボットやルンバを通じて“家自身”が把握し、「冷房をつけて」と言うだけで「人がいる部屋の冷房だけをつけよう」と判断したり、「ソファー横の照明を点けて」と言えば、数ある照明の中からその照明だけを選んで点けるなど、事前に設定しておかなくても、ユーザーが期待する快適な状態を家自身が判断する。「ロボットは、スマートホームのセンサーになる」(ジョーンズ氏)というわけだ。

 創業から27年。「ロボットがいかに生活を良くするか」を一貫して考えてきたというアイロボット。今、「掃除機」の枠を超え、スマートホームの実現に向けた研究開発を進めている。

(文/岡田有花=ジャーナリスト)

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