日経BP社が主催する大型イベント・セミナー「D3 WEEK 2017」。2017年は7月26日(水)から28日(金)の3日間、「Beyond The Customer First」をテーマに、東京・アカデミーヒルズ(六本木ヒルズ49階)で開催する。本稿で紹介する製造、小売り、金融、インフラ、医療分野などそれぞれに強みを持つAI企業9社は、27日午後2時から「AIスタートアップ最前線」の枠で各社持ち時間10分間のリレートーク形式で講演する。

 インターネットは、小売り、メディア、映画・音楽、旅行などの産業、コミュニケーションを大きく変え、米アマゾン・ドット・コム、米グーグル、米フェイスブックなどの巨大企業を生み出した。ネットの次の社会変革は人工知能(AI)が起こすと注目され、技術を持つスタートアップ企業への投資が過熱している。

 この7月には、米グーグルがAIスタートアップに投資するベンチャーキャピタルプロジェクト「Gradient Ventures」を発表。既に4社へ投資している。その1社である米アルゴリズミア(Algorithmia)は、アルゴリズムのマーケットプレイスを運営。様々な技術者が開発した自然言語処理、画像認識、ディープラーニング(深層学習)など約3500ものアルゴリズムを公開しており、ソフトウエア開発者が購入、利用できる。アルゴリズミアが6月23日に発表した1050万ドルの資金調達にグーグルも参加している。

 日本企業ではトヨタ自動車が、AI研究を進める米トヨタ・リサーチ・インスティテュートを通じてベンチャーキャピタル(VC)会社の米トヨタAIベンチャーズを設立。1億ドル(約110億円)をAIや自動運転関連の企業に投じる。SOMPOホールディングスグループの損害保険ジャパン日本興亜は、米国シリコンバレーを中心とするスタートアップ企業に特化して投資をするVCを立ち上げた。出資総額は4000万ドル(44億円)だが、8000万ドル(88億円)まで拡大可能としている。

トヨタ・リサーチ・インスティテュートのギル・プラット社長
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 日本でもAIスタートアップ企業が数億円規模の資金調達をする例が続出している。大企業にとっては新たな事業を作る上で、スタートアップ企業との連携が欠かせなくなった。大企業のオープンイノベーションを支援するCreww(東京都目黒区)はこれまでに、スタートアップ企業とのマッチングイベントを80回以上実施している。

 それでは今時の国内AIスタートアップ企業は、どんな事業を手掛けているのだろうか。日経BP社が開催するイベント「D3 WEEK 2017」内の「AIスタートアップ最前線」に登壇する9社の事業内容から見ていこう。

工場の異常検知

 クロスコンパス・インテリジェンス(東京都千代田区)は、製造業の工場における異常検知、予知保全を実現する製造業向けAI開発環境「M-IX」を提供する。電流、電圧、温度、振動、画像、音響、動画など幅広いデータに対応して異常検知を実現する。既に大手半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスと共同で、深層学習の活用で製造装置の異常を予測する技術を開発するなどの実績を残している。

マンションでAI管理人

 Nextremer(東京都板橋区)はAIを用いた対話システムの研究開発をしている。7月からは大京アステージ、穴吹コミュニティ、東京電力グループのファミリーネット・ジャパンと共同で、マンションの管理員やコンシェルジュをサポートする「AI管理員」「AIコンシェルジュ」の実証実験を実施している。居住者や管理組合の問い合わせに音声対話型サービスで対応する。

接客にパーソナルAI

 カラフル・ボード(東京都渋谷区)は、パーソナルAI「SENSY」を開発する慶應大発AIベンチャー。大丸東京店、伊勢丹新宿店などで接客に活用されてきた。今年4月には、はるやまホールディングスグループのミック、TSIホールディングス、ヴィンクスの3社を引受先とする第三者割当増資などで8億円超の資金調達を実施している。

今どの株を買うべきか

 Alpaca(東京都港区)はAIとビッグデータを活用した金融プロダクトの開発を進める。昨年3月から、日々のトレーディング業務をAIによって自動化できるサービス「アルパカアルゴ」を、同年5月からは米国株向けに今何を買うべきかを解決するサービス「アルパカスキャン」を提供する。三菱東京UFJ銀行、カブドットコム証券などと協業している。

医療画像の診断を支援

 東京大発ベンチャーのエルピクセル(東京都文京区)は、医療・製薬・農業などのライフサイエンス研究領域の画像解析ソフトウエアの研究開発に強みを持つ。開発を進めている医療画像診断支援システムは臨床試験の段階に入っており、数年内で実用化される見込みだ。

発電・消費電力を予測

 グリッド(東京都港区)は太陽光発電システムのメーカーとして創業し、東京大学、電気通信大学とAIなどの共同研究を進めている。発電・消費電力予測、気象予測、交通・渋滞緩和、故障・異常検知といった予測技術を基にしたシステムなどを提供する。今春、三井物産、丸紅、伊藤忠商事と相次ぎ資本業務提携を実現させている。

DeNA会長の春田氏が起業

 エクサインテリジェンス(東京都文京区)は、ディー・エヌ・エー(DeNA)の会長を務めた春田真氏が、当初は京都で起業したAI企業。技術とビジネス活用の両面に強みを持ち、心臓のMRI検査を行うCVイメージングサイエンスとは共同で、心臓MRIの画像から狭窄部を抽出する診断支援の技術を開発している。インドの2大学と連携して研究も進める。

AIで手書き文字を認識

 コージェントラボ(東京都渋谷区)は、AIによる手書き文字認識システム「Tegaki」を提供する。トッパン・フォームズが同システムを活用したBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスを提供したり、住信SBIネット銀行が住宅ローン申込書の入力業務軽減に採用したりしている。今年3月には総額13億円の第三者割当増資を発表した。

店舗運営の改善にAI活用

 ABEJA(東京都港区)は深層学習を活用してビッグデータの取得・蓄積・学習・解析・出力・フィードバックを可能にする「ABEJA Platform」を提供。小売り・流通に特化した「ABEJA Platform for Retail」は、国内の300店舗以上に採用され、店舗運営の改善に活用されてきた。3月には東芝テックとの資本提携を発表し、約1億2000万円の第三者割当増資を実施している。

 これら9社のAI企業は、イベント「D3 WEEK 2017」において、7月27日午後2時から4時40分にかけて、リレートーク形式で一気に講演をする。また、4000万ドルの投資枠を用意したSOMPOホールディングス グループCDO常務執行役員の楢崎浩一氏は、同日10時から基調講演をする。

(文/日経ビッグデータ 杉本 昭彦)