アップルのiPhoneが今年で10周年を迎えました。スティーブ・ジョブズ氏が初代iPhoneをお披露目した発表会に参加した数少ない日本人の1人であり、歴代のiPhoneで独自の世界観を持つ写真撮影を手がけてきた「iPhonegrapher」として活躍する写真家の三井公一氏に、初代iPhone登場からの10年を振り返ってもらいました。

 2007年に初代iPhoneが登場してから、早くも10年が経った。日本での発売は、翌2008年の「iPhone 3G」からと一足遅れたものの、いまやiPhoneはあらゆる人に欠かせない生活の一部となった。個人的には、「写真」を人々の暮らしにしっかり定着させるという大きな役割を果たした点を高く評価している。

自分の初代iPhone(中央)。海外で使用したので傷だらけだ。左はカメラとして大活躍したiPhone 3GS、右は日本初投入のiPhone 3Gだ
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伝説となったスティーブ・ジョブズの基調講演

 初代iPhoneが発表されたときの様子を振り返ってみたい。

 私は、当時アップルのCEOを務めていたスティーブ・ジョブズ氏の撮影をライフワークとしており、2007年1月に米サンフランシスコで開催された「Macworld Conference & Expo」に赴いた。このイベントでのジョブズ氏のプレゼンテーションは語り草になっているほど素晴らしく、アップルの歴史を変えた瞬間をナマで体感し撮影できたことに興奮したのを昨日のことのように記憶している。

初代iPhoneをMacworld 2007で披露するスティーブ・ジョブズ氏
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 実は、この年は多くのメディアがラスベガスで開催された家電展示会「CES」に行っており、日本からサンフランシスコのMacworldに取材に来たプレスはかなり少なかったのを覚えている。当時、「アップルがiPodの機能を搭載した携帯電話を発表する」という噂が出ていたものの、モトローラのiTunes携帯電話「ROKR」が失敗したことで、その線はなくなったという話もまことしやかに伝わってきた。それもあって、サンフランシスコをパスしてラスベガスに行ったメディアが多かったようだ。しかし、会場に足を踏み入れて飾られているバナーを見た瞬間に「何かあるな」と感じた。バナーには「The first 30 years were just the beginning.」と書かれていたからだ。

 そして、のちに伝説となったキーノートスピーチが始まった。今となっては懐かしいマイクロソフトの携帯音楽プレーヤー「Zune」の話から始まり、「Apple TV」を披露したあと、ついにそのときはやってきた。ジョブズ氏がiPhoneを発表した瞬間、会場のMoscone Westは大きくどよめき立った。ファインダーをのぞきながら、思わず鳥肌が立ったほどである。

Macworld 2007キーノートでのスティーブ・ジョブズ氏。「携帯電話を再発明した」という言葉も有名だ
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 昨今、スマホで最も重要視される存在になったカメラについては、画素数が2メガピクセル(!)ということや、マルチタッチのピンチインとピンチアウト操作で拡大縮小表示が自在にできることをアピール。そして、最後に社名をApple ComputerからAppleへ変更することを発表し、伝説のキーノートは終了した。

 私は、すぐさまステージに駆け寄って、スティーブ・ジョブズ氏がiPhoneを手にポーズを取るのを撮影した。そのとき、ステージ下でソフトバンクの孫正義氏を発見。これは何かあるな…と直感して待ち構えていると、スティーブ・ジョブズ氏が下りてきて孫氏と何やら話し始めたではないか。セキュリティーの人間に接近を阻まれながらも一眼レフのシャッターを切り、話し終わった孫氏に「iPhoneの日本投入は考えていますか?」と直撃してみた。ニコニコと終始笑顔だった彼の返事は、予想通り「ノーコメント!」だった。

Macworld 2007でスティーブ・ジョブズ氏と即席会談を終えた直後、笑顔を見せる孫正義氏
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