人類がこんなにも写真を撮るようになったのはiPhoneのおかげ

 しかし、iPhoneは確実に世界を変えていった。私たちに及ぼした影響はさまざまだが、まずはモバイルインターネット環境を当たり前の存在にしてくれたことが大きい。いつでもどこでもネット接続を思う存分楽しめるようになり、PCいらずで誰でも簡単かつ素早く情報にアクセスできるようになったのは素晴らしい。SNSの存在も挙げられる。iPhoneと同時期に広まったTwitterはiPhoneでよく使われ、面白いできごとや発見を出先から「…なう」とリアルタイムにつぶやくのがブームとなった。特に日本では、災害時の情報共有の手段としても欠かせない存在となっている。

 何より、写真の世界を大きく変えた。iPhoneは、世代を重ねるごとに画素数と画質が着実に向上しただけでなく、最新のiPhone 7 Plusは「ポートレートモード」により背景をぼかせるようになった。もはや、「ふだん撮影する写真ならばiPhoneで十分」と多くの人々が気付いてしまったのだ。

 インターネットとの親和性の高さも、写真の常識を変えた。「Instagram」で撮った写真を加工し、すぐさまシェアして世界中の人とコミュニケーションを楽しむ光景が日常的になった。今まで、身内や友人同士で見せ合うしかなかった写真を、多くの人たちと瞬時に共有して「いいね!」をもらって楽しむという、新しい世界が現れたわけだ。顔にユニークな加工をする「Snow」などの写真アプリも、若年層を中心に人気を博した。器用ではないコンパクトデジタルカメラが売れなくなるのも仕方がない。

 では、iPhoneはカメラ業界の敵なのか?と思いがちだが、実はそうではない。私のように、iPhoneで撮影した写真を「iPhoneography」として発表する人も増えたが、iPhoneによって写真撮影の楽しみを知り、デジタル一眼レフやミラーレス一眼、さらにはフィルムカメラを買ってしまう人が増えている。今まで写真に縁がなかったビギナーが、iPhoneがきっかけで写真に目覚めたのだ。

 日常的に写真を撮る、というライフスタイルも生み出した。美しい光景やモノをiPhoneで撮影し、お気に入りのアプリで作品に仕上げ、ブログやSNSにアップするのを日課にしている人も増えた。人類がこんなに写真を撮るようになったのは、iPhoneが存在したからと断言できる。そう、iPhoneは写真の裾野を広げているのである。

 確かに、低価格のコンパクトデジタルカメラは駆逐されたが、私の周囲にいるiPhoneユーザーはそれより価格が高いカメラやレンズを購入している。しかも意欲的にだ。事実、カメラのマーケットは緩やかな回復基調にある。iPhoneとカメラは共存の道を歩んでいるといえるだろう。