スリープテックを開発するスタートアップ企業が目立ってきた。「スリープテック」とは、睡眠を誘うテクノロジーのこと。従来から睡眠をモニターするウェアラブル機器などがあるにはあったが、今そうした企業が目指すのは、さらにその先を行くテクノロジーだ。
例えば、「Sense(センス)」は睡眠モニター(図1)。ベッドの近くに設置する小さな球体状のセンサーと、枕に取り付けるバッジとを組み合わせて利用する。センサーは寝室の環境(温度、周辺光、湿度、空気の質など)の計測器も兼ね、バッジは睡眠中のユーザーの動きを計測する。音声で操作できるのが特徴で、環境への評価や睡眠の質を尋ねたり、目覚まし時計を設定したりできる。外からの音を遮るためにホワイトノイズを発するなど、睡眠をサポートする機能も備えており、より質の高い睡眠を目指すユーザーを手助けする。
「Sana(サナ)」はいわば“スマート睡眠マスク”だ(図2)。このマスクは、自動車事故で脊髄に障害を負った創業者が、痛みで不眠症に陥ったことが開発のきっかけとなったという。サナを装着すると、眠りを誘発する光と音による刺激が加えられる。これにより8~10分で眠りに落ちるという。こめかみに心拍数の変動を感知するセンサーがあり、ユーザーの状態の変化に合わせて刺激が調整される。
マインドフルネスのレッスン用アプリも
「心のエクササイズ」ともいわれる“マインドフルネス”を促進するアプリが「Head -space(ヘッドスペース)」だ(図3)。ユーザー登録後、アプリのスタートボタンを押すと、「目を閉じて、深く息を吸って……」というインストラクターの声が聞こえる。まるで瞑想(めいそう)の個人レッスンを受けているかのようで、やがて瞑想をマスターできる仕組みになっている。
現代は、テクノロジーの刺激により眠れなくなっている人が多いという。そんな人々を、やはりテクノロジーが助けてくれるというわけだ。
(文/瀧口範子=米国在住)