鉄筋コンクリート2階建ての自宅のWi-Fi環境を改善するための方法を解説する企画の第3回。第1回の「自宅のWi-Fiが遅い 解決の第一歩は『電波の可視化』」では、自宅の各部屋のWi-Fi電波強度をスマホアプリでビジュアル的に確認する方法を解説。第2回の「最新Wi-Fiルーターを導入するだけでは速くならない?」では、Wi-Fiルーターを1733Mbps対応の高速タイプに置き換えることで速くなるかどうかを検証した。ただ残念ながら、Wi-Fiルーターを高速なものに置き換えただけでは目覚ましい改善が見られなかった。

 そこで今回は、既存のWi-Fi環境に追加することで手軽にWi-Fiの電波を強くできる「Wi-Fi中継機」で改善が図れるかを検証してみた。

Wi-Fiの電波を再送信する役目を持つWi-Fi中継機

近ごろのWi-Fi中継機は、壁のコンセントに直接接続するタイプが主流になっている。接続が簡単なうえ、わずらわしいケーブルが気になることもない。コンセントの占有を最小限に抑えられるよう形状を工夫している製品が大半だ
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 Wi-Fiの電波は、Wi-Fiルーター(アクセスポイント)から離れるにしたがって弱くなり、壁やドアなどの障害物を挟むと急激に減衰する。だが、受信したWi-Fiの電波を再送信する機能を持つWi-Fi中継機を適切な場所に設置すれば、弱くなったWi-Fiのデータを再び強い電波で送信することが可能になる。より高速に通信できるようになったり、これまでWi-Fiが届かなかった場所でも快適な通信ができるようになるのだ。

Wi-Fiの電波が届かなかったり弱くなる場所でも、Wi-Fi中継機を適切な場所に設置すれば強い電波が届くようになる
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 メリットの多い中継機だが、導入するにあたってまず覚えておきたいことがある。「適切な場所に設置すること」と「中継機は受信したデータを送信すること」の2点だ。中継機は、設置する場所の選び方が何よりも重要となる。Wi-Fiルーターからの電波が届かない場所はもちろん、電波が弱く伝送速度がきわめて遅くなっている場所に設置しても、改善効果は期待できない。

 筆者の家を例にして解説しよう。電波がほとんど届かない2階の父親部屋に中継機を設置すれば、1階の仕事部屋に設置したWi-Fiルーターと同じSSIDで中継機は強力な電波を発するようになる。だが、中継機自体がWi-Fiルーターからデータをほとんど受け取っていないので、通信は快適にならないのだ。

筆者の家の間取り図。1階の仕事部屋(1)にWi-Fiルーターを設置しているので、中継機はその電波が十分な強さで届く場所に設置する必要がある
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 中継機は、受信したデータをそのまま再送信するので、受け取ったデータよりも多くのデータを送信することはできない。仮に、Wi-Fiルーターの至近距離の通信速度が300Mbpsであっても、中継機を設置した場所の通信速度が150Mbpsに落ちていれば、中継機が送信できるデータは最大150Mbpsとなる。中継機を設置した場所の電波がさらに弱く、受信できるデータが50Mbpsであったなら、中継機が発する電波自体が強くてもPCやスマホが受け取れるデータは50Mbps以下と遅くなる。

 さらに、Wi-Fiルーターにはない中継機ならではの特徴として覚えておきたいのが、「受信したデータを再送信する」という機能を果たすには、受信と送信の動作を交互に実行しなければならないこと。つまり、Wi-Fiルーターの伝送速度が150Mbpsであっても、受け取ったデータを送信するときは受信を停止するので、データの中継速度は実質半分の75Mbpsとなるのだ。

 もちろん、このデメリットを解決する機能を持っている中継機もある。通常、5GHzで受信したデータは5GHzで送信し、2.4GHzで受信したデータは2.4GHzで送信するが、動作モードを切り替えると5GHzで受信して2.4GHzで送信することや、その逆も可能となる。送受信で異なる周波数帯を利用すれば、受信と送信を同時に実行できるので、中継速度が半分に落ちずに済むのだ。この機能の名称はメーカーごとに異なり、バッファローは「デュアルバンド同時接続方式」、NECプラットフォームズは「Wi-Fi高速中継機能」、エレコムは「クロスバンドモード」と呼んでいる。

バッファローのデュアルバンド同時接続方式の説明(上段)。下段では、同じ周波数で送受信をすると速度が半減することを説明
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