東京地下鉄(東京メトロ)は2017年6月19日、紛失防止タグ「MAMORIO」を活用した忘れ物自動通知サービスの実証実験を開始した。対象となるのは、飯田橋駅構内のお忘れ物総合取扱所、銀座線渋谷駅、丸ノ内線池袋駅、有楽町線新木場駅の4カ所で、2018年3月31日まで実施する。
MAMORIOは、Bluetoothとバッテリーを内蔵した小さなタグで、スマートフォンにアプリを入れてタグを登録しておくと、スマホを介してタグの位置情報をサーバーにアップする。タグがスマホのBluetooth範囲内から外れると、最後にサーバーに記録された位置情報などをスマホに通知。財布やカギ、傘などにつけておくことで、置き忘れや紛失を防げる。アマゾンやauなどの通販サイト、一部の百貨店などで販売中だ(関連記事:アマゾンで一番人気の「落とし物発見器」が便利だった)。
今回、東京メトロでは、飯田橋駅のお忘れ物総合取扱所にMAMORIOの専用アンテナを設置、ほかの3つの駅では駅事務室に常設のiPadにアンテナアプリをインストールした。お忘れ物総合取扱所や駅事務室にMAMORIO付きの忘れ物が届くと、専用アンテナやアンテナアプリがそのMAMORIOの情報を取得し、サーバーに送信。サーバーがタグの持ち主に通知する。
メトロは「忘れ物管理の負荷を減らしたい」
東京メトロ鉄道本部営業部旅客課の阪井健悟主任は、「MAMORIOによって、忘れ物の管理業務の負荷を少しでも軽減できれば」と話す。同社の路線内で届けられる忘れ物の数は1日平均1835件。年間にすると66万件強で、年々増えている。そのうち、持ち主に返却される確率は30%前後だ。お忘れ物総合取扱所には、忘れ物が届いているか分からない状態でたずねてくる人が多いが、MAMORIOがついていれば、事前に届いていることを確認した上で引き取りに来られる。それだけでも、業務の負荷は軽くなると見る。このため、今年1月ごろからどの駅に導入するか検討を始め、忘れ物が一番集まりやすい飯田橋駅のお忘れ物総合取扱所、銀座線、丸ノ内線、有楽町線の各終着駅に決めた。
MAMORIOにしたのは、導入コストの安さも理由だ。「各駅には、乗客への案内用のiPadが2015年8月から設置されている。そのiPadに無料のアンテナアプリを入れるだけで対応できる」。専用アンテナの価格は非公表だが、10万円程度のようだ。来年3月末まで実証実験を行い、どの程度返却率が上がるか、駅事務所の通常業務に悪影響を及ぼさないかなどを確認し、本格導入や対象駅の拡大などを検討する。
MAMORIOは「イベント会場にも設置を進めたい」
MAMORIOにとっては、アンテナ数を増やせるのがメリットだ。MAMORIOには、アプリを入れているユーザーがタグの近くにいると、そのユーザーのスマホがアンテナとなってタグの位置情報をサーバーに記録する機能がある。持ち主がタグから遠く離れてしまっても、位置情報を確認できるようにするための仕組みだ。この機能の特性上、街中にユーザーやアンテナが増えるほど、位置情報は取得しやすくなる。
MAMORIOの泉水COOは「アンテナは忘れ物が集まる場所に設置したい。駅は非常に効果的」と話す。東急電鉄が運営する東急線渋谷駅、相鉄グループの相鉄線二俣川駅なども試験導入しており、今後は隅田川の花火大会などのイベント会場、ライブ会場などの忘れ物センターにも設置を進めたい考えだ。
関連リンク
(文/平野亜矢=日経トレンディネット)