日経BP社が主催する大型イベント・セミナー「D3 WEEK」。2017年は7月26日(水)から28日(金)の3日間、「Beyond The Customer First」をテーマに、六本木アカデミーヒルズ(六本木ヒルズ森タワー49階)で開催する。今回インタビューをしたカスタマー・コミュニケーションズ執行役員の越尾由紀氏は、26日午後1時からパネルディスカッション「デジタル時代のヒット商品づくり【D3×日経トレンディ共同企画】」に参加する。

越尾由紀氏 カスタマー・コミュニケーションズ 執行役員アナリティクス・ソリューション部長 兼 リテールマーケティング部長
2003年カスタマー・コミュニケーションズ入社、16年7月執行役員に就任。アナリスト部門と小売業向け営業部門の部長を兼任し、自らも数々のクライアントへ実践的な分析やソリューション提案を行う。日用品メーカーのエステーのマーケティング部や開発部に16年間在籍した経験も持つ
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――消費者がスーパーなどで購入した商品の情報をID-POS(顧客ID付POS情報)データとして集計し分析しているが、どんなことが分かるのか。

 顧客の購買の膨大な情報を「因数分解」できる。それぞれの取引のデータに、顧客個別のIDが付与されているので、週に何回・何曜日の何時頃に来店しているのか、など様々な情報を得られる。例えば、ペットフードの購買履歴があれば、猫を飼っているのか、犬を飼っているのかなども分かってくる。

 これらの情報を合わせて分析すると、その顧客がどのような嗜好を持つのかが分かり、どのような人物像であるのかの「ペルソナ」が分かってくる。

 ペルソナを知るためには、単一の商品だけでなく、ほかにどのような商品を買っているのかの「併売」を分析することも重要だ。

 例えば、カロリーオフやゼロの飲料を買う顧客が他の食品もダイエット系かというとそうではない。カロリーの高いジャンクフードを同時に購買するケースが非常に多い。消費者心理は非常に面白い。

 また、ベビー用品を購入していたら「妊娠しているか出産したかだろう」と分かり、その前は妊活をしているかもしれない。顧客に聞かなくても、それぞれのフェーズでどのような嗜好があるのか把握できる。

ID-POSでターゲット層への誤解が判明

――ID-POSのデータは流通業の仕入れの参考やメーカーの販売戦略に使うという印象が強い。新商品の開発に生かすことができるのか?

 今後増えていくと思うが、新商品の開発やマーケティングにも使われるようになっている。ID-POSのデータで調べてみたら、想定していたターゲットと違う層が購入していることが分かり、広告媒体を変えるといったケースもあった。

 例えば、ある企業は自社製品が「高齢で悠々自適」の層が顧客だと思っていたら、それは競合の製品が強い層で、その会社のメーン顧客層は働く世代だったということがある。

 こうした情報を、パッケージのデザインや商品開発などにも生かしていくことができる。流通業であれば、こうした分析を自社のプライベートブランド商品を作る際の参考にすることもある。

――購買データ分析をするうえで、必要な心構えは?

 ID-POSに限定したものではないかもしれないが、3つある。

 1つ目は対象のターゲットを変えるなどで複数の仮説を持つこと。思いもよらない結果を見いだすことができる場合もあるし、1つの仮説がだめでも行き詰まらない。

 2つ目として自分自身の尺度を持つべきだ。ある数値が出てきた時にそれが多いのか、少ないのか。常にその尺度で評価することが欠かせない。

 最後が他のカテゴリーの状況にも気を配ること。メーカーの担当者はともすれば自分の商品カテゴリーの売り上げデータだけで競合だけを分析してはいないか。それではデータから新たな可能性を見いだすことができない。

――POSデータの分析に携わろうと思ったのはなぜか?

 膨大な情報から店舗に行った顧客が、どのような場面でどのような商品を一緒に買っているのかを定量的に知りたかった。当社であれば5000万顧客IDに結びついたリアルな購買データであり、要因をドリルダウンして分析できる。スーパーやドラッグストアなどの協力企業からID-POSデータを収集し、集計したデータを提供している。いわばギブアンドテークのユニークなビジネスモデルである。

 前職の日用品メーカーには16年間在籍して、市場調査や分析を担当していたが、どちらかというと商品に対する定性的な情報を調査していた。その分野を得意としており、やりがいもあったが、時折、「これはなぜなんだろう」と思う場面が多くなった。ここにリアルな定量データを掛け合わせたらもっといろんなことが分かり、「答え」を突き詰められるのにと思い移籍した。

(構成/市嶋洋平=日経ビッグデータ)