一方、日本のSIMロック解除制度は、現状では加入者本人の申し込みが必要で、海外のように中古流通業者が携帯事業者に解除を依頼する取引ルートが存在しないのだ。このため日本ではSIMロック解除対象の新しい機種にもかかわらず、ロックが掛かったまま流通してしまうiPhoneが少なからずあるのが現状だ。海外で中古iPhoneといえばSIMロックが解除された製品が一般的。SIMロックが掛かったままの日本の中古iPhoneは、海外に転売する際に安値を甘んじて受けいれるケースもあるという。

iPhoneは海外のほうが高く売れる

 国内で中古iPhoneの流通が活発になれば、携帯大手にとっては格安スマホに対する優位が揺らぎ、アップルにとってはドル箱市場である日本で新製品の売り上げが鈍る恐れがある。この点で、アップルと携帯大手には日本で中古スマホの流通に後ろ向きになる共通の理由があるといえる。

 では、アップルと携帯大手がそれぞれ単独に、もしくは申し合わせて、国内で中古端末流通を阻害したといえる事実はあるのか。総務省や公取が問題にする材料があるかというと、中古端末流通に携わる関係者でさえ「今の業界の状況では指摘しにくい」と話す。携帯大手から下取り端末を引き取った商社にとって、中古iPhoneは海外で販売したほうがより高い値段で売れるからだという。

 関係者が指摘する理由は2つある。第1の理由は海外で中古iPhoneの人気が高い地域がある点だ。数年前はiPhoneの発売時期が遅かった中国で需要が高く、最近は東南アジアなどで需要が旺盛という。第2の理由は、日本の中古流通業者のバイイングパワー(購買力)が小さく、海外の流通業者に勝てない点だ。

 海外で中古iPhoneは、香港や米国、中南米市場を抱える米国フロリダなどに大きな取引市場がある。日本で下取りされた中古iPhoneはこうした市場で転売され、日本の中古流通業者も取引に参加している。

 しかし、海外での取引経験がある国内事業者は「これまでの販路や実績から、我々が買い付けできる規模は数万台。携帯大手の有力販売店を販路に持つなど、100万台規模で買い付けできる海外業者には太刀打ちできない」と証言する。日本で中古スマホの市場が未成熟なため、鶏と卵の関係に陥っている。

 日本の中古スマホの流通市場を巡っては、端末の第三者修理制度が始まっているものの、端末メーカーが補修部品の供給で非協力的である点など、業界が解決するべき課題がまだ残っている。業者が取り扱う中古はクリーニングや一定基準の整備をしているものの、「日本の消費者がまだ中古スマホに十分な安心感を持てていない」(関係者)点も課題だ。

 消費者が格安スマホでも大手の携帯電話サービスでも、中古iPhoneを支障なく選択できるようになるには、包括的に解決するべき課題がまだ数多く横たわっている。

(文/玄 忠雄=日経 xTECH/日経コンピュータ)