2017年6月1~4日に、東京ビッグサイトで「東京おもちゃショー2017」が開催された。玩具の国内市場規模は3年連続で8000億円を超えるなど順調に伸びていることもあり、今年も各メーカーがそれぞれの個性を発揮する展示となっていた。
おもちゃショーはバンダイ、セガトイズ、タカラトミーといった大手が大きなブースを構えてキャラクター系からアイデア系まで幅広く展開するのに対し、それに続くカワダ、エポック社、テンヨー、メガハウス、ビバリー、アガツマといったメーカーが独自色を打ち出す、といった構造が続いている。今回は、それに加えてソニーが新たに開発した知育玩具の初お披露目を行うなどの試みもあった。
市場を支えているのは、IP(知的財産)関連の製品。つまり、タカラトミーの「トミカ」「プラレール」「リカちゃん」、バンダイの「仮面ライダー」「戦隊シリーズ」「プリキュア」、エポック社の「シルバニアファミリー」。それにアガツマ、ジョイパレット、セガトイズ、バンダイが展開する「アンパンマン」という定番が並ぶ。
毎年、これらのキャラクター玩具のコーナーは新しい展開を見せてにぎわっているが、今年は例年以上に、これらのキャラクターモノを含むロングセラーの玩具や、懐かしい玩具に新しい視点を加えた製品がそろっていたように思う。例えば、今年50周年を迎えたタカラトミー「リカちゃん」シリーズの新作「キラチェンリカちゃん」(4980円、7月発売予定)は付属のライトを髪に当てることで、髪の色がピンクからブルーに変化するというもの。光を長く当てると色が濃くなるという分かりやすさが良い。そして、ウィッグでなく光で変化させるというのが現代風だ。さすがは着せ替え人形のトップランナー。
ベストセラーおもちゃが現代風にリニューアル
定番玩具の進化形としては、同じくタカラトミーの「人生ゲーム MOVE!」(3980円)も面白い。従来、ルーレットによってプレイヤーの人生が変化するゲームだった「人生ゲーム」に、運命の変化を追加。メイン、天気、職業、結婚という、4つの世界の運命をつかさどる「歯車(ギア)」を回すことで、盤上の世界のルールや運命が変わっていくのだ。つまり、誰かが回した歯車によって、他のプレイヤーの人生も左右されるということ。自分の力や運ではどうすることもできない大きな力が作用するわけで、リアルな人生により近いシミュレーションになっているのだ。
カワダの「nano Room」(300~2600円、7月7日発売予定)は、昔で言うところの「おままごとセット」のようなもの。ただ違うのは、おままごとサイズの小さなイスや机、ソファといった家具を自分で作るキットになっていること。木や布をボンドで貼り付けて作る本格的なものだ。最近のおままごとセットは女の子だけでなく男の子にも売れているそうなので、こういうマニアックな方向も現代的なのかもしれない。
同じくカワダのブースでは、「タイムクラッシュ」(2800円、6月30日発売予定)も展示されていた。時間内に穴と同じ形のパーツをはめ込まないと、最後は全部がガシャンと飛び出すゲームのリニューアル版だ。これもまた、定番玩具の見直し的商品だろう。さまざまな形の穴が開いた本体デザインは、改めて見ると現代アートのような趣がある。
ビバリーが大々的に「スピログラフ」を新製品として展開しているのも興味深かった。スピログラフとは、歯車状のパーツの穴に筆記具を差し込んでグルグル回すだけで、キレイな曲線の幾何学模様が描ける定規。
ブースでは2014年に同社が発売した「スピログラフデラックス」「スピログラフスタンダード」「スピログラフトラベル」の新製品「スピログラフジュニア」(4500円、6月発売予定)が展示されていた。これは、より小さな子ども向けのスピログラフ。スピログラフは50年前にも普通に売っていた玩具だが、それを紙もセットできるオールインワンの製品にして、魔法の道具的な演出で見せているのが新しい。
懐かし系玩具の進化バージョンが止まらない
懐かしい玩具のバリエーションでは、デジタルと融合したけん玉「電玉」(税込み1万2980円)や、昔懐かしいギミック付きの貯金箱「おへんじBANK」(2480円)と「トレインバンク2番線」(2480円、7月発売予定)、4路盤という小さな碁盤の上で囲碁の問題を解く「囲碁パズル」(1700円、7月末発売予定)、なども目立った。
他にも、バンダイのブースではガシャポンの40周年を記念し、当時の販売機や1980年代に大流行した「キンケシ(キン肉マン消しゴム)」の展示などで盛り上がっていた。キンケシは6月下旬に久々の新作も発売される。また、同じくバンダイのブースでは、「たたかれ続けて30年」のコピーと共に歴代のもぐらたたきゲームが展示されていた。最新機種の「元祖モグラたたきゲーム」(税込み3218円)もあり、現役商品である。
デジタルがグンと身近なおもちゃになった
定番や懐かし系の商品と並んで、今年の流れを作っていたのは、デジタルと玩具の新しい関係を感じさせる製品群だ。2016年は、ロボットやドローンなどそのまま玩具にしたプロダクトが中心だったが、ここにきて、デジタルアイテムを無理に玩具化するのではなく、アナログの玩具の良さにデジタルの技術を寄り添わせたようなタイプの玩具が増えていたのだ。
ソニーが今回のおもちゃショーで発表した、トイプラットフォーム「toio」(基本セットは市場推定価格2万円前後)も、デジタルのみで遊ぶものではなく、レゴなどと組み合わせて遊ぶように作られている。コンセプトとして画面を見せない、設定などの作業がほとんど不要という、デジタル機器らしからぬスタイル。手で遊び、その補助をデジタルで行うというスタイルが、一つのトレンドになっているようだ。
前述したデジタルけん玉「電玉」も、普通にけん玉なのだが、デジタルとつなぐことで遊びの幅を広げようとしている。スマホの写真を、電池も設定もなしでインスタントフィルムにプリントできるタカラトミーの「プリントス」(3480円)も、アナログの技術をデジタルと融合させたアイデア。「小学館の図鑑NEO」を電子化したタカラトミーの「小学館の図鑑NEOPad」(1万5000円、7月13日発売予定)は、カメラを搭載して図鑑に自分が撮った写真を登録できる。これを持って動物園に行けば、動物のデータと自分が撮った写真を並べられるのだ。
タカラトミーアーツの「VRシューティング スピリッツ」(9800円、7月発売予定)は、ゴーグルなしでVR的な遊びができる玩具。デジタル技術の扱いがこなれてきたからこそ登場した玩具だろう。また、セガトイズは毎回、スマホ的な玩具を少しずつバージョンアップしながら投入しているが、今年の「Mepod」(9800円、7月発売予定)は、Snowのようなリアルタイム写真加工アプリを搭載。また、従来のメッセージのみのやり取りに加え、写真のやり取りも無線で行えるようになっている。大人のデジタル世界の流行を敏感に取り入れる姿勢からも、玩具業界のデジタルへの対応力の高まりを感じる。
(文・写真/納富廉邦)