3年前に日本を拠点とした取引所「マウントゴックス」が破綻したことから、なんとなく胡散臭いイメージのあるデジタル通貨(仮想通貨)「ビットコイン(bitcoin)」。「なぜ今ビットコイン? ビックカメラは決済に導入」で紹介したように普及にはいくつかの壁があることも事実だ。ところが、世界に目を向けると、利用者は増加を続け、2000万人を超えたと想定されている。実際、ビットコインの使い勝手はどうなのか? 雑誌「ダイヤモンドZAi(ザイ)」などに執筆する金融に詳しいフリーライターの久保田正伸氏に、ビットコインの購入から量販店での支払いまでを体験してもらった。
家電量販店のビックカメラが4月7日からビットコインの決済サービスを提供するというニュースが飛び込んできた。日本最大のビットコインの取引所「bitFlyer」と提携して決済が行われるという。訪日外国人旅行者を意識したサービスであることは間違いないのだが、日本に住んでいる筆者にとっても以前からビットコインは気になる存在。ビックカメラからのニュースをいい機会ととらえ、日本円をビットコインに交換し、ビックカメラでの買い物を試してみることにした。
bitFlyerでアカウント作成、そして入金
ビットコインを扱うためには、まず取引所にアカウントを作成する必要がある。つまりビットコインを出し入れする口座を作るわけだ。今回はbitFlyerのウェブサイトからアカウントを開設した。ちなみにアカウント作成は無料だ。
日本円とビットコインを交換するため、最初に日本円をbitFlyerに入金する必要がある。当初、アカウント作成すると「ウォレットクラス」というアカウントになる。この状態では、日本円によるビットコインの購入・売却ができない。
ビットコインを売買するには、アカウントを「トレードクラス」に引き上げる必要がある。そのための条件として、本人情報の登録、本人確認資料の提出、書留郵便(はがき)受取などの手続きが必要だ。少し面倒に思えるが、本人確認資料(免許証など)の提出などは、すべてネット上で手続きができたので、大して手間はかからなかった。
なお、一般的に入出金には手数料がかかる(3万円以上432円、3万円未満216円など)。ただし、三井住友銀行に口座があれば、bitFlyerの入出金の指定口座が三井住友銀行に あるためネットバンキング(SMBCポイントパック)を利用し、一定の条件を満たせば振込み手数料を無料にできる。もちろん、ほかの銀行でもネット銀行などで振込みが無料になるサービスを活用すれば、入金手数料は節約できるだろう。
ビットコインの「販売所」と「取引所」
さて、ビックカメラで筆者が購入したいと思ったのはスマホのケース。2000~3000円で買えるだろうと思い、少し多めに1万円を入金した。この時点ではまだビットコインを入手していない。
ここでbitFlyerのメニュー画面を見ると、「ビットコイン販売所」と「ビットコイン取引所」があって、どちらを使えばいいか少し迷った。「販売所」は自分の取引相手がbitFlyerで、「取引所」は取引相手が他のbitFlyerのユーザーということだ。取引所では、株やFXのように、実際の売買のやりとり(需給)によって価格が決定する。
販売所と取引所の価格を比べて見ると、販売所のほうが購入価格が高く、売却価格が安い傾向にあるようだ。その一方で販売所の場合、購入・売却価格には、あらかじめ売買手数料が含まれている。「値動きに迷いたくない」というなら販売所で売買すればいい。
取引所では、値動きを見ながら売買することになり、通常のウェブ画面に加えて、本格的な取引ツール「bitFlyer Lightning」も用意されている。株式やFX取引の経験を持ち、値動きを見ながら取引したい人はこちらを利用すればいい。
現在は2000円程度から購入可能。手数料はリーズナブル
筆者は株の売買の経験があるので取引所で購入してみた。この時点で1BTC(ビットコイン)の価格が約20万2000円だった。「そんに出費できない!」と考える人もいるだろうが、実際の購入では0.01BTCから買えるので、20万2000円を持っていなくても大丈夫。0.01BTCなので20万円の1/100で、2000円程度から購入できる(もちろん価格は常に変動している)。
入金した1万円で買える範囲でめいっぱい交換しようと思い、0.04BTC分買った。取引所の売買手数料は直近30日間の取引量に応じて、0.01~0.15%の間で変動する。今回は0.15%で0.00006BTC(約12円)だった。これなら最近の株のネット取引などと比べても遜色のないリーズナブルな手数料といえるだろう。
びっくりしたのは、購入して1日後に300円程度の含み益ができたことだ。1日で約3.5%上昇したことになる。やはり最近は取引が非常に活発で、値動きが激しいようだ。
さて、ビットコインを購入し、アプリ「bitFlyerウォレット」をスマホにインストール。いよいよビックカメラへ出発だ。bitFlyerウォレットは、当初iOSのみの対応だったが、現在ではAndroid版も登場している。
支払時にアプリでQRコードを読み取る
「ビックロ ビックカメラ新宿東口店」に行き、スマホケースを物色して、消費税込みで2678円の商品に決めた。支払いのためにビットコインの決済に対応しているレジに向かった。対応のレジには看板が表示されているほか、スマホ型の端末が設置されているのですぐに分かるはずだ。
レジの店員に商品とポイントカードを渡し、「ビットコインでお願いします」と伝えた。するとほどなく店員がレジのスマホ型端末にQRコードを表示してくれる。よく見ると、そこには日本円での金額とビットコインでの金額も表示されている。もちろん、ビックポイントは日本円の現金で支払った場合と同じ率で付与される。
ここでアプリからQRコード読取機能を起動し、読み取る。すると価格が提示された確認画面が表示され、「支払う」ボタンをタップすれば支払いは完了。支払いにかかった時間は、1~2分程度。暗証番号を使ったクレジットカードでの支払いと同じくらいの時間と感じた。
支払ったときのビットコインの換算レートは、2678円の商品に0.01287BTCを支払ったので、1BTC/20万8080円と換算できる。ビットコインのリアルタイムの売却価格で取引が成立したようだ。ちなみに、商品交換や返品の場合には、レシートに記載されたビットコイン利用額が日本円で返金される仕組みになっている。
買い物を終えて……。試すなら少額から
買い物があっけなく終了し、いつも使っているスマホで支払えるなどビットコインの便利さを実感した。それにしても気になるのがビットコインの価格で、その上昇力には圧倒されるばかりだ。昨年の夏ごろには1BTCが6万円程度だったが、現在では20万円を突破し、3倍増となっている(なお、ビットコインの価格は取引所によって異なる)。
現状の値動きを見ると右肩上がりのトレンドが継続している。ただし、下落する時期もあり、これだけ値動きがあると、普段の買い物用のお財布として使うには、ちょっと不安だし、時期尚早だという気がする。とはいえ、いつものスマホを使って残高を確認しながら支払えるのは、手軽だし、使いすぎの心配がないというメリットはありそうだ。クレジットカードと比べて店舗側が負担する手数料が低いことから、今後多くの店舗がビットコインでの支払いに対応する可能性は高く、そうなれば現金としての使い勝手は増すだろう。
また、bitFlyerのWebサイトにある「ビットコインをもらう」を見ると、購入金額に応じてビットコインをポイントのように付与するECサイトも現れている。このように「現金」と「ポイント」の両面を併せ持つのがビットコインの面白いところだ。
試してみたい方は、一獲千金を狙わず、当初は少額から始めるのがいいのではないかと思う。今回のように1万円以下の入金なら、値動きの影響は小さいだろう。また、昨今では仮想通貨に関する詐欺のニュースも散見される。信頼のおける取引所を選ぶことも重要だ。
(文/久保田正伸、写真/シバタススム)