若者を中心に、自家用車を持つ人が減ったといわれる一方で、近年、利用者が増えているのがカーシェアリングサービスだ。今回紹介するのは、企業が個人にクルマを貸すタイプ。駐車場事業者やレンタカー業者などが展開していて、タイムズ24の「タイムズカープラス」、オリックス自動車の「オリックスカーシェア」、三井不動産リアルティの「カレコ・カーシェアリングクラブ」などがある。

 カーシェアリングサービスの代表格は、タイムズ24の「タイムズカープラス」だ。2009年10月のサービス開始から約7年たった現在の会員数は78万3282人。タイムズの駐車場など全国9091カ所にあるステーションには、31車種、1万7492台のクルマを用意している(いずれも2017年3月末時点)。

タイムズカープラスのウェブサイト
タイムズカープラスのウェブサイト

 タイムズカープラスでは、月額1030円(個人の場合)を支払って会員になると、15分206円からクルマを借りられる。長時間利用したい人には、6時間で4020円、12時間で6690円といったパックプランもある。

 予約はパソコンやスマートフォンアプリから。借りる当日は、予約したクルマに会員カードをかざすとドアロックが解除されるので、車内にあるクルマのキーを取り出して利用すればいい。近距離ならば、給油は不要。給油する場合でも、車中に設置してある決済用カードで支払う仕組みになっていて、その代金はタイムズ24が負担する。また、保険料も月額基本料や利用料金に含まれるので、別途支払う必要がない。

 地域や時期によっては予約が混み合うので、自家用車のように思い立ったらいつでも乗れるというわけではないが、保険や駐車場代といったクルマの維持費がかからないのはメリット。また、レンタカーと比べると、夜間や早朝でも15分から借りられて、ショップでの手続きも不要なので手軽だ。普段はクルマに乗らないが、「週末にドライブしたい」「たまに買い出しに行く」など、ある程度計画的にクルマを使う人には適したサービスだ。

ウェブサイトまたはスマートフォンアプリから予約できる。「現在の燃料残目安」ではガソリンの残量を確認できる
ウェブサイトまたはスマートフォンアプリから予約できる。「現在の燃料残目安」ではガソリンの残量を確認できる
予約当日は、予約したクルマのカード読み取り部に会員カードをかざしてドアロックを解除して乗車する
予約当日は、予約したクルマのカード読み取り部に会員カードをかざしてドアロックを解除して乗車する

個人は街乗り、法人は出張などの需要が高い

 カーシェアリングの利用者が多いのは、月決め駐車場代が高い首都圏や、地方都市だ。会員の内訳は6割が個人、4割が法人だという。

 個人の場合、主な用途はやはり街乗り。特に15分から借りられて、返却時に必ずしも給油が必要ないこともあり、買い物や学校、病院への送迎などに利用する人が多い。中には夫婦げんかの後の避難先や仕事の電話をするときの個室代わりに使う“特殊例”もあるとか。

 利用者は30代、40代が7割を占めるが、「最近は20代以下の伸び率が大きい。若者の“クルマ離れ”とよく言われるが、我々は“クルマの購入離れ”だと思っている」とタイムズカープラスの広報を担当する渡邉倫也氏は話す。タイムズカープラスには、トヨタのプリウスや日産自動車のノート、マツダのデミオ、ホンダのフィットといった標準的なクルマを借りる「ベーシック」コースとBMWのMINI OneやアウディのA1、マツダのCX-5など一段グレードが高いクルマを借りられる「プレミアム」コースがあるが、6時間以上借りる場合は、料金が同じになるため、仲間同士で少し上等なクルマに乗ってドライブしようという若者もいるそうだ。

 一方、法人は営業車の代わりに利用するという。繁忙期に自社のクルマが足りないとき、カーシェアリングで補ったり、出張先での営業先回りに利用したりするケースだ。このため、タイムズカープラスでは、新幹線の停車駅や空港周辺にステーションを手厚く設置している。「典型的なのが東海道新幹線の浜松駅。駅前に20台のクルマがあるが、平日はフル稼働」(渡邉氏)という。

2017年4月時点でステーションがないのは北海道の東部と佐賀県だけ。画像はタイムズカープラスの資料から
2017年4月時点でステーションがないのは北海道の東部と佐賀県だけ。画像はタイムズカープラスの資料から

無人の貸し借りでもゴミが放置されたりしないのか

 カーシェアリングのメリットの一つが、利用者が直接クルマに赴いて、手続きなく借りられること。ただ、不特定多数の人が代わる代わる使うクルマはきれいに保てるのだろうか。ゴミが放置されたり、ガソリンがほとんどない状態で返却されたりすることはないのか。利用したことがない人は特に気になるだろう。

 渡邉氏によると、「スタッフがすべてのクルマを2週間に1度のペースで巡回し、給油状態の確認や清掃をしている」という。加えて、利用者に借りたクルマを自主的にきれいに保ってもらうため、「TCPプログラム」を導入している。

 TCPプログラムは、タイムズカープラスの利用状況によってポイントがたまる仕組みだ。自分の次に借りた利用者がクルマの状態をきれいだったと評価したときや、利用時に20リットル以上の給油をすると、そのたびごとにポイントがもらえる。逆に、返却予定時間に間に合わず、次の利用者に迷惑をかけたり、車を汚して利用できない状態にした場合には減点される。ポイントがたまるとステージが上がっていき、30分間分の無料チケットがもらえたり、通常は2週間前からしかできない予約が3週間前からできるようになったりする。

TCPプログラムのポイント確認画面
TCPプログラムのポイント確認画面

 このほか、給油や水洗い洗車をすると、それぞれ1回につき15分の料金が割引になるサービスも用意している。給油はクルマにつけたセンサーが自動的に検知して、料金に反映。水洗い洗車の場合は利用時間内にコールセンターに申告する必要があるのでやや面倒だが、それでも割引に魅力を感じる人は多いだろう。「こうしたサービスを用意することで、自主的にきれいに使ってくれる利用者が多い」と渡邉氏は話す。

3時間予約して2時間で返しても、料金は2時間分

 最後に、カーシェアリングを上手に使うポイントを聞いてみた。まずは「時間に余裕をもって予約すること」。タイムズカープラスの利用料金は、予約した時間分ではなく、実際に使った時間分で計算される。3時間予約しても2時間で返せば、料金は2時間分だ。また、予約開始前にキャンセルすれば、キャンセル料もかからない。

 予約時にカーナビの目的地を設定しておくのも有効活用のコツだ。予約サイトと予約したクルマのカーナビは連動している。「慣れないカーナビだと、設定方法が分からず、モタモタすることもある。予約時に設定しておくと、時間のロスを防げる」(渡邉氏)。

パソコンからウェブサイトで、あるいはスマホのアプリで事前にカーナビの目的地を設定しておける
パソコンからウェブサイトで、あるいはスマホのアプリで事前にカーナビの目的地を設定しておける

 2つ目は、乗る前に車両をチェックすること。タイムズカープラスでは、出発前に車両や車内の確認、安全点検を十分にできるよう、予約の10分前からクルマを使用できるようになっている。「気になる傷があったら、コールセンターに申告してください。申告していないと、最悪、自分のせいになってしまう場合もあります」(渡邉氏)。

 3つ目は、レンタカーと上手に使い分けること。一般に「10時間以上借りるならレンタカーのほうが得なことが多い」(渡邉氏)。街乗りや日帰り旅行ならカーシェアリング、1泊以上するならレンタカーが向いている。カーシェアリングを運営している会社はグループ会社などにレンタカー会社があり、特典を受けられるケースも多い。タイムズカープラスの場合、「タイムズカーレンタル」の利用料が最大25%オフになるサービスや、レンタカーの店舗にある端末にタイムズカープラスの会員カードをかざすだけで貸し出し手続きが完了するサービスなどを設けている。

タイムズカープラスの会員が「タイムズカーレンタル」でレンタカーを借りるときは、会員カードをかざすだけで手続きが済むサービスも
タイムズカープラスの会員が「タイムズカーレンタル」でレンタカーを借りるときは、会員カードをかざすだけで手続きが済むサービスも

 ちょっとした街乗りから日帰り旅行まで使える手軽さ、ポイントシステムやスタッフによる定期巡回でクルマを安全かつ清潔に保つ仕組みなどが充実しているカーシェアリング。自家用車を持っていない人にとって、手軽かつ安心して使えるサービスと言えそうだ。

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(文/平野亜矢=日経トレンディネット)

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