イーサネットがどのくらい速くなったかご存じだろうか。2017年12月に策定が完了した最新規格「IEEE 802.3bs」は最大伝送速度400Gビット/秒に達した。1983年に策定された最初の標準規格の10Mビット/秒から比べると、4万倍も高速になった。イーサネットはどこまで速くなるのだろうか。そして、どのように実現していくのだろうか。

2015年版のEthernet Roadmap 出所:Ethernet Alliance
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100Gでたもとを分かつ長距離伝送とイーサネット

 どうやって400Gビットイーサネットを実現したのか、その技術を理解するには10Gビットイーサネットからの開発の歴史をひもとかなければならない。

 イーサネットは心線が銅製のLANケーブルを使った方式と、光ファイバーケーブルを使った方式に分けられる。高速伝送には光ファイバーケーブルの方式が向いており、100Gビット/秒よりも速い規格ではLANケーブルは使われていない。

 光ファイバーケーブルを使ったイーサネットは他の伝送技術、特に数百キロにわたり信号を届ける長距離伝送技術をたびたび流用している。10Gビットイーサネットまではその流れをくんでいた。ところが、その次の世代の100Gビットイーサネットは既存の長距離伝送技術とたもとを分かつことになる。

 10Gビット/秒までは、一般的な長距離伝送は光のオン(強)とオフ(弱)に1と0のビットを割り当てる「IM-DD」という単純な変調方式を採用してきた。10Gビットイーサネットも同様に、光のオン・オフによる「OOK」という単純な変調方式を使っている。OOKとIM-DDはほぼ同じものと考えてよい。

 これに対し、100Gの長距離伝送は従来と大きく異なった、ブレークスルーとなる新技術を採用した。「デジタルコヒーレント」と呼ばれるもので、高速デジタル信号処理を活用し、光の強度だけでなく位相や偏波といった光の持つ情報を最大限に利用することで大容量・長距離伝送を実現する。ただし高度で複雑な処理を行うため伝送装置のコストは高くなる。

 一方イーサネットは100Gビット/秒を実現するのに際し、デジタルコヒーレントのような新技術を採用せず、10Gビットイーサネットで使われている安価なOOKを引き続き採用した。

 だが、10Gビットイーサネットと100Gビットイーサネットには、10倍もの速度の開きがある。そこで採用したのは「パラレル化」。単純に10ギガビットイーサネットを10本同時に送るイメージの技術だ。

1波の大容量化を目指す長距離伝送、低コストを重視するイーサネット

 こうした背景には、イーサネットの主な用途である短距離伝送と、都市や国をまたいだ伝送に使われる長距離伝送とでは、要求されるものが大きく異なることがある。光ファイバーケーブルを何百キロも敷設するのは膨大なコストがかかる。帯域を拡大するために、おいそれとケーブルの本数を増やすわけにはいかない。そこで高度で複雑な処理を採用して伝送装置のコストが高くなっても、周波数利用効率を高めて1本のファイバーで伝送できるデータ容量を限界まで上げることが求められるのだ。

 これに対し、イーサネットでは光ファイバーケーブルの長さは短くて済む。このため複数の光ファイバーケーブルを使ってもそれほどコストはかからない。そのため変調などの処理はできるだけ単純な方法を使い、むしろスイッチやルーターのコストやサイズ、消費電力を抑えることを重視。装置が複雑で高コストになるデジタルコヒーレントの採用を避けた格好だ。

 400Gビットイーサネットも100Gビットイーサネットの延長線上で、低コスト化に有利なOOKをベースにしている。また1波で400Gビット/秒のデータを送るのではなく、50Gビット/秒の送受信デバイスを8個並べて400Gビット/秒を実現する。ただし、単純な強弱の2値のみのOOKではなく、光の強さを4段階にした「PAM4」という多値変調を取り入れている。

 「PAM4という方式は、長距離伝送の領域で使われていたわけではなく、短距離のイーサネットで独自に開発された。400Gでイーサネットはいよいよ長距離伝送とは別に独自の進化を始めた」(NTT未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部 光処理方式研究グループの山本秀人 主任研究員)。