この記事は「日経xTECH」の同名の記事(2016年9月16日公開)を転載したものです。内容は基本的に日経xTECHでの公開時点のものとなります。

30年以上一貫してプログラミング教育に携わり、レゴ マインドストーム・ロボットキットやプログラミング環境Scratch(スクラッチ)など、革新的なプロジェクトを共同で成し遂げてきたのが米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ教授 ミッチェル・レズニック氏だ。同氏がこのたび執筆した『ライフロング・キンダーガーテン 創造的思考力を育む4つの原則』は、Scratchを開発した真の目的、活用実践のあり方を具体的に論じた人生100年時代の新しい教育論である。
 いよいよプログラミング教育が小学校でも必修化されようとしている今、その目的とあり方についての学びのヒントとなるべく、これまでレズニック教授らにインタビューしてきた内容をここに振り返ってみよう。

 

 教育用プログラミング環境として広く使われている「Scratch」の開発を率いるのが、米MIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ教授のミッチェル・レズニック氏である(関連記事1)。コンピュータを用いた教育および、そのためのツールを追求する同氏に、Scratchの動向や小学校でのプログラミング教育のあり方について聞いた。
 このインタビューは、Scratch Conference 2016の閉会直後にレズニック氏の部屋で行われた。聞き手に加えて、『小学生からはじめるわくわくプログラミング』などの著者でScratchを使ったプログラミング学習の国内における第一人者である阿部和広氏も質問者として、アラン・ケイ氏のもとでプログラミング・システムの研究開発に携わっている大島芳樹氏(所属はY Combinator Research、当時)が通訳として同席した。

写真1●米MITメディアラボ教授のミッチェル・レズニック氏
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――日本では、プログラミングが2020年から小学校での義務教育に取り込まれる見通しです。この義務教育化への賛否とその理由を教えてください。

 義務教育化に賛成か否かは、プログラミングがどのような形で授業に組み込まれるかによります。授業に「良く」組み込まれるのであれば賛成ですし、「悪く」組み込まれるのであれば当然反対です。

 では、「良く」組み込まれるとはどういうものでしょうか。私は「書くこと(ライティング)の学び」にたとえて説明しています。「書くこと」は国語だけではなく、ほかの授業でも重要です。プログラミングも同じです。たとえプログラミングそのものの授業があったとしても、そのほかの授業でプログラミングを生かせれば、より良い学びになると考えています。

――しかし、授業に「良く」組み込もうとすると、先生の負担が高まり、現場では対応できないという声もあります。負担を減らすために、結局のところ、生徒に対して先生が同じ内容を一斉に教える授業形態になってしまわないでしょうか。

 この問は、プログラミングに限らないし、新たな課題として浮上したものでもないと思います。一斉授業のメリット・デメリットの問題は、他の教科、例えば算数や理科でも存在します。

 新しい問題ではないという認識が大事であり、革新的発想がないとこの問題は解けないと思います。簡単な答えはありません。もし私が学校を運営しているとしたら、先生の教育に力を入れるでしょう。また、学年を超えて、上級生が下級生を教えるようなスタイルを導入したり、学校外から教えられる人を見つけるようにするかもしれません。

 いずれにしても、学年の壁や学校の壁を壊すといった革新的な発想が求められます。こういう変化を学校にもたらすのは、プログラミングを教えることよりも、よほど難しいでしょう。だからこそ、取り組む価値があります。