○×式のテストで最も大切なことは測れない

阿部和広氏
写真:都筑雅人

―― 日本ではどのように展開していきますか。

阿部氏:安倍政権になってから、プログラミング教育の義務化が言われています。いろいろな私企業がプログラミング教育に参加できるようにしようとしています。その中でScratchをどう位置づけていくのか、慎重にやっていく必要があると考えています。

 Scratchを「グローバルICT人材」を作るという小さな目的に限定したくない。あくまでも目的は、レズニック教授が言われたように、子供たちの表現の手段をなるべく多くする、作ると面白いと思うものを実現する手段を提供することです。これからそういったScratchによる学びを広げていきたい。

 重要なことは「私たちが子供たちに教えようとしない」ことだと考えています。レズニック教授の師匠筋にあたるシーモア・パパート教授が考えられた構築主義(Constructionism)は、子供たちがものを作りながら学ぶという考え方です。

 それに対する教授主義(Instructionism)は、先生が前にいて子供たちに共通の知識を教えるというやり方です。Scratchでもそういうやり方は可能なんです。この通りにやりなさいと。でも、そんなことをやってしまったら面白くもなんともない。

 英語の義務化のときもそうだったんですが、限りなく面白くなく教えてしまっている。それをどうすればいいのか。先生方にどう理解してもらうのかが重要なんです。この夏も先生方のワークショップで何カ所か回りました。2012年の4月から、中学校では「計測と制御」でのプログラミングの義務化が始まっています。どう教えればいいのか、先生方にも戸惑いがある。

―― 授業でやるとなった瞬間に、評価をどうすればいいのかなど難しくなります。

阿部氏:評価はすごく難しいです。先生方はテストで点を測ろうとするんですけど、私たちはどうやっているかというと、生徒同士の相互評価を行っています。

 子供たちが最初に言うのは「どういう作品を作ったら高い点がもらえますか」と。「そうじゃないんだ。君たちが面白いと思うものを作りなさい」と言うんです。さらには「友達が面白いと思うものを作りなさい」と。

レズニック氏:子供たちにとって何が最も重要なのかを考えなければいけません。○×式や選択式のテストで評価するのは楽ですが、それが本当に大切なことを評価しているかは疑問です。

 Scratchで大切なことは、子供たちがクリエイティブに考えること、体系的に推論すること、協調してやりとげること。その3つを評価できるようなものを用意しなければいけない。難しいことですが、挑戦し続けなければいけないと思っています。

写真:都筑雅人

(聞き手は高橋信頼=ITpro、八木玲子=日経パソコン