昨年2015年の夏、ソニーが新しい学習リモコン「HUIS REMOTE CONTROLLER」(以下HUIS、「ハウス」と読む)を開発。ソニーのクラウドファンディングサイト「First Flight」で支援を募り、目標金額を達成して製品化へと進んだ。筆者も製品化を支援しており、HUISを購入することになった。
2016年2月15日、ついにHUISの実機が筆者の手元に到着。これにあわせて、First Flightでの一般販売もスタートした。
そもそも、学習リモコンって何?
学習リモコンとは、1台のリモコンにテレビやブルーレイレコーダー、シアターオーディオなどの信号を学習させ、複数の機器をまとめて操作できるようにする特殊なリモコンのことである。操作したい機器ごとにリモコンを持ち替えるわずらわしさをなくせるほか、テーブルに置くリモコンを1つに減らせる点が大きなメリットだ。
また、最近ではスマホと赤外線送信機を無線LANネットワークで連携させ、スマホ自体を学習リモコンとして活用できる「クラウド型リモコン」も登場している。ネットワーク経由で「外出先からエアコンの電源を入れる」といったこともできる。
HUISは、基本的な機能は一般的な学習リモコンと同じだが、電子ペーパーを採用している。Wi-Fiに接続する機能はないが、スマホのように画面をタッチしてさまざまな機器を操作するため、一般的な学習リモコンとクラウド型リモコンのちょうど中間に位置するような製品といえる。また、リモコンっぽさを感じさせないすっきりしたデザインも、これまでの製品にはない特徴だ。
5台の電源ボタンを1画面にまとめる
筆者の自宅のリビングでは、テレビやエアコン、ミニコンポなど合計5つ(夏場には扇風機も加えて合計6つ)のリモコンがテーブルの上に並んでいる。学習リモコンを導入すれば、1台になりすっきりすることはもちろん知っていた。
しかし、これまで学習リモコンを買うことはなかった。既存の学習リモコンは複数の機器を1種類のボタン配置で操作する。そのため、操作する機器によってはどのボタンがどの操作に対応するかを頭で覚えておく必要があったからである。
テレビとブルーレイプレーヤーだけならまだしも、5機種分のボタン配置を覚えるのはちょっと面倒だ。まして、これを家族にも覚えてもらうとなると、導入のハードルは一気に上がってしまう。
しかし、HUISなら画面を切り替えることで、操作する機器に応じて、それぞれの操作画面を呼び出すことができる。ボタンを覚える手間が減らせるのは大助かりだ。
さらに、表示するボタンを自由に変更できるカスタマイズ機能にも対応している。例えば、画面上にある電源ボタンを画面下に移動させたり、まったく利用しないボタンを削除したりできるのはもちろん、登録した各機器のボタンのなかから好きなボタンを選び出し、1つのリモコン設定としてまとめることもできる。
この機能を使うと、例えばテレビ、エアコン、照明、ブルーレイレコーダーなどの電源ボタンだけを1つの画面にまとめて表示できるようになる。外出時や帰宅時には、すべての機器の電源をスムーズにON/OFF可能だ。物理ボタンの学習リモコンでは絶対にマネのできない機能であり、HUISを使いこなせば利便性が格段に上がるのは間違いない。
ちなみに、スマホアプリを使うクラウド型リモコンであれば、アプリを使って上記のようなカスタマイズ機能に対応できる。しかし、スマホと連携するクラウド型リモコンの最大の欠点は、リモコン操作をするために毎回スマホのロックを解除し、アプリを立ち上げる必要があるということだ。便利になっても手間が増えては意味が無い。
その点、HUISは電子ペーパーなので画面を常時表示しており、手に持ってすぐに操作ができる。これらの要素を踏まえ、「HUISなら自宅に導入するのもありかも」と決断して購入を決めたのだった。
スライド操作に戸惑い
ここからは使い勝手を見てみよう。各リモコンの登録方法は既存の学習リモコンと大差ない。機器とメーカー名、信号パターンを選ぶことで自動登録できるほか、自動登録できない機器については、手持ちのリモコンで学習できる。
実際に操作してみると赤外線の感度は良好。付属リモコンと比べるとごくわずかにタイムラグがあるが、違和感なく利用できるレベルだ。また、ボタンをタッチするとスマホのように音と振動で知らせるため、操作していることは感覚的にも認識できる。
使っていて気になったのは、画面の切り替え操作。HUISでは、操作するリモコンの種類を切り替える場合は左右に、ひとつのリモコンが複数のページにまたがっている(=ボタン数が多い)場合は上下に画面をスライドする。だが、単純に画面をスライドすればよいという仕様ではないからだ。
どんな仕様かというと、画面端から上下または左右にスライドさせるというもの。感覚としてはスマホのステータスバーを引き出すようなイメージだ。慣れれば問題ないが、画面中央だけをスライドしても反応しないので、スマホの操作に慣れたユーザーは少し違和感を覚えるだろう。
HUISのバッテリーの持ちは1日100回操作したと仮定して1カ月、充電時間はバッテリー残量0%からの満充電で約2.5時間となる。乾電池×2本で約1年は利用できる一般的なリモコンと比べるのはさすがに酷だが、スマホと変わらないサイズのディスプレーを搭載する機器としてはかなり長持ちといえるだろう。また、バッテリー残量が5%を切ると充電を促す画面が表示されるので、いきなり使えなくなるということはない。
その点を踏まえると、使い勝手のポイントとなるのは「いつ充電するか」だろう。基本的には就寝中や外出中などに充電すればいいが、充電しながらでも利用できるので、例えば映画や2時間ドラマなどの観賞中に充電するのもありだ。
パソコンでの画面カスタマイズも
今回HUISを使って感じたのは、テーブルがすっきりしたという気分の良さと、わざわざリモコンを持ち替える必要がないという手軽さだ。テレビとエアコンの2つぐらいしかリモコンがない人であれば無理にHUISを使うこともないが、それ以上のリモコンがある人なら使う価値はあると感じる。
また、HUISの特徴であるボタンのカスタマイズ機能も、なかなか興味深い。シンプルに使いやすいボタン配置に変えるだけでもその効果は実感できるし、ライフスタイルにあわせたリモコン画面を構成できるのは面白い。
ただ、現時点ではまだリモコン本体のみでしか設定を変更できないため、細かいカスタマイズができない。ボタンの入れ替えなどで手間取る部分があったのは少々残念だった。
ただ、HUISのカスタマイズがパソコンでできるソフトウエアが今年の春にリリースされる予定となっている。マウスとキーボードで快適に設定変更できるのはもちろん、現状ではまだ非対応のボタンサイズやデザインの変更なども可能になるため、その魅力はより一層高まるはずだ。ある意味、このソフトウエアが出ることで、やっとHUISがその真価を発揮するといえるのかもしれない。
既存の学習リモコンと違い、ファームウェアのアップデートで機能改善や新機能の追加に対応できるのがHUISのメリットである。また現状では利用できないが、今後の機能拡張を見すえたBluetoothも実は搭載されている。ぜひとも、これらの機能をうまく活用できるような今後の発展に期待したい。
(文/近藤 寿成=スプール)