会場を満たしたのは、16組の親子たちの笑顔、笑顔、笑顔! 2018年2月17、18日に都内某所で任天堂が開催した体験型イベント「Nintendo Labo Camp!」(ニンテンドー ラボ キャンプ)は、参加者みんなが親子で工作に熱中し、満面の笑みになるという、かつてないタイプのゲーム体験会だった。既にロンドンやニューヨークで同様の体験会は開催済みだが、ついに日本で開催されたので、その様子をリポートしよう。

 今回のイベントは、任天堂が4月20日に発売予定の「Nintendo Switch」向けオプションパーツ「Nintendo Labo」を抽選で選ばれた親子が先行体験できるというもの(関連記事:Nintendo Laboを生んだのは日本独自の工作文化だ)。Nintendo Laboは段ボール製の組み立てキットになっており、Nintendo Switchと組み合わせることで、さまざまなコントローラー(トイコン)を作ってゲームを楽しめる。イベントでは、任天堂スタッフのアドバイスの下、親子で力を合わせてトイコンを完成させた。

任天堂が4月20日に発売予定の「Nintendo Labo」は同梱された段ボール、ひも、輪ゴムなどを使って組み立てたパーツとNintendo Switchを組み合わせて遊ぶ。写真は「Nintendo Labo Toy-Con 01: Variety Kit」。別に「Nintendo Labo Toy-Con 02: Robot Kit」もある  (C)2018 Nintendo
任天堂が4月20日に発売予定の「Nintendo Labo」は同梱された段ボール、ひも、輪ゴムなどを使って組み立てたパーツとNintendo Switchを組み合わせて遊ぶ。写真は「Nintendo Labo Toy-Con 01: Variety Kit」。別に「Nintendo Labo Toy-Con 02: Robot Kit」もある  (C)2018 Nintendo
イベントには16組の親子が参加。会場には4つの作業スペースがあり、2つが低学年用、2つが高学年用に分かれていた。とはいえ、年齢を問わず、用意されていた工作作業は同じもの
イベントには16組の親子が参加。会場には4つの作業スペースがあり、2つが低学年用、2つが高学年用に分かれていた。とはいえ、年齢を問わず、用意されていた工作作業は同じもの

リモコンカーが動いたとたん、もう夢中

 最初のプログラムは「リモコンカー」の作成だ。段ボールからパーツを切り抜き、リモコンカーの形に組み立てる。それにNintendo Switchのコントローラー「ジョイコン」をセットし、最後にNintendo Switch本体のタッチパネルで操作すると、セットしたジョイコンが振動して、リモコンカーが走り出す。

 当初は戸惑う姿も見られたものの、徐々に工作に熱中する子どもたち。完成したリモコンカーが動き出した瞬間、子どもたちの目の色が明らかに変わるのが分かった。たった今、自分の手で作った段ボール製のリモコンカーが、思いのままに動き出し、さらにはターゲットに向かって自動走行したり、テーブル上にシールで作った白線上をなぞるように走り出したりする。それを見て、子どもたちは一気に夢中になった。Nintendo Laboはイベント開始30分で、子どもたちの心を鷲掴みにすることに成功した。

当初は戸惑っていた子どももいたが、5分もすると、まるで魔法にかかったように工作に夢中に。手伝いたいお父さんは邪魔とばかりに自力で作業に熱中する
当初は戸惑っていた子どももいたが、5分もすると、まるで魔法にかかったように工作に夢中に。手伝いたいお父さんは邪魔とばかりに自力で作業に熱中する
最初に作ったのは、ジョイコンの振動によって走るリモコンカー。自分で作ったモノが動き出した瞬間、子どもたちの目の色が変わった
最初に作ったのは、ジョイコンの振動によって走るリモコンカー。自分で作ったモノが動き出した瞬間、子どもたちの目の色が変わった
「レースで区別できるよう、デコレーションしましょう」というスタッフの声を受け、親子で相談しながらデコレーションする。こうして「自分だけのリモコンカー」という思いは強まっていく
「レースで区別できるよう、デコレーションしましょう」というスタッフの声を受け、親子で相談しながらデコレーションする。こうして「自分だけのリモコンカー」という思いは強まっていく
参加者たちが作ったリモコンカー。子どもたちの思い思いのデコレーションがほどこされている
参加者たちが作ったリモコンカー。子どもたちの思い思いのデコレーションがほどこされている

釣り竿型トイコンで釣りゲームにトライ

 続いて、子どもたちは釣り竿の形をしたトイコンの作成に挑戦。パーツ数がかなり多く、複雑に折り曲げなければいけない高度な工作が要求されるが、ラジコンカーで受けた衝撃から覚めないままの子どもたちは、みんな工作に没頭。Nintendo Switch本体に表示される、作成の手順を真剣に見つめながら、20分ほどの作業を黙々とこなしていった。

 ここで驚かされたのは、低学年の子どもたちまでもが、親の手助けを振り払うようになったことだった。「パパは、制作手順を示すソフトのページめくりだけやって!」とばかりに、段ボールを組み立てる作業を自力でやりとげようとする。

 トイコンが完成すると、任天堂のスタッフは、すぐさまそれを使ったゲームを用意。子どもたちは、自分の手で作ったばかりのトイコンのリールを巻き上げ、魚を釣り上げるゲームを楽しんだ。

釣り竿型トイコンの作成がスタート。パーツ数が多く、低学年の子どもには難しいかと思われたが、みんな20分近く黙々と作り続けていた。恐ろしいほどの集中力である
釣り竿型トイコンの作成がスタート。パーツ数が多く、低学年の子どもには難しいかと思われたが、みんな20分近く黙々と作り続けていた。恐ろしいほどの集中力である
自作のトイコンが完成したら、すぐに釣りゲームが楽しめるようになっていた。トイコンの完成を祝福するかのように、任天堂スタッフたちがゲームのプレーをサポートしていた
自作のトイコンが完成したら、すぐに釣りゲームが楽しめるようになっていた。トイコンの完成を祝福するかのように、任天堂スタッフたちがゲームのプレーをサポートしていた
段ボールで作ったトイコンのリールを巻き上げると、海の中で釣り針が動く。その不思議な感覚に子どもたちは大喜び
段ボールで作ったトイコンのリールを巻き上げると、海の中で釣り針が動く。その不思議な感覚に子どもたちは大喜び

3時間の長丁場も飽きない子どもの集中力

 今回のイベントで実際に組み立てたのはこの2種類だけ。その後はNintendo Laboの仕組みの解説や、今回は組み立てなかった残りのトイコン――「ピアノ」「おうち」「バイク」――でのゲーム体験、子どもたちの代表が「Robot Kit」を体験するコーナーなどが続いたが、子どもたちは誰一人飽きた様子を見せなかった。途中に3度あった休憩時間も席を離れず、自作のトイコンで遊ぶ子どもが続出したほどだった。

 3時間という長丁場のイベントで、ゲームで遊ぶ時間は実質1時間にも満たなかったにもかかわらず、子どもたちは驚くほどの集中力を保ち続けたのである。子どもは「自分の手で、何かを作る」ことが大好きなんだ、ということが実感できるイベントだった。

既に組み立てられていた「ピアノ」を体験するコーナーも。鍵盤を押すと、いろいろな音が鳴ることに驚く子どもたち
既に組み立てられていた「ピアノ」を体験するコーナーも。鍵盤を押すと、いろいろな音が鳴ることに驚く子どもたち
こちらがその「ピアノ」。IRカメラを利用して、どの鍵盤が押されたかを認識し、正しい音を鳴らすという仕組みだ
こちらがその「ピアノ」。IRカメラを利用して、どの鍵盤が押されたかを認識し、正しい音を鳴らすという仕組みだ
「おうち」は段ボールのボタンを押したり、揺すったりすると、中で“不思議なこと”が起きる
「おうち」は段ボールのボタンを押したり、揺すったりすると、中で“不思議なこと”が起きる
「おうち」の中で“不思議なこと”が起き、思わず持ち上げてしまう子どもも
「おうち」の中で“不思議なこと”が起き、思わず持ち上げてしまう子どもも
「バイク」はスロットルを回し、ハンドルを傾けることで操作するゲーム。コースを自作することもできる
「バイク」はスロットルを回し、ハンドルを傾けることで操作するゲーム。コースを自作することもできる
「バイク」は男の子たちが競うようにプレーしていた
「バイク」は男の子たちが競うようにプレーしていた
全身に装着した段ボール製の器具でロボットを操作する体感ゲーム「Robot Kit」。くじ引きで選ばれた代表者が体験。他の子どもたちは、その様子にくぎ付けとなっていた
全身に装着した段ボール製の器具でロボットを操作する体感ゲーム「Robot Kit」。くじ引きで選ばれた代表者が体験。他の子どもたちは、その様子にくぎ付けとなっていた
プレーヤーが動いたとおりに、画面内のロボットが動く。パンチなどでビルを破壊し、得点を競うのだ
プレーヤーが動いたとおりに、画面内のロボットが動く。パンチなどでビルを破壊し、得点を競うのだ

Nintendo Laboは子どもを子ども扱いしない商品

 イベントを取材して、もっとも印象的だったのは、「Nintendo Labo」は子どもを“子ども扱いしない”商品だったということだ。

 さあ、自分で作ろう! 段ボールを切り抜いて、自分の手で組み立てよう! ――工作手順を示すソフトに導かれるように、子どもたちは自力で頑張る気持ちをどんどん強めていく。イベント会場にいた大勢の任天堂スタッフも、工作そのものは決して手伝わず、ただアドバイスを送るにとどめていた。うまく作れても「わぁ、すごーい」といった安易な言葉で褒めず、「君ならできて当然だよ」といった態度で接し続けた。

 すると、当初はおぼつかない様子だった低学年の子どもたちも、1人で段ボールを組み立てようと挑戦し始める。商品も、イベントスタッフも子どもたちを安易に子ども扱いせず、大人と同様にきちんと接するからこそ、子どもたちはいきいきと自発的に動き始めるのだと感じた。

 そして自力で作ったものが魔法のように動き出したとき、子どもたちの目の色が変わった。その瞬間は、取材していてちょっと感動したほどだ。Nintendo Laboが発売された後には、世界中の家庭でこんな幸せな光景がありそう……そんな予感がするイベントだった。

最年少の参加者、まこちゃん(1年生)とお父さん。「少し手伝ってもらったけど、でも自分で作った!」とうれしそう。お気に入りは振動で動くリモコンカー。飛び跳ねるように遊び続けていた
最年少の参加者、まこちゃん(1年生)とお父さん。「少し手伝ってもらったけど、でも自分で作った!」とうれしそう。お気に入りは振動で動くリモコンカー。飛び跳ねるように遊び続けていた
最年長の参加者、はるきくん(6年生)とお父さん。「工作が好きだから、すごく面白かった」と大満足。複雑な仕組みの釣り竿型トイコンを、参加者の中でいち早く完成させ、ゲーム内の魚を釣り上げていた
最年長の参加者、はるきくん(6年生)とお父さん。「工作が好きだから、すごく面白かった」と大満足。複雑な仕組みの釣り竿型トイコンを、参加者の中でいち早く完成させ、ゲーム内の魚を釣り上げていた

(文/野安ゆきお、写真/志田彩香)

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