2018年2月1日、eスポーツの新団体「日本eスポーツ連合」(JeSU)が設立され、同日に設立発表会が開催された。JeSUでは、2月10、11日に開催されるゲームのイベント「闘会議 2018」を皮切りに、プロライセンスの発行を開始。2022年のアジア競技大会ではeスポーツが公式種目になることが決定していることから、JOC(日本オリンピック委員会)への加盟、代表選手の派遣と大会への国産ゲームタイトルの供給を目指す。将来的な五輪公式種目としての採用に向けても活動するという。

2020年にはオーディエンスが5億人を超える予測も

 発表会には、JeSUの代表理事に就任した、セガホールディングス社長でコンピュータエンターテインメント協会(CESA)会長の岡村秀樹氏らが登壇。オランダのゲーム市場調査会社Newzooのデータを用い、eスポーツのオーディエンスは2019年に3億人、2020年には5億人を超えるという規模予測を紹介した。5億人超という規模はリアルなメジャースポーツに匹敵する規模で、今後は欧米、アジアに続き、日本でも本格的な普及の期待が高まっている。

 こうした中、新団体は、既存のeスポーツ関連3団体(日本eスポーツ協会、e-sports促進機構、日本eスポーツ連盟)を統合、業界団体であるCESAと日本オンラインゲーム協会が協力し、日本アミューズメントマシン協会、デジタルメディア協会(AMD)の後援を受ける形で設立された。

セガホールディングスの社長であり、CESAの会長も務める岡村秀樹氏が、日本eスポーツ連合代表理事に就任
セガホールディングスの社長であり、CESAの会長も務める岡村秀樹氏が、日本eスポーツ連合代表理事に就任

プロライセンス発行の条件が決定

 今後、JeSUは国内におけるeスポーツ産業の普及と発展を目的とし、eスポーツに関する調査、研究、競技大会の普及、プロライセンス発行と大会の認定、選手の育成支援と地位向上などを行う。

 この中でも大きいのが、プロライセンスの発行と大会の認定だ。プロライセンスの発行は、ゲームタイトル単位。2月10日、11日に開催される日本最大級のゲームイベント「闘会議 2018」では、6タイトルについて、第1回プロライセンス発行大会を実施する予定だ。

 JeSU理事の浜村弘一氏(Gzブレイン社長)によると、プロライセンスは、JeSUが提示するプロゲーマーの定義――高いパフォーマンスを観客に示して報酬を得るプロとしての自覚を持つこと、スポーツマンシップにのっとり、フェアなプレーを心がけること、プレー技術の向上に向け、日々精進すること、国内のeスポーツ発展に寄与すること――に誓約し、JeSUが認定した公認大会において公認タイトル競技で優秀な成績を収めたうえ、JeSUが指定する講習を受けたプレーヤーに発行されるとのこと。

Gzブレイン社長を務める浜村弘一氏も、JeSUの理事の1人として登壇。JeSUのプロライセンスの内容などを具体的に説明した
Gzブレイン社長を務める浜村弘一氏も、JeSUの理事の1人として登壇。JeSUのプロライセンスの内容などを具体的に説明した

 また、ライセンスは、「15歳以上で義務教育課程を修了している者を対象」とした「ジャパン・eスポーツ・プロライセンス」と、「13歳以上15歳未満で、プロライセンス発行に値する者を対象」とした「ジャパン・eスポーツ・ジュニアライセンス」の2つに分かれる。大きな違いは賞金の有無。ジュニアライセンスは、賞金が獲得できず、代わりにパソコンやデジカメ、ゲーム機といった「高額ではない賞品」の獲得は可能だ。15歳に達した時点で本人と保護者の意思を確認のうえ、プロライセンスを発行するという。

 かねてから議論を呼んでいた「既にプロとして活動している人たちをどう扱うのか?」という問題についても、一定の回答が出た。浜村氏は「例外的ライセンスの発行」として、ライセンス発行開始時から過去に遡り、公認タイトルの大会で著しく優秀な成績を収めている人には、例外的にライセンスを発行するという。ただし、発行にはIPホルダー(ゲームメーカー)の推薦が条件となる。

 チームで戦う競技向けに、JeSUではチームライセンスの発行も予定している。チームライセンスの対象になるには、法人格を持ち、国内外を問わずに獲得した実績をIPホルダーが認め、JeSUが承認したチームであることが条件。チーム内にライセンス保有者が1人以上いれば、JeSU公認の賞金付き大会に出場することもできるが、その場合、賞金がもらえるのはライセンス保持者だけになるという。

闘会議 2018で6タイトルが公認タイトルに

 前述のように、JeSUがプレーヤーの「実績」を認め、プロライセンスの発行を行う大会は、幕張メッセでの開催が迫る「闘会議 2018」が初となる。対象ゲームは下記の6タイトル。ジャンルはFPS(First Person Shooter、主人公本人視点で動くゲーム)や格闘ゲーム、サッカーなど、対応ゲーム機はパソコンから家庭用ゲーム機、スマートフォンと、バラエティーに富んだ内容だ。

・『ウイニングイレブン2018』(コナミデジタルエンタテインメント) PS4、PS3向け
・『コール オブ デューティ ワールドウォーII」(ソニー・インタラクティブエンタテインメント ) PS4向け
・『ストリートファイターV アーケードエディション』(カプコン) PS4、PC向け
・『鉄拳7』(バンダイナムコエンターテインメント) PS4、Xbox One、Steam向け
・『パズル&ドラゴンズ』(ガンホー・オンライン・エンターテイメント) iOS・Android向け
・『モンスターストライク』(ミクシィ) iOS、Android向け

JeSUがライセンスを発行する公認タイトルはこの6タイトル。国内で継続してプロ活動が行えるような競技性を持つタイトルであれば、海外製のゲームも公認として加えていく方針だ
JeSUがライセンスを発行する公認タイトルはこの6タイトル。国内で継続してプロ活動が行えるような競技性を持つタイトルであれば、海外製のゲームも公認として加えていく方針だ

 さらに、闘会議 2018では、スマホ用のリアルタイム対戦型カードゲーム『クラッシュ・ロワイヤル』(開発・運営はSupercell)の日韓親善試合も予定されている。こうしたゲームを通じた文化交流、国際交流を図ることも、JeSUの目指す「ゲーム振興」のひとつの形だ。

 闘会議以降は上記6タイトル以外にも公認タイトルが増える予定で、既にIPホルダーからJeSUに認定の申請が届いているという。加えて9月開催の「東京ゲームショウ2018」でもeスポーツ関連イベントを実施する予定だ。

◇  ◇  ◇

 JeSU設立発表会で強調されたのは、「ライセンスの目的はあくまでもプレーヤーにとって活躍の場を増やすことであり、既にプロとして活動しているプレーヤーやコミュニティーを制限するものではない」ということだった。

 それというのも、JeSUがプロライセンスを発行するに至ったのは、国内で高額賞金を設定した大会を開く際の法的な問題をクリアするため。つまり、「JeSUが公認する大会で賞金を得るためにライセンスが必要」ということだ。従って、例えば、既にプロとして活動するプレーヤーが、自主的に海外で開催される大会へ出場し、賞金を得るといった活動にはライセンスがなくても問題ない。

 これは2017年12月にCESAがプロライセンスを発行する新団体発足の意向を発表して以来、プロとして活動するプレーヤーたちを中心に不安や疑念を持ってとらえられていたことだ。それだけに、JeSUとしても明確にしておきたかったのだろう。

 これでやっと国内で「プロ」としてゲームプレーヤーが活躍する、ひとつの基準が示された。このことはゲーム業界やプレーヤーにとってプラスの要素こそあれ、マイナスの要素はないだろう。いずれeスポーツが国内でも人気を得て定着するのはまず間違いないだろうが、それをどれだけ早められるのか? JeSUの手腕が問われる。

JeSUの役員を務める7人。左から、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの越智政人取締役CS本部長、カプコンの辻本春弘社長、日本eスポーツ協会理事を務めた平方彰氏、CESAの会長も務めるセガホールディングスの岡村秀樹社長、Gzブレインの浜村弘一社長、SANKOの鈴木文雄社長、コナミデジタルエンタテインメントの早川英樹社長
JeSUの役員を務める7人。左から、ガンホー・オンライン・エンターテイメントの越智政人取締役CS本部長、カプコンの辻本春弘社長、日本eスポーツ協会理事を務めた平方彰氏、CESAの会長も務めるセガホールディングスの岡村秀樹社長、Gzブレインの浜村弘一社長、SANKOの鈴木文雄社長、コナミデジタルエンタテインメントの早川英樹社長

(文/稲垣宗彦)

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