撮影後の編集が省けることで、スピード感のある発信が可能に

 ドローンエモーションの代表を務める田口さんは、ドローンの教育や研修を手がけるかたわら、企業や自治体、テレビ局などに依頼されてドローンによる空撮を多くこなしてきた。

田口さんが最も使用する機会の多いドローンが、DJIの「Phantom 4 Pro+」。Phantomシリーズは初期のころから愛用してきたという
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狭い場所や室内といった場所では、DJIの「Mavic Pro」が活躍する。ローターアームが折りたためるため、持ち運び時に重宝する
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 なかでも田口さんが力を入れているのが「ドローン×地方創生」をキーワードに、全国の自治体や観光地のPR動画をドローンで撮影し、SNSで発信しやすい型式の動画と写真で納品する「四季パッケージ」だ。これまでにも日本各地の美しい四季をドローンで収めて多くの自治体や観光地から評価を得てきたが、この四季パッケージでも“ワンカット”がキーワードになっているいう。

つつじで有名な福岡県朝倉郡東峰村のプロモーション映像。こうした短い動画を数多くFacebookに上げることで、これまでにないアクセス数を獲得したという
桜の名所で知られる弘前城のさくらまつりを撮影したワンカットの作品。橋をくぐりぬけて堀と桜並木の奥行きを見せつつ、上昇しながら旋回することで弘前城が見えてくるという変化に富んだ動画だ

 「以前、ある県のPR動画を撮影をした際の話です。依頼される自治体としては、県内の見どころをいっぱい紹介すべく、なるべくたくさんの要素を盛り込みたいわけです。その要望を受け、13分、8分、4分という長さの動画を作ってWebサイトやSNSで公開したものの、再生回数は800回程度と伸びませんでした。これでは、大きなコストをかけて作った割に費用対効果が悪い。動画をもっと短くして、より多くの人に見てもらえるようにしようと考えた結果が“ワンカット”なのです」(田口さん)

「ワンカットの短い動画は誰にでも見てもらいやすい」と話す田口さん。SNSとの相性がよいうえ、地方から情報を発信する際にも短い動画は素材として使ってもらいやすいという
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 田口さんによると、このような動画が最初から最後まできちんと見てもらえるのは、YouTubeだと2分から3分、タイムラインで無数の投稿が流れていくSNSになると、なんと15秒から1分が限度だという。しかも、単に短いだけではだめだそう。冒頭の数秒で視聴者の関心をつかむインパクトのある映像が必要で、そこから変化を伴う短い1カットのほうがSNSには相性がいい、というのが田口さんの見方だ。事実、ドローンエモーションが手がけた自治体の動画では、1本30秒程度の動画をFacebookにアップロードした結果、それまで数百だったアクセス数が数千の単位に変わったという。

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ドローンエモーションで手がけた福岡県朝倉郡東峰村の動画は、それまで数百だったFacebookページのアクセスが、ドローンによる空撮動画をアップロードしたことで2000、3000とアクセス数を増やしていった

 また、ドローンで撮影したワンカットの動画は、田口さんの提唱する「ドローン×地方創生」というコンセプトにもちょうどよいのだという。「動画が短いと、二次利用や三次利用がしやすいんです。例えば、ニュース素材としてテレビ局から自治体に提供依頼があったときに、カット単位で渡すことができます。編集済みの動画作品だと、素材を編集する側のテレビ局がいちいち抜粋しなければならない。ワンカットだとそのまま素材として利用できるため、テレビ局にとって使いやすい」という。

 「ワンカットは、撮影後の取り扱いのスピード感も違う」と田口さん。撮影後に編集しないこともあって、その日の夜には自治体のFacebookにアップすることも可能だ。もちろん、ニュース素材として自治体がテレビ局に映像を提供する場合でも即座に対応できる。

 「一年を通じて撮影を行っている観光地のひとつに、栃木県足利市のあしかがフラワーパークがあります。藤の花で有名なこのテーマパークは、花のシーズンになると毎週違う藤の花が咲くんですね。撮影したその日のうちにSNSにアップできれば、それを見て来場したお客さんが、動画に映っている花や景色そのものを楽しむことができるんです。ワンカットの動画は、そんなSNS時代のコミュニケーションツールにぴったりだと思います」

女性がブランコを楽しんでいる様子から、ドローンがだんだん後退していくことで、そこが南の島の絶景であることが分かるという動画。バリ島で撮影