世にあふれるさまざまな人気キャラクター。AI(人工知能)によって、キャラクターに知性が組み込まれたらどうなるだろうか――。AIを活用したキャラクタービジネスの活用事例や今後の可能性を探るイベント「AI MEET UP『AI×キャラクター・ビジネスの展望』」が2017年10月23日に行われた。

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AIとキャラクターは相性が良い

 イベントではまず、日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)理事で、ゲームAIの第一人者でもある三宅陽一郎氏がAIに対する日本と欧米の考え方の違いを解説。AI関連技術の開発では海外に主導権を握られるなか、これから日本の強みを生かしていけるのは、AIとキャラクターを組み合わせた領域で、そこに爆発的な可能性があるのではないかと指摘した。

「キャラクターにAIをのせるところに爆発的な可能性がある」と語る三宅陽一郎氏
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 三宅氏によると、西欧の考え方では、神の下に人があり、その下に人工知能があるというように垂直に知能を捉える(垂直的知能感)。ゲームを除けば人型をしたAIはあまりなく、AIを扱った映画などでもAIと人間の立場が逆転することを恐れるような内容が多い。

神の下に人、その下にAIがあるという、西欧の垂直的知能感
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 それに対し、日本を含む東洋の考え方では、あらゆるものに神が宿る「八百万の神」という考え方に見られるように、すべてを横並びに捉える(水平的知能感)。だからこそ、キャラクターに対して寛容で、キャラクターを生かす考えに基づいたゲームやアニメが作られ、ファンに支えられている。「AIにおいてもキャラクターを土台に発展させる土壌があるのではないか」と三宅氏は説明した。

「八百万の神」のような、東洋の水平的知能感
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 AIとキャラクターを組み合わせた活用方法としては、AIを擬人化したエージェントとして各種サービスのインターフェースにすることを挙げた。最近、声で操作できるスマートスピーカーが登場し始めているが、スピーカーには話しかけにくいという人もいる。エージェントとしてキャラクターを立てることで、そうした人も声をかけやすくなるのではと指摘した。

AIとキャラクターを組み合わせ、各種サービスのエージェントとして使うことを、三宅氏は「キャラクター・エージェント指向」と説明した。キャラクターを愛でるという日本のキャラクター文化はAI技術と結びつき、AIを使ったビジネスではそこに日本の強みがあるという
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人間が対話型AIに話しかける言葉の多くは愛情表現

 後半は三宅氏に、徳島大学発のベンチャー企業である言語理解研究所(ILU)/Intelligent Machines Amaze You(IMAY)代表の結束雅雪氏、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)の井上敦史氏、ソニー・ミュージックコミュニケーションズ(SMC)の松平恒幸氏が加わり、AIを活用したキャラクタービジネスの現状について語った。

 SMEはILUが開発したAIエンジン「K-laei」を使って対話型AIサービス「PROJECT Samantha」を開発。ILUの結束氏とSMEの井上氏は、共にPROJECT Samanthaの運営に携わっている。SMCの松平氏は、人気アニメ「ソードアート・オンライン」のキャラクター・アスナの声でユーザーを起こし、今日の天気や占い、スケジュールなどを伝えてくれるアプリ「めざましマネージャー アスナ」などの開発・運営を担当している。AIとキャラクターを組み合わせたビジネスを実践しているメンバーだ。

ILUとIMAYの代表を務める結束雅雪氏
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結束雅雪氏が代表を務めるILUは、日本経済新聞社が採用したAIで記事を自動作成するサービス「決算サマリー」や、対話型AI「PROJECT Samantha」の人工対話エンジンなどを開発した
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 結束氏は「現在のAIによる会話は、入力文(質問)と出力文(回答)があらかじめひもづけられた固定対話から、入力文の意図をくみとって出力文を選択する自由対話へ移行しつつある」とし、AIキャラクターのビジネスでは自由対話の実現が重要になると話した。そのための、ILUとSMEによる成果のひとつがユーザーがチャットボックスに文字を入力して話しかけると、AIを使った美少女キャラが罵倒で返答してくれるという『AI罵倒少女』だ。

対話型AI「PROJECT Samantha」の開発・運営を行っている井上敦史氏
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キャラクターとコミュニケーションをとるAIのトレンドは自由対話
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『AI罵倒少女』。チャットボックスにユーザーが何か入力すると、それに対してAIを使った美少女キャラ「素子」が罵倒してくれるというもの
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 AI罵倒少女を開発した井上氏は、「究極の目標はキャラクターとの自由対話」だという。AIの美少女というと汚い言葉を入力する人も多そうだが、井上氏は「ユーザーが入力した上位10位の言葉が『愛している』『好き』『かわいい』などの愛情表現。人はAIに愛を囁く」ことを明かした。

 松平氏によると「めざましマネージャー アスナ」でも同様に、ユーザーが入力した言葉の上位は愛情表現が多いという。「ユーザーインターフェースが対話型にシフトするとエージェントにはキャラクターが求められる。人はキャラクターと話したいのでは」と分析した。

「めざましマネージャー アスナ」などの開発・運営に携わる松平恒幸氏
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人気コンテンツ「ソードアート・オンライン」シリーズのヒロイン、アスナが毎朝起こしてくれるというアプリ
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人は、キャラクターと自由に話をしたいという願望を持っている
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三宅陽一郎氏が登壇する「AI×ロボット」セミナーを開催
2017年11月2日(木)、3日(金・祝日)にベルサール東京日本橋で開催する「TREND EXPO TOKYO 2017」。2日には「最先端の開発者が語る AI&ロボットがいる“未来”のカタチ」というセミナーを実施します。登壇するのは、本記事に登場した三宅陽一郎氏とソフトバンクロボティクスの蓮実一隆。コーディネーターはジャーナリストの津田大介氏が務めます。

三宅陽一郎氏が登壇する講演に申し込む

(文/湯浅英夫=IT・家電ジャーナリスト)