この記事は「ITpro」の同名の記事(2017年7月7日公開)を転載したものです。内容は基本的にITproでの公開時点のものとなります。

 2020年度に全面実施される小学校の次期学習指導要領。その総則には「児童がプログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるための論理的思考力を身に付けるための学習活動」を計画的に実施する旨が明記されている。小学校でどのようにしてプログラミング教育をするかが差し迫った現実となっており、各自治体はいよいよその対応をしなければならない段階に来ている。

 2017年6月17日、教育関連の総合イベント「New Education Expo 2017 in 大阪」(会期は6月16日、17日)で開かれたセミナー「プログラミング教育が目指すもの ―本当に必要な教育内容や指導体制とは―」は、何をどうすればいいのかといった不安の念にさいなまれているであろう教育関係者で満席となった。セミナーでは先行してプログラミング教育を実践している神奈川県相模原市と滋賀県草津市の具体的な取り組みが紹介され、各市の取り組みから学ぶべき点などが語られた(写真1)。

写真1●左から東北大学大学院 情報科学研究科 教授の堀田龍也氏、相模原市教育委員会 教育局 総合学習センター 指導主事の渡邊茂一氏、草津市教育委員会事務局 草津市立教育研究所 指導主事 嶋田達也氏、宮城教育大学教育学部 准教授 安藤明伸氏
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「教育課程のプログラミング教育」を理解してもらう

 本セミナーのモデレーターは、文部科学省の「小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議」(以下、有識者会議)の主査だった東北大学大学院情報科学研究科教授の堀田龍也氏が務めた。各市の取り組みを紹介する前に、堀田氏はセミナーの主旨や、プログラミング教育の背景などを説明した。

 まず堀田氏は不安を持つ教育関係者だけでなく、プログラミング教育の必修化を機に学校をサポートしようとする民間企業についても言及。「(企業と)どうやってコラボしてやってもらえるか。教育課程におけるプログラミング教育をご理解いただかないと、ややもすると過剰だったり、間違った形になったりする可能性がある」と指摘し、市の教育委員会(市教委)の取り組みに対する理解を深めるためにも、本セミナーはあるとした。

 そもそもなぜプログラミング教育が必要なのか。堀田氏は自動運転や掃除ロボットといった身近な例を挙げつつ、これらには誰かが作ったプログラムが入っていると説明。「ロボットやコンピュータプログラムとの共存に向かっていく社会において、子供たちがそのことを全く理解していなくていいのか」(堀田氏)といったことがプログラミング教育の背景にあるとした。

 また、諸外国と比較して日本がプログラミング教育において後発である点を指摘。例えば英国では20年以上前から教育にICTを取り入れ、情報活用能力を育む教科を初等学校(小学生に相当)段階から実施。2014年からはさらに踏み込んで「Computing」といった必修科目で、コンピュータサイエンスを初等学校段階から学んでいる。一方で日本は「タイピングすら教育できていない。小学校段階からICTの基本的な操作をさせつつ、これからの情報社会の仕組みについてどう理解させるかが大事なテーマになっている」(堀田氏)と述べた。

 こうした背景があり、「これからの時代を支える国民に不可欠なもの」(堀田氏)として、プログラミング教育に関する議論が始まった。そして有識者会議がその方向感を示し、中央教育審議会(中教審)が最終答申に組み入れ、それを受けて文科省は次期学習指導要領を2017年3月末に公示。小学校過程におけるプログラミング教育が2020年度から全面実施されることとなった。