文化の発信地として歴史ある伊勢丹新宿本店は、電通ビジネス・クリエーション・センターとの協業を進めることで、テクノロジーを活用した百貨店の革新に努めている。

 両社による取り組みが始まったのは今年の3月末。伊勢丹新宿本店本館6階のプロモーションスペースに「屋久島の旅」をVRで体験できるコーナーを設けると、2週間の会期中に700名以上の体験者が訪れる高い反響を呼んだ。

 第2弾となる今回は、ダンボール製のコンテンツ付きVRビューワー「VRあさひやまどうぶつえん」の販売を開始。

旭山動物園50周年×三越伊勢丹 特別企画「VRあさひやまどうぶつえん」は、本体に専用アプリを起動したスマートフォンをセットすることで手軽にVRコンテンツを体験できる、組み立て式のダンボール製VRビューワー。コンテンツには、動物本来の生体を再現する環境づくり「行動展示」で注目される旭山動物園のオリジナル映像を採用する。

2020年の教育改革を見据えて

 伊勢丹新宿本店の玩具売場では、近年教育の現場で注目される「STEM+A(Science, Technology, Engineering and Mathematics+Art)」をキーワードに売場づくりを行ってきた。その背景には、プログラミング教育の必修化やアクティブラーニングの導入といった、テクノロジーの活用を前提とする2020年の教育改革の動向があるという。同玩具売場でバイヤーを務める西山裕慈氏、アシスタントバイヤーの渡邉敦紀氏は「テクノロジーの進化にいかに対応していくか」を求められるのは、百貨店も同じだと語る。

三越伊勢丹 婦人・子供・婦人雑貨統括部でバイヤーを務める西山裕慈氏(写真右)とアシスタントバイヤーの渡邉敦紀氏(写真左)

 「玩具売場のお客様は、未就学から小学校低学年のお子様です。そのためにも、これからの教育現場の進展を見据えた、リテラシー教育のきっかになるような売場にしたいと考えています。『VRあさひやまどうぶつえん』は、たとえ動物園にお子様を連れて行くことが難しいご家庭でも、生き生きとした動物の姿を、至近距離で安全にお子様に見せることができます。そうした体験に接したお子様が、『自分でもVRを作ってみよう』と考え、将来“変化を生み出す側”として求められる大人になっていただけるとうれしいです」(西山氏)

 一方、教育にテクノロジーを取り入れることに対して、抵抗を感じる人はまだまだ少なくない。そんな現状に対して西山氏は「三越伊勢丹というブランド名が、テクノロジーに対する垣根を少しでも取り払い、身近に感じてもらえるように貢献できるのではないでしょうか」と期待を寄せる。そのためにも、今回の「VRあさひやまどうぶつえん」のようなわかりやすい“モノ”から、「屋久島の旅」のVR体験ブースといった“コト”まで、今後も幅広く提供しながら、「将来的にはお子様自身が“メーカー”になれるキッズ・ファブスペースの設置など実現できれば楽しそうですよね」と展望を語った。

テクノロジーをビジネスにつなげるために

 電通の組織、ビジネス・クリエーション・センターは、こういった先進映像(VR/AR/MR、ドローン、4K/8K、etc.)のマーケティング活用等でも、新しいビジネスを生み出すための活動を行っている。今回の協業の発起人である荒木亮氏は、テクノロジーのビジネス活用にあたり伊勢丹新宿本店では“ならでは”の価値提供が実現できると考える。

電通 ビジネス・クリエーション・センターの荒木亮氏(写真右)と三澤加奈氏(写真左)

 「STEMの重要性も、教育におけるテック活用の有効性もなんとなく理解しているものの、モデルケースはまだまだ少ない。これからの時代、子供たちにどういった教育を与えればよいのか迷っている親御さんは多いかと思います。文化の発信地としての歴史があり、立地もすばらしい伊勢丹新宿本店が、このような商品を通じて、‘三越伊勢丹が考えるSTEM+A’を世の中に向けて発信するのは意義があることではないでしょうか。またECサイトにはない優れたリアルなスペースを活用して、大人から子供まで巻き込んで、最先端のテクノロジーに触れながら議論ができるような、アイデアが生まれる「コミュニケーションの場」としての可能性も秘めていると思います」(荒木氏)

 電通ビジネス・クリエーション・センターの一員であり情報科学の専門性を生かして開発に携わる三澤加奈氏は「教育向けの良質なコンテンツはたくさん生み出されていますが、これからの時代にどんなものが子供たちの力を伸ばすのかは分かりません。玩具と教材のはざまを考えながら、まずは始めてみることが大切だと感じています」と熱意を語る。「教育的観点では、与えられたものを受け止めるより、創意工夫して使ってもらえるものがいいとされています。そうしたコンテンツを現在自社で温めていますので、形になり次第お見せしたいです」(三澤氏)

 スマホ専用VRビューワー「VRあさひやまどうぶつえん」は、9月20日に開始する「オンリー・エムアイ 秋のキャンペーン」より、伊勢丹新宿本店本館6階の玩具売場を中心に販売を開始。販売店舗は順次拡大予定だ。ECショップの三越伊勢丹オンラインストア「オンリー エムアイ」でも順次販売される。税別5000円。