資生堂でチーフ・マーケティング・ラーニング・オフィサーを務め、2017年12月31日に退職した音部大輔氏が独立する。2018年1月にクー・マーケティング・カンパニーを設立。企業向けにマーケティングのコンサルティングサービスを始める。マーケティング施策の実行に適した組織改革や、知見を社内共有するための仕組み作り、音部氏が考案するマーケティングモデルの導入などを支援する。

 「CMO(最高マーケティング責任者)を企業間でシェアする」。音部氏は提供するサービスをこう称する。CMOのシェアリングというアイデアは、資生堂でマーケティングの責任者を務めた経験から生まれた。

資生堂でチーフ・マーケティング・ラーニング・オフィサーを務めた音部大輔氏は1月から独立。クー・マーケティング・カンパニーを設立してマーケティングコンサルティングサービスを提供する
[画像のクリックで拡大表示]

 資生堂のような複数のブランドを抱える企業の場合、CMOはすべてのブランドのマーケティングを掌握するわけではない。ブランドマネージャーをトップとして、ブランドを経営の最小単位とする。それがブランドマーケティングに適した組織だという。ではCMOの役割はというと、マーケティング施策の実行とその結果に基づくPDCA(計画、実行、評価、改善)を回せる体制を整備すること。それが、「複数のブランドを抱える企業におけるCMOの役割」というのが音部氏の持論だ。

 具体的には、ブランドマネージャーがきちんとマーケティングを実行するための戦略の正しい立て方の教育、「ブランド」という言葉の意味の定義付け、施策で得た知見をほかのブランドマネージャーと共有するための共通指標作りなどが挙げられる。

 こうした体制の整備が終わり、マーケティング戦略が自走するようになれば、「必ずしもCMOは常駐している必要はない」と音部氏は言う。そこで空いた時間を使い、コンサルティングサービスを提供する。まるで、CMOを企業間でシェアするようなサービスであることから、音部氏はCMOのシェアリングと名付けた。

 独立に先駆け資生堂で実行した改革の全容、日本の企業が抱えるマーケティングを実行するための組織の課題、新たなサービスの詳細な内容などについて音部氏に聞いた。

――資生堂ではどのような改革を実施したのでしょうか。

音部氏: 資生堂には「ブランドマーケティング組織を構築する」という使命を持って入社しました。肝になるのは経営の最小単位をブランドにすることです。ブランドマネージャーが経営者となり、ブランドを成長させる。そうした組織の構築が求められます。

クー・マーケティング・カンパニーの音部大輔社長
[画像のクリックで拡大表示]

――従来はマーケティングに適した組織ではなかったのでしょうか。

音部氏: 従来もマーケティングの組織はあり、ノウハウは豊富にありました。ですが、そのノウハウを社内で共有する仕組みがありませんでした。「ブランドを成長させる」。これは組織、ひいてはブランドマネージャーが成長することと同義でもあります。成長に欠かせないのが知識や経験です。

 ところが、ブランド間で知識や経験を共有できる仕組みがなければ、せっかく多くのブランドを展開していても、各ブランドで実施したマーケティング施策の知識や経験を会社全体で十分に得られていないことになります。ですから、ブランドの成長には社内で蓄積した知識の流通量を増やす必要がありました。