「シェアサイクル」事業を展開するドコモ・バイクシェアが好調だ。会員数は約31万人を抱える。2017年の利用回数は前年比1.5倍の350万回に急拡大。5年間で10倍にまで拡大したことになる。用途は主に通勤・通学だ。ドコモ・バイクシェア取締役の清水貴司経営企画部長は「一般的な事業では、前年から倍の成長とはいきにくい。だが、結果的に当社の事業は倍々で成長を遂げている。2018年も利用回数を昨年比で倍にすることを目指す」と息巻く。

 シェアサイクルは利用者がスマホを使って利用したい自転車の予約、解錠、支払いを一括してできるサービス。欧州や中国で先行して利用が広がっている。日本でもカーシェアリングサービスが普及の兆しを見せるなど、都心在住者や若者を中心に「持たない生活」が徐々に浸透している。自転車も保有しない時代の到来も近そうだ。それを見越して、2017年にはLINEやメルカリなど、さまざまな企業の参入発表が相次いだ。

 ドコモは他社に先駆けること2015年にシェアサイクル市場に本格参入した。同社のサービスはアプリ「bike share」で利用する。アプリで周辺にある駐輪場を探して、利用する自転車を予約。指定の駐輪場に行き、予約した自転車の操作パネルに登録済みのICカードやFeliCa対応のスマホをかざすことで解錠される。自転車の利用後は、周辺にある専用の駐輪場に返却して手動で施錠をする。利用した時間分の料金がアプリに登録したクレジットカードか、ドコモの携帯電話の契約者であれば携帯電話の利用料と合算して請求される。

アプリで駐輪場を探して、利用する自転車を予約する
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 ドコモがこれまで、注力してきたのは駐輪場の拡大だ。日本に先駆けて爆発的にシェアサイクル市場が広がった中国は、乗り捨て型が主流。一方、日本は自治体を挙げて自転車の違法駐輪の取り締まりを強化してきた背景があり、同様の仕組みではサービスを提供できない。そのため、乗りたい、止めたいと思ったときにすぐに利用できるように、どれだけ多くの駐輪場を設置できるかが競争のポイントになる。

ドコモ・バイクシェアの利用者数は5年間で10倍に拡大した
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 だからドコモは、駐輪場の拡大と、自転車の台数を増加させることで利便性の確保を優先してきた。昨年にはセブン-イレブン・ジャパンと提携。国内に約2万店舗を展開するセブン-イレブンの店舗網を生かして、32店舗に駐輪場を設置している。店舗数は今後も拡大させていく。また、マンションの開発事業者などと交渉して、住宅への駐輪場の設置拡大を狙うなど、新たな駐輪場の開拓にも力を入れている。現在、日本全国24都市の632カ所に駐輪場を設置。6553台の自転車を用意している。これが結果的に利用者拡大にも寄与している。

 ドコモの貸し出す自転車は、ブランドカラーである鮮やかな赤色の筐体を採用しているのが特徴だ。この特徴によって自転車が広告塔にもなる。利用者の拡大によって「道行く人が街中でドコモの自転車を見かける機会が徐々に増え、クチコミで利用者が増えていった」(清水氏)。これにより広告宣伝費をほとんどかけることなく、利用者を拡大していった。

 ところが昨年から新規参入が相次ぐなど、市場が大きく動き始めた。参入するのはネット企業だけではない。住宅の賃貸情報事業「アパマンショップ」を展開するAPAMANも2018年中にシェアサイクル事業に参入する。今後、競争激化は避けられない。そこでドコモは新たに3つの戦略で事業を進める。「AI(人工知能)を活用した需要予測と自転車の適正配置」「法人利用の開拓」「プロモーションの強化」だ。これにより後続勢の突き放しにかかる。