日本の得意分野のニッチを探す

――ほかにも、漁業の現場でAIが活用される例はありますか?

中島: ホタテの養殖では、すでにITを利用しています。ホタテは海水温にすごくセンシティブで、高くても低くても死んでしまうんです。

松原: 「冷水塊」っていう、冷たい水の塊が来るらしいんです。冷水塊は、ある特定の深さに来る。たとえば、水深5メートルのところに冷水塊が来たら、水深3メートルでも7メートルでもホタテは生きているけれど、水深5メートルのホタテは死んでしまうとホタテ業者は言っていました。だから、養殖のホタテがついている部分の水深をスルスルと上げたり下げたりすることで、冷水塊が通り過ぎる高さを避けてやれば、養殖のホタテは、すべて生き残るわけです。

中島: 現時点では、水深およそ1メートルおきに水温計をつけて、海水温をモニターして、データを養殖業者に発信するところまでは実現している。

松原: そう、それはできている。

中島: いまは、海水温の変化データをもとに、人間が手作業で養殖のホタテのついた網を上げたり下げたりしている。将来的には、巻き上げリールもシステムに組み込んで、冷水塊を自動的に避けるように養殖ホタテの水深を変えられるシステムの構築を考えている。

松原: いま、漁業のイカ釣りには、センサーと機械の巻上げ機が利用されているんですが、そのシステムに「昨日はこれくらいの深さで、これくらいの量が釣れた」というデータを機械学習させて、魚群探知機のデータと合わせることで、漁の収量を最大化するシステムはつくれませんかっていう依頼もあります。

――たしかに、日本が得意とする漁業の分野では、日本のAIが先行できそうですね。

松原: 漁業にしろ、農業にしろ、畜産業にしろ、食糧は必ず確保しなければならないので、非常に重要な分野です。

中島: 言うなれば「日本の得意分野のニッチを探す」という感じかな。AIはもともと、ITの最先鋒とも言えるから。

松原: たしかに、AIはITのフロンティアですよね。

中島: フロンティアっていうか、私は「先鋒」っていう言い方をしているんだけど、要するに、わけのわからないところに突っ込んでいくのがAIで、わけがわかってくると、ちゃんとITとして世の中にひろがってくる。だから、はこだて未来大学では、AIの先生も多いけれど、ITの社会運用の研究もメインにしている。基礎研究には、莫大な費用がかかってしまうから。

松原: はこだて未来大学は、それほど規模の大きな大学ではないですからね。

中島: いや、それでも、はこだて未来大学の教授や学生は、かなり優秀だよ。実際、「マリンIT」は、去年、総務大臣賞までもらったわけだし。

マリンITが総務大臣賞を受賞
総務省により、平成27年10月9日から11月13日まで、地方創生に資する「地域情報化大賞2015」の表彰事例が募集され、全体で85件の応募があった。これらのなかで、公立はこだて未来大学のマリンIT・ラボの「うみのアメダス」を用いた海洋環境の見える化による養殖業の支援と、「うみのレントゲン」を用いた水産資源の見える化による漁船漁業の支援を通じての「IT漁業による地方創生」が、大賞/総務大臣賞を受賞した。