日本の強みをAIで強化する

――AIの研究開発に投入される資金の額で考えたら、アメリカに勝てるはずがない。しかし、技術立国を標榜する日本としては、AIの分野で負けっぱなしは許されない。そうなると、日本はどうすればいいのでしょうか?

中島: いま、日本がAIの研究開発に注力するとしたら、おそらく「ものづくり」の分野です。まだ日本が世界よりも進んでいますから。ただ、ほうっておくと、中国に抜かれてしまうけど。

――職人技で差がつく「ものづくり」にAIが関係するのでしょうか?

中島: AIで「ものづくり」をやるわけです。

――AIで「ものづくり」?

中島: 一例として「金型づくり」があります。現状、金型は人間がデザインして、そのあと「この金型でうまくいくかどうか」のシミュレーションをコンピュータシステムで行っています。そこで、この「金型のデザイン」の部分もAIでできないかという取り組みが始まっています。

松原: 金型は抜けなかったら困るし、抜いたあと歪みが出ても困る。

中島: そう。思った通りのきれいな金型をつくるのは、なかなか一筋縄ではいかない。その高度な技術を日本は持っているので、そこをAI化すれば、アメリカや中国が真似のできない技術と効率性を「ものづくり」に付加することができる。

――自動運転の分野はアメリカもやっていますが、「ものづくり」の分野では、まだ日本がリードしているから、そこで活用できるAIを研究開発していくわけですね。

中島: 「ものづくり」に限った話ではありません。いま、日本が世界をリードしている分野、たとえば、安心安全な野菜づくりや、最高品質の肉牛を育てるのは、日本が勝っている。そういう日本の得意分野をAIでさらに強化すればいい。

松原: 実際、はこだて未来大学では「漁業にAIを」という取り組みが進んでいます。

中島: そう、「マリンIT」は、日本が比較的、得意とする漁業の分野にAIを取り入れる取り組みの一例となる。「陸上で確立された技術を海に適用しよう」という試みだけど、これは、いままでやった人がいない。

――具体的には、どうやって漁業にAIを取り入れるんですか?

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松原: たとえば、海に網を仕掛けて、そこに泳いできた魚を獲る「定置網漁」の例があります。漁師さんは1日2回くらい網を見に行くそうですが、そのとき、函館だと、時々、マグロがかかっていたりする。マグロは定置網にかかると、みるみる肉質が劣化して、商品価値が極端に下がる。だから、マグロがかかったらすぐにでも知りたいと漁師さんは思っているんです。

――高価なマグロがかかったら、そのためだけにでも定置網のところに行って回収する価値があるわけですね。

松原: それで、真っ暗な海のなかで、音や振動などのデータから、かかったのがマグロだってわかる技術があったら……。

中島: いわゆる「マグロセンサー」。

松原: 「『これはマグロだ!』ってわかるAIのシステムができたら、すごいことなんですよ」って、漁師さんたちに言われました。残念ながら、まだできていないけど、そういうAIの開発プロジェクトが進んでいる。