AIではできないこと、できそうにないこと
――欧州チャンピオンのプロ囲碁棋士が、GoogleのAI「アルファ碁」に打ち負かされた時点で、もう、人間が勝てる対戦ゲームはなくなったということでしょうか?
松原: 完全情報ゲームでは、そういうことになりますね。
――完全情報ゲーム?
松原: 完全情報ゲームというのは、オセロ、チェス、将棋、囲碁など、相手の情報が全部わかっているタイプのゲームです。
――では、いわゆる対戦型ゲームで人間がAIに勝つのは無理なんですね…。
松原: いいえ。まだ、不完全情報ゲームでは、人間の方が強いです。
――不完全情報ゲームとは、どんなゲームですか?
松原: 相手の手が伏せられて見えない『麻雀』や、黙って欺いている「狼」役の人間を探し出す『人狼』など、敵の情報が全部わかっていないゲームが不完全情報ゲームと呼ばれています。
中島: 一番典型的なのはポーカーです。自分の手は全部見えるけど、相手が何を持っているのかわからない。情報が一部欠落しているゲームでは、まだ人間の方がかなり強い。
――そのお話には、なんだか、すごく勇気づけられます。ほかにも、人間にはできるけど、AIには難しいものってありますか?
中島: AIの最大のハンディキャップは「人間と同じ体を持っていない」という点なので、そこが関わってくるようなことは、いまのAIには難しいですね。
1983年、東京大学大学院情報工学専門博士課程を修了後、同年、当時の人工知能研究で日本の最高峰だった電総研(通商産業省工業技術院電子技術総合研究所)に入所。協調アーキテクチャ計画室長、通信知能研究室長、情報科学部長、企画室長などを歴任。
2001年、産総研サイバーアシスト研究センター長。2004年、公立はこだて未来大学の学長となり、教育と後輩の育成、情報処理研究の方法論確立と社会応用に力を注ぐ。2016年3月、公立はこだて未来大学学長を退任後、同年6月、同大学の名誉学長に。