チルから生まれる次のヒットとは?

 最後に、こうしたチルの広まりから消費につながるアイデアを考えてみました。

 SNS上で“チル”と検索すると、まれに「チル旅」というものがヒットします。これはチルから派生した表現で、「自然にたくさん触れる旅」「ゆったりとした旅」といったことを意味して書かれているようです。

 この小さな兆しに注目すると、チル旅という旅行商品や“チル旅向け○○”という商品やサービスが考えられます。このチル旅は、アクティブな旅行にはない“癒やし”や、友達との穏やかな時間や会話そのものを目的とした旅行。観光地や旅行代理店は旅行先でユニークなアクティビティーの機会を提供する代わりに、ゆったりと過ごせる環境を用意しています。また、チル旅向けの移動手段を発明したり、旅行雑誌でチル旅スポット特集を作ったり、といったアイデアも考えられます。

電通若者研究部の小谷 和也氏
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 ほかにも、チルの広まった背景の1つである「“盛り”から“緩み”」というキーワードに注目してみると、先述した画像加工アプリブームから派生して、自然な状態を演出するカメラアプリも考えられます。

 例えば、表情認識アプリを応用した“自然体撮影アプリ”。カフェや公園などでスマートフォンを好きな位置に設置しておき、アプリを起動しておきます。すると、枠内の顔の表情を認識し、みんなが自然な表情になった瞬間にカメラのシャッターが切られます。写真自体も自然な仕上がりで、その場の空気感までそのまま切り取ったかのような画像が撮影されるのです。ここ数年ブームとなった画像加工アプリはその撮影過程も楽しまれていましたが、この自然体撮影アプリも意図しないタイミングでの撮影という「偶然性」を楽しめます。

 以上のように、チルという切り口で、“チル旅”や“自然体撮影アプリ”といったアイデアを考えてみました。これらはあくまでアイデア例なのですが、これからチルをテーマにした商品は一つのマーケットになる可能性もありそうです。先に考察したようなチルが広がった背景にあるものは今後の若者における潮流といえるのかもしれません。

(文/小谷 和也=電通若者研究部)

電通若者研究部(電通ワカモン)
若者のリアルな実態・マインドと向き合い、彼らの“今”から、半歩先の未来を明るく活性化するヒントを探るプランニング&クリエーティブユニット 。高校生・大学生を中心に、10~20代の若者の生活実態にとことん迫り、彼らのインサイトからこれからの未来を予見し、若者と社会がよりよい関係を築けるような新ビジネスを実現し、日本社会の活性化までも目指す。