若者は人間関係を「整理したい」?

 一方、チルが広がるもう一つの理由として、友だちとの付き合い方の変化も大きいでしょう。小さいころからSNSを駆使している若者たちの人間関係の特徴は、ライフステージが変わっても途切れないこと。増え続ける薄く広い人間関係の中で、若者たちは共感・肯定してくれる“真の親友”の存在を重要視するようになっています。

 15~29歳の男女を対象に若者の実態を尋ねた2015年の調査では、若者の「所属しているグループ数」が平均7.1個存在し、「整理したいと思っているグループ」が平均2.0個もあることが分かりました。このデータからも、若者たちが広がりすぎた「つながり」を整理したいと考えていることがうかがえます。

 こうした本当に親しい存在を重視する傾向の象徴がチルといえるのかもしれません。というのも、チルは、たいてい気心の知れた相手と行います。特に目的もなく長い時間をともに楽しむという、薄い関係性の中では難しい行為だからです。実際に若者から話を聞くと、チルする相手はよく一緒にいる友達や久しぶりに再会した幼なじみなどで、非常にウマの合う人じゃないとチルをしないと言います。イマドキの若者はチルを通して友達とのゆるぎない関係を紡いだり、関係性の再確認を行ったりしているのではないでしょうか。

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「電通若者実態調査2015」(15-29歳の男女3000人に実施)
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“盛り”から“緩み”へ

 チルがいま若者に受けている理由としてさらにもう一つ挙げるならば、画像加工アプリの爆発的ブームがあるでしょう。ここ数年、画像加工アプリがブームになり、若者を中心としながらも幅広い年代で“盛られた”自撮り画像がSNS上で共有されるようになりました。今でも盛り画像は、かわいく撮影できたり、撮影過程から楽しむことができたりとその人気は健在ですが、その爆発的なブームの揺り戻しとして、若者たちが自然な写真を好んで撮影、共有するようになったことがチルを後押ししていると考えられます。

 例えば、タグライン「#チル」でインスタグラムの写真を検索してみると、派手な加工を施している写真よりもナチュラルなものやカジュアルなものが多く散見されます。これは、個性の強い画像加工の揺り戻しで自然な写真を求めていた人たちにとって、チルの無理しない緩やかな雰囲気がちょうど彼らのニーズをとらえたと考えられます。また、この緩みの傾向は写真だけにとどまらず、音楽や空間にもおよび、“チルい○○”を好む若者が増加してきています。

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