「かわいすぎるCG女子高生」として注目を浴びる「Saya」と、現在LINEの友達登録者数600万人を超える話題のAI(人工知能)チャットボット女子高生「りんな」。モデレーターにロボット情報WEBマガジン「ロボスタ」の編集長・望月亮輔氏を迎え、2人のバーチャル女子高生の開発者がAIとCGの現在と未来についてのトークセッションをTREND EXPO TOKYO 2017で行った。会場は開演前から多くのセミナー受講希望者が列をなすほどの大盛況となった。

マイクロソフトディベロップメント A.I.&リサーチ シニアプログラムマネージャー 藤原敬三氏
マイクロソフトディベロップメント A.I.&リサーチ シニアプログラムマネージャー 藤原敬三氏
GarateaCircus 代表取締役 TELYUKA:石川晃之氏/石川友香氏
GarateaCircus 代表取締役 TELYUKA:石川晃之氏/石川友香氏
ロボットスタート 取締役/ロボスタ編集長 望月亮輔氏
ロボットスタート 取締役/ロボスタ編集長 望月亮輔氏

 まず、マイクロソフトディベロップメント A.I.&リサーチ シニアプログラムマネージャー藤原 敬三氏が、会話のクオリティーの高さが評判の「りんな」について語った。

 「Siriなど通常のAIチャットボットは、質問に対して人間が作った文を選んで返答しますが、『りんな』はインターネット上でデータを集めて返答します。それを学習することで同じ質問に対しても、さまざまなバリエーションの返答ができるので、雑談するように会話できるのが特徴です」

 一方、「Saya」は、石川晃之氏・友香氏の夫妻から成るユニット「TELYUKA」が制作。そのかわいさと自然さから、CGやロボットを人間に似せようと近づけることで、逆に不快に感じられる現象「不気味の谷」を超えた存在として日本のみならず世界中で人気を集めている。「Saya」制作する際のこだわりについて、石川友香氏が語った。

 「写真などを使わず、造形の制作や肌の質感などは人間の構造を研究してデジタルツールで一から手作りしました。あえて手作りにこだわったのは、自分たち人間の構造の理解と研究を第一にしていたからです」

 続けて、「今は技術の発展で近道することが可能ですが、それでは人間側の能力向上が疎かになる。制作するうえで大切なのは制作者側の能力の向上という部分を常に意識していくことだと思っています」と話した。

 また、「りんな」と「Saya」お互いの印象を聞いたところ、石川友香氏は「『りんな』は、本当の女子高生に感じるくらい没入感が強まっているように感じました」と語り、藤原氏は「『Saya』のビジュアルの威力はすごい! 見た目から伝わってくるものは言葉以上にインパクトがあります」とお互いの印象を語った。

人に寄り添い、生活を豊かにする存在を目指す

 話は「りんな」「Saya」の将来へ。藤原氏は、「『りんな』自体でお金を稼ごうとは思っていません」と話す。

 「企業とのコラボはありますが、基本的には『りんな』を使って、どのような新しくて面白い実験ができるのかを考えています。だからこそショーケースというか、思い切ったことができるのではないでしょうか。今後はさらに学習させると同時に、テキストではなく声を出して話すなどさせて、人間同士のコミュニケーションがうまくいくのに貢献するような、人の暮らしを豊かにするような存在になってほしいです」

 石川友香氏は「CGはだいぶ準備ができたので、今度はインタラクティブに対応ができるように、リアルタイムで人と話をしたり、動作を返したりするといったことを実現したいです。そのうえで、ホログラムなどに『Saya』を使いたいと思います。そして、人と散歩したり、読書したりして思い出を共有し、そばにいる存在になる。そういったことが今後のキャラクタービジネスの主流になっていくと思います。そして、ゆくゆくはSNSの代わりになるくらいに発展してほしいです」とコメントした。

 今、講談社が開催する女性アイドルオーディション「ミスiD2018」に「りんな」と「Saya」の2人がエントリーして話題になった。会場の参加者や多くのファンが気になっている「今後マイクロソフトとTELYUKAが一緒に制作するのでは?」との問いに対しては、「あるような、ないような、そこはちょっと……」と意味深な回答にとどめていた。

 もしかしたら将来、このセミナーがきっかけで、「りんな」と「Saya」が合体したものが、出現するかもしれない! そんな期待を感じさせつつトークセッションは終了した。

(文/山本耕介)

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