インターネットでの通販が一般的になりつつある中、リアル店舗の価値はどこにあるのか? 「東急ハンズ」で店頭イベントの企画を担当する泉徳之氏と、ネット販売からスタートし、その後、リアル店舗を開店した「藤巻百貨店」を運営する中村亮氏を迎え、カリスマバイヤー座談会として、TREND EXPO TOKYO 2017の会場で講演を行った。

東急ハンズ 新商品開発グループ バイヤー 泉徳之氏
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caramo(藤巻百貨店) 代表取締役 中村亮氏
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 講演は2部構成で、第1部ではまず、泉氏がリアル店舗とネット通販の違いを語りながら、リアル店舗の利点を浮き彫りにしていく。

 実際に見て触れて買い物ができるリアル店舗と、好きな時間に店員に話しかけられることもなく買い物ができるネット販売。一見、そこには大きな隔たりがあるように見えるが、泉氏は「購入者の求めるサービスはさほど変わりがない」と分析する。

 リアル店舗では店員が商品について説明し、思わぬ使用法などを提案。ネット通販でも写真や動画などを使い、商品の情報をさまざまな角度から伝えている。商品の魅力を知ってから購入するという意味ではどちらも同じだという。

 そのうえで泉氏は、リアル店舗について、商品の世界観に実際に触れられること、アロマグッズなどを例に五感を使い商品を直接試せること、イベントで思わぬ商品と出合える楽しみがあること、などを利点として説明した。

 2012年に事業を開始した藤巻百貨店は2016年に銀座、2017年に吉祥寺にそれぞれリアル店舗を開店。中村氏はネットとリアルの相乗効果について語った。

 藤巻百貨店では日本にこだわってつくられた逸品を、誕生までの物語を説明しながら価値に見合った価格で販売。そのこだわりがユーザーの支持を集め、多くのヒット商品が誕生している。FacebookなどのSNSやメールマガジンも駆使し、ユーザーとの結びつきを実現し、業績も好調に推移する中、なぜリアル店舗をオープンさせたのか。

 中村氏は「実際に商品を見て購入したいというユーザーの方が多くいたこと。さらにメディアに向けた対応でもあります」とその理由を説明する。

 ネット販売のみでの展開当時から、メディアでの商品紹介を依頼されることが多かったものの、「メディアの皆さんに対応する場所の用意がなく、断る場合もありました」と中村氏。リアル店舗ができたことで、メディアを迎えるスペースができたうえに、協業、出店提案などの問い合わせも増加したという、うれしい展開もあったそうだ。

 続いて、第2部では日経BP総研の渡辺和博を進行役に、パネルディスカッションを開催した。

 テーマは「2017年に生まれたヒット商品」「ネット販売とリアル店舗の役割や関係について」「インバウンド需要の今後」「2018年以降のトレンドと注目商品は?」という4つだ。

 東急ハンズでの2017年のヒット商品はアニメ関連グッズ。人気フィギュアスケートアニメ『ユーリ!!! on ICE』の関連グッズが店頭でのイベント開催時、飛ぶように売れたという。「フィギュアスケートという題材のためか、通常のアニメファンに加え、実際のフィギュアスケートファンと思われるような人々もイベント目的で多く来店しました」と泉氏。

 一方、藤巻百貨店では今夏、問題解決型の商品が大ヒットした。それが「とことん脱げない浅履き靴下です」と中村氏は明かす。はき口のふちに輪っか状のシリコンコーティングを施したもので、奈良県にある老舗靴下加工メーカーが2年半以上をかけて開発したという。

 ネット販売とリアル店舗の役割や関係、さらにインバウンド需要については、泉氏、中村氏が現状の課題や今後の展望など語ると、両者で多くの点が共通していることが明らかになった。

 ネットとリアルのバランスをどう図るか、ネット販売の過剰な商品説明が、ユーザーの購入意欲低下につながる可能性、異国ECの難しさ、増え続ける外国人観光客への対応……。どの問題もスピードを持って解決すべきとの認識で一致した。

 2018年以降、どんな商品、グッズが人気を獲得するかは誰もが気になるところだ。

 泉氏は「日本の高い技術力を結集した木工商品がイベントで人気になっている。さらに、アジア各国、その国ならではのデザイン商品が動き始めている」と東急ハンズの動向を説明した。

 中村氏は日本人クリエイターが生み出す、感性を刺激する商品に期待する一方、藤巻百貨店が今後打ち出していきたい商品を挙げた。それが「世の中に大量に出回っているものの、ピンと来るものがなかなか見つけられない」と中村氏が語る日本酒だ。老舗蔵元と手を組み、満足のいく商品の販売準備を進めていることを明かした。

 泉氏、中村氏の語る言葉の端々に感じられたのは、商品を購入した人々に満足感を届けたいという思い。販売チャネルが多様化する中、どんな商品を開発し、どう提案していくのか。両社の取り組みに今後とも期待したいところだ。

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(文/田中あおい)