2017年11月2日と3日に東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された「TRENDY EXPO TOKYO 2017」(主催:日経BP社)で、日経デザインは創刊30周年記念企画として「ロングセラーブランド、デザイン開発の裏側」と題するセミナーを行った。

 ロッテのマーケティング統括部パッケージ・デザイン企画部の森信一郎・デザイン企画室長と、サッポロビールの新価値開発部 第1新価値開発グループの田中章生・チーフアートディレクターの2人が講師となり、ロングセラーとして知られるチューインガムの「XYLITOL(キシリトールガム)」や「ヱビスビール」のパッケージデザインの流れを解説した。

 セミナーの会場には100人以上が参加し、ロングセラーとなった商品のデザイン開発のポイントなどに耳を傾けていた。

ロッテのマーケティング統括部パッケージ・デザイン企画部の森信一郎・デザイン企画室長
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サッポロビールの新価値開発部 第1新価値開発グループの田中章生・チーフアートディレクター
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テレビCMを一切、打たない

 ロッテの森氏は、いかに若者に浸透を図るかを重視。その例として、2017年5月にキシリトールガム発売20周年を記念して発売した「キシリトールガム<Xミント>」の販売促進について語った。同商品を宣伝するに当たり、従来のようなテレビコマーシャルは使わず、ネットや新聞媒体などを活用し、話題づくりを狙ったという。

 例えば20代の若者たちと新しい未来をつくるイベント「COME ON! ENERGY!――噛もう! 未来に向かって!――」を始動。タレントや俳優、スポーツ選手など、最も影響力のある20組の20代の若者が、それぞれに思い描く“未来”をグラフィックに起こし、それを基にしたパッケージデザインを開発した。

 「世界にひとつだけのパッケージデザイン」と銘打ち、1枚の絵柄から異なる複数のデザインを自動的に生成する「HP Mosaicソリューション」を採用。文字通り、世界に1つだけのパッケージデザインを実現したのだ。これにより、キシリトールガム<Xミント>のパッケージデザインのバリエーションは200万種以上になるなど、大きな話題を集めた。

 さらに、「COME ON! ENERGY!――噛もう! 未来に向かって!――」で協力したスポーツ選手や俳優の姿を印刷した巨大な折込チラシを新聞に挟み込むという販促も採用。ロッテはキシリトールガムで「むし歯のない社会」をつくってきたという強い自負があり、今までにない新しい市場を切り開いてきた。こうした話題性のある新たな宣伝手法が奏功し、発売後は20代~30代の顧客層が増えたという。

落ち込む前に手を打つ

 サッポロビールの田中氏は、ヱビスビールにおけるパッケージデザインの変遷について講演した。同商品は安定したブランドのため、社内外からパッケージデザインの大幅な見直しを要求されることもなく、小規模な改善にとどまってきたという。以前からのファン層の声を聞くと「何もしないでほしい」という意見さえあった。

 しかし、マーケティング調査の結果を分析すると、ファン層の高齢化がじわじわと進んでいることが分かった。「ヱビスビールは自宅ではなく、お店で飲むもの」「何かイベントなどがあるときに飲むビール」などメーカーが思い描いている愛飲シーンとは、かけ離れそうな懸念があった。しかし、まだリスクが顕在化していないため、2013年になると「パッケージデザインをリニューアルするとしたら」という前提でアイデアを温めておき、2014年になって刷新したという。

 調査によって、ヱビスビールの非購入者は商品ロゴよりも「えびす様」のイラストでブランドを認知していることが分かった。そこで、えびす様のイラストをやや大きくした。ビールを収める箱も、今まではえんじ色だったが、商品と同じ金色にして統一感を持たせた。広告も金色にするなど、イメージのブレをなくすようにした。

 2016年のリニューアルでは、えびす様のイラストをさらに大きくしたほか、ロゴはやや小さくして書体や色も見直した。また、「琥珀ヱビス」や「YEBISU PREMIUM BLACK」などともパッケージデザインを統一。ヱビスブランド全体としての存在感を強めた。

 売れ行きが落ちてからパッケージデザインを考えるのではなく、落ちる前から着手しておくことで、判断するための時間的な余裕が生まれ、結果的に良いものができるようだ。

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(文/大山繁樹)