AI(人工知能)を基盤とする音声アシスタントは、Amazon、Apple、Googleといった米国の有力IT企業が激しく覇を争う市場だ。LINEはこの市場に、「Cloud AIプラットフォームClova」を搭載したスマートスピーカー「WAVE」を国内でいち早く投入した。

 コミュニケーションで圧倒的なシェアを誇る同社が、ClovaとWAVEによって描くビジョンとは何か? LINEでClova事業を統括する舛田淳氏がTREND EXPO TOKYO 2017に登壇。Waveへの取り組みや今後の展開について語った。

LINE 取締役 CSMO(Chief Strategy and Marketing Officer) 舛田淳氏
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 1990年頃から普及し始めたインターネットにより、人々は情報をグーグルなどの検索エンジンを使って調べるようになった。そこで得られる情報量は膨大で、私たちの生活は画期的な変化を遂げた。しかし、それにはキーボードによる文字入力が不可欠で、検索にはある一定のトレーニングが必要だった。

 「2000年代に入るとモバイルが登場し、それがスマートフォンとなり、タイピングせずともタッチするだけで情報に触れられるようになりました。ここまで進化した情報とインターフェースの関係が、まさに今、もう一歩踏み出そうとしています」と、舛田氏は講演を始めた。

 続けて舛田氏は、「ポストスマートフォンの時代はAIとIoT(モノのインターネット化)の2つがキーワード。さまざまな物にインターネットがつながる時代が訪れました。LINEはコミュニケーションから始まった会社です。人と人とのコミュニケーションだけでなく、人と物、人と企業など、さまざまな物を結び付け、最適な距離にしていくのが我々のミッションです」と話した。

 AIやIoTへシフトすることによって、今起こりつつある変化が「VUI(Voice User Interface)」だと言われている。VUIとは声でさまざまな機器を操るインターフェースである。

 「世界に目を向けるとVUIを使ったサービスは既に普及していますが、日本はこれからです。そこでLINEがAIにフォーカスして作ったのがClovaです。Clovaはクラウドベースのヴァーチャルアシスタントで、人々の生活をサポートしたり、豊かにしたりするAIを目指しているのです」と舛田氏。

 数年前からあるAI家電と、Clovaのようなクラウド型のAIを搭載する家電の違いは何であろうか? 一見、同じAI家電のように見えるが、実は明確な違いがあるという。

 その違いを舛田氏は「AI家電は基本的にスタンドアローンでできており、データを習得して学習しますが、その家電内で完結します。つまり成長性はなく、機能が増えることはありません。それに対してクラウド型のAIを持つスマートスピーカーは、購入してから1カ月後、また1年後には違うものにどんどん成長していきます」と話す。

 そしてClovaが初めて搭載されたプロダクトが「WAVE」スピーカーである。

 「Clovaが目指しているのは単にリモコンになるのではなく、どのような形で家族になっていくか。どのようにコミュニケーションをサポートしていくかということです。人が普段使っているものを、より便利に置き換えること。それがLINEやClovaが考えるイノベーションです」と舛田氏。

 どうやらClovaを家族のような、いわばペットに近い存在にしたいと考えているのだ。そこで次に開発準備しているのが、LINEのキャラクターの形をしたWAVEである。愛情や愛着を生んでもらえるようにクールで無機質なデザインから変更した。今年の冬にお目見えする予定だ。

 大切なのは「音声アシスタントとユーザーの距離を近づけていくこと」(舛田氏)。この距離が近づいていないと継続的に使われることはない。その試みがキャラクターの形をしたWAVEなのだ。

 今後AIがどのような表現力を備えるのか、この点が最も重要になる。「『AIと表現力』こそが、日本の企業が世界にチャレンジするためのカギになるのではないか」とも提言。最後に「コミュニケーションに新たな未来を」の言葉を掲げ、LINEとClovaのさらなる成長を宣言し、講演は終了した。

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(文/高橋慎哉)