近年、全国各地からさまざまなブランド米が誕生している。人気ブランド米として定着する米がある一方、高い評価を得られずに生産量や価格を落としている米も見られる。 “ブランド米戦争”の時代は、勝者と敗者の明暗がくっきりと分かれる時代でもある。

 ここ10年間で、最も成功を収めたブランド米のひとつといえるのが「つや姫」だ。山形県立農業試験場で開発され、2010年に正式デビューした新品種。艶やかな見た目と豊かな味わいが評判を呼び、あっという間に人気ブランド米の仲間入りを果たした。他県からも「つや姫を作りたい」とのオファーが相次ぎ、現在では8県で「つや姫」が生産されている。首都圏のスーパーや米殻店でも、ほとんどの店が「つや姫」を扱っている。

2010年にデビューした「つや姫」。ここ10年で最も成功した人気ブランド米のひとつといえる
[画像のクリックで拡大表示]

 だが、山形県農林水産部県産米ブランド推進課(取材対象者:桃井亮一氏、中野憲司氏、神尾和宏氏)は、一概に「成功」とだけ捉えているわけではない。「つや姫の評価は高く、価格も落ちていません。そうした意味では、成功を収めたといえます。しかし、農家の立場から見ると、どうでしょうか。高い品質を保つために、生産に関する厳しいガイドラインを設けているため、つや姫作りはたいへんな仕事です。実際、農家の収入も増えてはいません」。

農家の収入を増やすために生まれた「雪若丸」

 そこで、山形県は新品種のブランド化に乗り出した。県および関係機関が15年をかけて育成し、2017年にプレデビュー、2018年に正式デビューを果たす新品種「雪若丸」だ。

 「米の消費が全国的に減退し、販売環境も年々厳しさを増しています。そんな厳しい状況だからこそ、農家の収入を増やしていくことを考えなければなりません。雪若丸は、農家のことを第一に考えた米です。高温への耐性をもち、冷害にも強い。稲が倒れにくく、収量も見込める。育てにくかったつや姫を頑張って作ってきた農家への恩返しの気持ちで開発しました」

「つや姫」の弟分として誕生した「雪若丸」。「つや姫」と同様に、輝くような白さが特徴だ
[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
[画像のクリックで拡大表示]
「雪若丸」の圃場風景。「雪若丸」は寒さ、暑さの両方に耐性をもち、稲も丈夫で育てやすい。農家の収益の向上が期待されている