プロモーション用アニメという新境地も開拓

 1話3分程度の縦型アニメはユーザーにとって手軽な一方で、制作側から見るとテレビシリーズや劇場作品には合わないタイプの作品を拾い上げられるという可能性を秘めている。キャラクターものや4コマ漫画の作品には、たとえ人気があっても、1話30分程度あるアニメシリーズや1時間を超える劇場作品にはなりにくいものも多い。そうした作品がコンパクトなタテアニメにはまりやすいのだ。「ギャグ漫画などはとても作りやすい」と企画室プロジェクト企画グループの大久保圭氏は言う。

 工期や制作費が抑えられるのもメリット。尺が短いのに加え、背景などの作り込みが少なくて済むからだ。「タテアニメは全てデジタル制作。通常のアニメなら企画から完成まで1、2年、長ければ3年かかるところ、早ければ4カ月でできる。コストも1/3~1/2程度だ」(企画室プロジェクト企画グループの大塚裕司氏)。

 従来のアニメとは、ユーザーの見方も制作手法もコストも異なる縦型アニメの世界に乗り出したプロダクション・アイジーが狙うのは、縦型動画のプラットフォームという立ち位置だ。中塚氏は「今後は、アイジーが制作したアニメに限らず、他社にも活用される場になればいい」と展望を語る。

 実際、タテアニメには人気漫画をアニメ化した作品以外に、ゲームや施設のオフィシャルキャラクターなどを使ったアニメ作品も並んでいる。これらは企業が自社の持つコンテンツのテコ入れや、アニメ化との相乗効果を狙ったものだ。

 例えば、タテアニメで配信中の『ルナたん~1万年のひみつ~』は、NTTぷららのスマホ向け/テレビ向けゲーム『ルナたん~巨人ルナと地底探検~』が題材。ゲームの認知向上や、ゲームから足が遠のいた“休眠ユーザー”に働きかける狙いがある。

 『えのしまんず』は新江ノ島水族館館内のデジタルサイネージと連携したコンテンツだ。同水族館のデジタルサイネージに登場する3匹のクラゲキャラをアニメにした。水族館でキャラクターを知った人に帰宅後もタテアニメで見てもらうことで、愛着を持ってもらうのが狙いだ。大塚氏は、「ゆるキャラを持っている地方自治体なども応用できる例」と説明する。

『ルナたん~1万年のひみつ~』はゲームから派生したアニメ。主人公のキャラクター「モクギョ」と「トリイルカ」の声は、小西克幸さん、金田朋子さんが務める
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『えのしまんず』は新江ノ島水族館のキャラクターを使ったアニメ。スチャダラパーのBoseさんらが声を務める (C)EMC・ODDJOB
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 前述の『カラダ探し』は、アニメ化までのスピードを重視したケースだ。アニメ化で人気を加速するのは漫画界の常套手段だが、ウェブで配信される漫画は雑誌などに連載される漫画より火が付くのが早いため、企画から数年単位の時間が掛かるテレビアニメでは旬を逃す可能性がある。「出版社が作品を推したいと思ったときに、即対応できるのがタテアニメの強み。本格的なアニメ化に向けたテストマーケティングに使う例も増えるのでは」と大塚氏は見る。

 これまでアニメというと、人気作品のアニメ化やオリジナル作品の制作が中心だった。近年はゲームのアニメ化なども進んでいるが、制作期間も制作費もかかるため、一般の企業がおいそれと手を出しにくいビジネスでもある。だが、従来のアニメよりも大幅に工期やコストを抑えられる縦型アニメならば、プロモーションを目的にしたコンテンツの制作も可能。一方のユーザー側には、内容が充実しているアニメを無料、もしくは低価格で見られるならば、オリジナル、プロモーションの区別なく見たいと思う人はいるだろう。縦型アニメの登場は、日本の有力コンテンツの1つであるアニメに、新たな用途を開くかもしれない。

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(文/平野亜矢=日経トレンディネット)