スマホに合わせて動画の作り方が変わる

 そもそも、ウェブサイトを見るにしろアプリを使うにしろ、スマホは縦に持って操作することが多い。画面は縦方向にスクロールする。その操作の合間に挟まってくる動画広告を見るために、わざわざスマホを横向きに持ち替える人はほとんどいない。スマホの縦長の画面には、縦型動画のほうが適しているのだ。

 スマホの使用時間がどんどん長くなっていく中、「スマホでの視聴を前提にするなら、動画の作り方自体を変える必要がある」というのは、ネット動画に関連する業界関係者の多くが指摘することだ。ネット上の動画広告に関していえば、これまではテレビCMなどをそのまま使用しているケースがほとんどだった。広告の長さもテレビCM同様、15~30秒程度。だが、これはスマホで見るには長すぎる。スマホでの視聴環境に合わせて、動画を縦型にするのはもちろん、「長さを数秒程度に短くしたり、カット割りを変えたり、インパクトの強いメッセージから表示したりといった工夫もできる」と加藤氏は話す。

アドテクスタジオでは縦型動画を表示するときも、画面の上または下に必ず元のウェブページが見えるようにするなどの工夫をしている。画面を縦にスクロールする“動線”上で見て、邪魔に感じたらすぐに元のページに戻れるようにするためだ(素材提供/サイバーエージェント)
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 既にある動画を再編集するためのコストや手間はさほどかからないが、問題はこれまでの慣習だ。「日本の広告業界では、クリエーティブ(制作物)に手を加えることへの抵抗感はまだ強い」と加藤氏。だが、前述のようにFacebookやインスタグラムなどの強いプラットフォームが縦型動画にシフトしてきたことで、業界全体の意識が変わってくるだろう。「今年後半にかけて、動画広告だけでなく、個別企業のサイトに組み込まれるマーケティングツールとしても縦型動画の採用が加速するのでは」(加藤氏)。縦型化の波は、動画広告自体に変化を及ぼしそうだ。

(文/平野亜矢=日経トレンディネット)