“友だち感”や“味方感”を努力して捨てる

川島: 「勘」を働かせ、自分で自分を疑うんですね。

寺尾:  そうです。まずはアイデアの段階で徹底して疑っておく。自分のアイデアって、発案者として「いい!」と思っているじゃないですか。アイデアが出てきた段階で、自分の中で愛してしまっている。でも「いい!」と思っている“友だち感”とか“味方感”は、努力してでも捨てなくてはならないのです。

川島: そうやって自分のアイデアを疑う努力、寺尾さんはどうやっているんですか?

寺尾:  「私はこう思うけど本当かな」「あの人ならどう思うかな」とか、たくさんの“逆方向”を想像してみるのです。そうすると、「ここがちょっと弱いな」「何か要素があとひとつないと売れないかも」ということが、おのずと見えてくるのです。

川島: そういう発想や決断のすべてについて、寺尾さんは独りがいいと言っていましたが、途上で誰かに相談することはないんですか?

寺尾:  答えをひとつに決めるまでは、必ず独りでやることにしています。だから、2つか3つのアイデアについて「どっちがいい?」という聞き方は絶対にしません。あくまで自分の中で結論を出してから、社員に聞くことはありますが。

川島: で、相手が何か否定的なことを言ったら、それを受け入れるんですか?

寺尾:  言われたら、まずはムカッときますね(笑)。 でも、感性的なことならあの社員、財務的なことならあの社員と物差しになる社員がいて、決め打ちでその人に相談することにしているので、否定的なことを言われたときはなぜそう言ったのかを考えることにしています。

川島: 自分の「勘」や「感」について鍛えながら、一方で疑ってみること、言い換えれば、多面的に検証しておくことって大事なんですね。

次回は、どうやってヒット商品を生み出しているのか、突っ込んで聞いてみたいと思います。

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(写真/稲垣純也)

川島 蓉子(かわしま・ようこ)
川島蓉子(かわしま・ようこ) 1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。伊藤忠ファッションシステム株式会社取締役。ifs未来研究所所長。ジャーナリスト。
日経ビジネスオンラインや読売新聞で連載を持つ。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、などがある。1年365日、毎朝午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。