この連載は、「この人の『勘』や『感』の見方を知りたい!」と思った方にお会いし、仕事に「勘」や「感」は必要なのか。そして、どのように磨けばいいのかについて、成功談も失敗談も含めて聞いていくものです。それも、難しい書き言葉ではなく、分かりやすい話し言葉で。読者の皆さんにとって、未来に向けたヒントになれば幸いです。
2人目として登場いただいたのは、CCCの社長を務める増田宗昭さん。代官山 蔦屋書店、湘南T−SITE、二子玉川 蔦屋家電、銀座 蔦屋書店など、話題の新業態を世に送り出してきた立役者です。「これはイケる!」という発想の原点の在り処や、かたちにしてしまう秘訣など、あれこれ聞いてみました。
お客さんの“気分”は「感じ」
川島: 増田さんは、直感の塊みたいな方と、勝手に思ってきました。
増田: その通り。僕にはそれしかないから!(笑) 上場していたとき、「直感でひらめいた」とか「直感でこうしようと思った」ということを言わないようにしてくださいって、関係者の人たちから止められてばっかりで、えらく困った記憶があります。でもCCCは、僕だけじゃなく社員も含め、直感をベースにやってきた会社です。
川島: 増田さんは、うんと若いときからそうだったんですか?
増田: うーん、たとえば学生時代にバンドをやっていたときから、曲がいいとか悪いって、理論じゃないとは感じていたな。「この曲って泣かせる」とか「この余韻が何とも言えない」とかって感じるのは、感性以外の何ものでもない。それは社会人になっても一緒で、僕は鈴屋というファッション専門店を全国展開している企業に就職したのです。
川島: 軽井沢に「ベルコモンズ」という複合商業施設を作った経緯をうかがったことがありますが、あれも感性で作ったんですか?
増田: そう。あのときの感性は、言い換えれば「お客さんの気分」ということ。気分を理解するというのは「感じ」なのです。お客さんの気分になって、それにぴったり合う感じを作れば、お客さんも会社も僕も、ハッピーになると思っていたし、今もそう思っています。
川島: でも大半の企業って、一個人が考える「お客さんの気分」を提案すると、「所詮、一人が考えたことであって何の裏づけもない。説得性のある理論になっていない」って、企画自体がつぶされちゃうんです。
増田: それは通し方も違っているんじゃないかな。そういうときはまず、その「感じ」が分かりそうな人に「これ、いいだろう?」って聞いてみる。それに共感してくれたら、他の人にも聞いていく。そうやってチームや関係者に広げていく。
逆に「これ、まずいんちゃう?」というネガティブな意見が多かったら、もう少し感性を磨いて、企画を練り直さなきゃいけないのかもしれない。それをずっと続けてきたのが、僕の仕事のやり方だし、CCCという会社の流儀。