本連載は、「この人の『勘』や『感』に対する見方を知りたい」と私が感じた方にお会いして、ビジネスにつながる「勘」や「感」の大切さについて、根掘り葉掘り聞いてみるものです。それも、難しい書き言葉ではなく、ざっくばらんな話し言葉で。

 前回(『ビジネスパーソンに必要なのはMBAより「人間力」』)に続き、ポーラ・オルビスホールディングス社長の鈴木郷史さんの話をお届けします。

ポーラ・オルビスホールディングスの鈴木郷史社長
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人は違和感があったほうが関心を持つ

川島: 今年、ポーラ・オルビスホールディングス(以下、ポーラ)は、理念を全面的に見直しました。新たなミッションとして掲げたのは、

「感受性のスイッチを全開にする」

湧きあがる好奇心。
心に響く新たな出会いや発見。
昨日とは違う世界の広がり。
冴えわたる感受性は、人生を変える。
もっと楽しく、もっと心豊かに。

 会社の理念やミッションというと、とかく無難な言葉が並びがちなところ、これは「感受性」という言葉が前面に出てきているのが新鮮でした。理念を伝える動画がウェブサイトにのっていますが、あれもユニークで面白い。ある女性の1日が、行動とともに心情も含め、イラストレーションで描かれているのですが、おおげさ過ぎずにリアルなんです。そして音楽にのせられ、テンポよく見てしまう(詳しくはこちら)。

鈴木: 動画で表現しようとなったときに女優さんを使ってドラマ仕立てにする案があったのですが、「そういうのはもうやめよう」と言ったんです。ドラマにしてしまったら、どこか嘘っぽくなると思ったので。イラストの絵コンテを見た段階で「これ、いいじゃないの。これで行こう」と判断したのです。一方、音楽にはこだわって、クラッピング(手拍子)音源をオリジナルで作ってもらいました。

川島: あの音楽、メロディアスというより、緩急のあるリズムがずんずん身体に入ってくる感じがあって、映像自体は柔らかいのですが、硬質な音が心に残ります。

鈴木: 短い旋律やリズムパターンを繰り返す音楽は盛り上がらないとか、メッセージが伝わらないのではと懸念する人もいるかもしれませんが、聴く側にとっては、単調なリズムのほうがオープンマインドになってスッと身体に入ってくるのです。人間って本来、ある種の違和感があったほうが関心を持つ動物。だから、ちょっとした違和感を提供することも、アイデアであり創造だと思っています。

「競合他社がやらないこと」が評価軸の一つ

川島: 先ほど女優さんを使った映像についてのお話がありましたが、昔の化粧品の広告って“感受性のスイッチ”が全開だったのではと、ふと思いました。だからでしょうか、記憶に残っているものがたくさんあります。でも最近、そういう影響力を持った広告が少なくなったのでは?

鈴木: 皆が同じことをやっている無意味さを感じますね。どうせやるなら、同じトラックで競走するのではなく、別のトラックを走ったほうがいい。うちでは、「競合他社がやらないこと」という視点を評価軸の一つにしています。他社がやって成功しているのなら、それを模倣してそこで競争するのでなく、自分なりに解釈したうえで、独自性のある仕事を作ってほしいということです。

川島: うーん、それってかなりクリエーティブな思考がないとできないかも。

鈴木: でも、ちょっと考えてみてください。子どもがゲームをやっているときって、夢中になって楽しそうにしているじゃないですか。あれはなぜだと思います? それは自分たちで作ったルールでアレンジして遊んでいるからです。だから、独自のクリエーティビティーを表現することって大事なんです。

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