藤巻百貨店といえば、鞄などのビジネスギアから日用品や雑貨までを取り扱うネット通販サイト。他社にはない上質なデザインなど、その品ぞろえは多くの顧客を魅了してきた。その藤巻百貨店が2016年3月に「東急プラザ銀座」に初のリアル店舗をオープン――。開店から1年、リアル店舗の事業も軌道に乗りつつあるという。「TREND EXPO 2017」に登壇する同社の中村亮社長に、店舗とネットの相乗効果などについて聞いた。

中村 亮氏 caramo 代表取締役。2011年ザッパラス(東証1部)コマース事業担当取締役に就任、2012年5月日本の逸品のみを取り扱う、こだわりのECサイト「藤巻百貨店」を故藤巻幸大氏と共に立上げる。2015年8月に藤巻百貨店事業を主力としたcaramoを設立し独立。代表取締役に就任。日本の逸品を目利きする商品開発、24万を超えるFacebookファンを魅了し続けるコンテンツ制作も手掛ける
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――東急プラザ銀座に開店した初のリアル店舗の状況はどうでしょうか?

中村 亮氏(以下、中村): 銀座店は2016年3月にオープンし、150品目近いアイテムを扱っています。半年ぐらいは試行錯誤の連続でしたが、1年が経過してやっと軌道に乗ってきました。

 銀座店の開店は、もともと通販とリアル販売を融合させる「オムニチャネル」の思想に基づいたもので、顧客の活性化とインバウンド需要を狙ったものでした。今までは実際に商品をお見せできる場がなかったのですが、銀座店のおかげで「実際に商品を見てみたい」という顧客の声にも応えられています。またテレビやラジオなどさまざまなメディアで商品をご紹介頂く際の取材場所としても活用していますので、PR拠点という役割もありますね。

2016年3月にオープンした初のリアル店舗・銀座店
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――顧客の属性は予想通りですか?

中村: 当初は購入歴のあるファンの方がいらっしゃるかと思っていましたが、実際には藤巻百貨店での購入が初めての方が約8割程度でした。とはいえ、そのうちの6割がFacebookやメールマガジンには登録していただいているようですので、ネットだけでは購入に至らなかった方が、実際に商品を見ていただくことで購入につながったのではないかと考えています。

 しかも顧客の6割は男性です。東急プラザ銀座は女性をターゲットにした商業施設なので少し驚きました。ですが、これは藤巻百貨店のFacebookページの「いいね!」の数の比率とほぼ同じです。さらに、(銀座店の)購入者の約3分の1はネット通販とポイントが連動するアプリを登録しています。ネットで見て店舗で買ったり、店舗で見てネットで買うといった「いつでも・どこでも・どんなときでも」という新しい買い物提案、オムニチャネル展開はうまくいっていると思います。

藤巻百貨店公式アプリ
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 ちなみに、銀座店でしか扱っていないアイテムもあります。職人が数点しか作らない希少性のある一品モノの江戸切子などは店頭での販売のみです。こういった珍しいものもあるので、お客様が店舗に滞在される時間は平均でも10分前後、長い人だと1時間ぐらいいる方もいます。

――客単価などの違いはありますか?

中村: ネットのほうが客単価が高いですね。リアル店舗だと、高い商品も売れますが、訪日観光客のお土産用に1000円前後で買える商品もあるため、平均すると客単価が下がってしまうんですね。

――Webサイトの売り上げに影響はありましたか?

中村: 顧客の活性化という意味でプラスの影響があったと思います。(銀座店を開店することで)私たちの商品に対する興味関心が増えてくれればと思っていたので、おかげさまで予想どおりの展開でほっとしております。逆に、銀座店の売り上げが低かったらどうしよう……という怖さはありました(笑)。

――9月にオープンする吉祥寺店は、銀座店とコンセプトを変えるのでしょうか?

中村: 銀座店とは大きくコンセプトを変える予定です。銀座は40代以降の可処分所得の高い人が多いですが、吉祥寺は、所得はある程度高いけれど、ベビーブーム以降に生まれたニューファミリー層が多い街です。いつも住みたい街のランキングの上位に入りますし、ライフスタイルそのものを楽しむ方が多いですね。駅に直結しているので仕事帰りの方にも寄ってもらえるだろうと期待しています。

9月1日にオープンしたリアル店舗・2号店となる吉祥寺店
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――ほかの地域への店舗展開はどうでしょうか?

中村: タイミングが合えば出店を検討しますが、具体的な計画はないですね。どこに出店するにしても、百貨店、SCなど、そのショッピングゾーンを運営する企業とのパートナーシップが大切です。ただ、出店するだけではなく、相互にブランド価値を高められるような関係が重要ですね。その点、吉祥寺店が入る京王様とはとても相性が良いと感じています。

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――最近では、商品ではなくライフスタイルを提案する店舗が増えていますが、この点、藤巻百貨店はいかがでしょうか?

中村: 藤巻百貨店のテーマとして、顧客に「日々の暮らしのちょっとした豊かさを提案したい」という考えがあります。例えば、職人が作る一品モノの江戸切子は、うまい日本酒と併せて勧めることで、家呑みでもいい意味で緊張感を持った上質な時間を提案できます。

 モノをコレクションするだけではなく、そのモノを使っていかに上質な時間にできるか、もしくは普段顧客が抱えている問題を解決できるかという点を念頭に置いて仕入れをしています。問題解決型の商品だと、めくれない浅履きの靴下というのがあります。ファッションを楽しむ方のなかには、あえて靴下を見えないように浅履きの靴下を愛用している人がいるのですが、浅履きの靴下はめくれてしまうことが難点でした。これを解決した商品で、なかなか売れています。私たちが取り扱うものですから、もちろん、日本の職人技が光る逸品です。

――今後の計画を教えてください。

中村: やはり商品の品ぞろえの強化が課題です。ほかの商品との差別化だけでなく、持っている人同士がお互いに認め合って仲間意識ができるようなモノをどうやって提案していくか日々検討しています。

 具体的には日本酒のコラボ商品などを予定しています。高知県の酔鯨酒造様にお願いしてオリジナルのお酒を造っていただく予定です。祝い事などハレの日に飲んでもらえるような特別なお酒になりそうです。

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(文・写真/シバタススム)

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