プロジェクトに共感する人々から資金を募る「クラウドファンディング」からヒット商品が次々と生まれ、大手企業が活用する例も増えている。この連載ではクラウドファンディング型EC事業を運営する「Kibidango(きびだんご)」の松崎良太代表が、クラウドファンディングやSNSから生まれた企業と消費者との新しい関係に基づく注目のヒットをピックアップする。

 idontknow.tokyo(アイドントノウ トーキョー)は、遊び心満載のペーパークラフト「PLAY-DECO」やアウトドアアイテム「YOKA」を手がけるtwelvetoneの角田崇氏、「DRAW A LINE」「NuAns」などのプロダクトデザインを手がける2人組デザインユニット「TENT」の治田将之氏と青木亮作氏、グラフィックデザイナーの田久保彬氏の4人が新たに立ち上げたブランドだ。

idontknow.tokyoの4人(左から、治田将之氏、青木亮作氏、角田崇氏、田久保彬氏)
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 そのidontknow.tokyoの第1弾として開発されたのが、「HINGE(ヒンジ)」という「ひらめいた瞬間を逃さず書きとめられる」クリップボード。A4コピー用紙を数枚挟んでおき、何か思いついたときにパッと中に挿しておいたペンを使ってメモやスケッチを描ける便利なツールである。

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 ところがいざ発表したものの、メディアでは期待していたほどの取り上げ方は全くされずに拍子抜けしたという。一方で、自分たちの周りにいる感度の高いデザイナーやデザイン好きのコミュニティーには強く刺さり、発売前から予約が殺到した。

 そんななか、この商品だけでなく、idontknow.tokyoの将来を示唆する事件が起こる。 デザイン事務所に勤務しながら趣味で自分の生活を漫画に描き、主にツイッターで情報発信をされているデザイナーの「片耳社会人 キクチ」さんがHINGEを紹介。この時点ではキクチさんのフォロワー数は1800程度だったものの、このツイートが瞬く間に2万8000いいね!1万6000RTされたのである。

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 最初はこのツイートに気づかなかったidontknow.tokyoのメンバー。朝起きたら20個売れている。「やった、20個も売れた!」と喜ぶのもつかの間、次第に売り上げメールが届く間隔が短くなり、しまいには数秒おきに。当時持っていた在庫はあっという間になくなり、事態の大きさに気づいたそうだ。

 そして、売り切れ状態になるやいなや、すぐに今度は再販問い合わせメールが殺到することに。それを受けて、苦肉の策で売り切れ状態になっていたページを予約販売に切り替えたところ、また受注メールの波が復活する。最終的に、初期ロットの10倍もの2次ロットを発注することになったという。

 テレビで自分たちの商品が取り上げられることもあったが、そうしたときには放映後数日たつと平常のトラフィックに戻るというのがこれまでの経験。しかし、Twitterでの大規模拡散は彼らにとって初めてであったこともあり、2次ロットの発注をかけたものの「正しい量を発注できたのかいまだに不安が残る」とのこと。