旅行会社、重要なのは密なコミュニケーション

 そしてもう1箇所、スダン君が利用しているというCity Travel&Tour(シティートラベル&ツアー)という会社を紹介してくれた。ここは、ネパールの会社が運営をする旅行会社である。去年オープンしたばかりで、利用者がとても多いというのだ。最近はインターネットの普及により、旅行会社の需要は減っているように思えるが、この会社が支持される秘密はどこにあるのだろうか。この会社で働く、日本に住んで11年、日本語が流暢なビマラさんにお話を聞いた。

最近は日本人の利用も増えている旅行会社
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Q:お客様の需要で一番多いのは何でしょうか?

A:  やはりネパール人のお客様が、日本とネパールの間の航空チケットを求めるケースが一番多いです。

Q:日本にもたくさんの旅行会社がありますが、なぜお客様がこの会社を利用するのか、そして他の会社との違いはどこにあるのでしょう?

A:  私は以前、H.I.S.という会社で長年働いていたのですが、City Travelは他の会社よりも手数料が断然に安いところが売りの1つです。あと、ネパール人はインターネットを使って航空券を購入するという習慣がありませんので、必ず旅行会社を利用して購入します。その理由はトラブルがあったとき、どうすればいいかわからないことと、クレジットカードを持ってない人も多いからです。

 また、彼らが日本の旅行会社を利用しない理由には、2つのことが挙げられると思います。1つ目は、ネパール人は日本人より密にコミュニケーションをとりたがります。ですので、ちょっとした疑問や不安なことがあるとすぐにスカイプや電話をしてくるので、それに嫌な顔せず、しっかりと対応できることが大事です。しつこいお客様に対して、冷たく対応する旅行会社もあるようなので、同じ習慣を持つネパール人が対応しているという点で安心なのだと思います。

 2つ目は、ネパール人は日本人のように提示された金額をそのまま納得して支払うことをあまりしません。ものすごい勢いで値切ってくることは日常茶飯事です。それにどう対応して折り合いをつけるかは、毎回大変なのですが、その対応次第で、また利用してもらうかにつながるので、大切なことだと思います。そういった対応ができるかということが、他の会社との大きな違いだと感じています。最近ではありがたいことに、口コミで日本人のお客様も増えて来ました。

 丸1日ネパールコミュニティーと接していると、すっかり日本にいることを忘れてしまいそうなほど、自分がネパールへ戻ったかのような気分になった。また、ネパール人が増えたことで、新しい需要が生まれ、ビジネスなどにも影響が出ているのはとても面白いと感じた。

 私がスダン君と町巡りをした日は、たまたまライ族コミュニティーのイベントがあり、その様子も少し見せてもらった。ライ族の民族衣装を着たネパール人が大勢集まって、歌や踊りを披露していた。

ライ族のイベントにて、民族衣装に身を包むライ族の人びと
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 本来なら母国で家族と暮らせるはずが、国や家族の事情によって、日本へと渡り、言葉と習慣の壁にぶつかりながらの彼らの生活。しかしながら、彼らの生きる姿はたくましい。それは、ネパール大地震後のネパール人が見せてくれた強さに通ずるものがあった。私は、2016年の春、大地震からちょうど1年後の4月25日をカトマンズで迎えた。街には崩壊した家や建物が点在していたが、悲嘆にくれる者はおらず、地にしっかりと足をつけて残された当たり前の日々を懸命に生きていた。その淡々と生きる姿は、言葉はなくとも見る者を励ます力があった。

 「ERIKOさん、ネパールのことを書いてくれてありがとうございます」と帰り際に小さなお土産をくれた彼ら。これから日本に在留外国人が多くなるにつれ、人、会社やお店も多様性を考慮した対応や考えを身につけていき、その交流を深めていくことが、同じ土地に共存する者同士、本当に大切になっていくような気がしている。新大久保で見たのは、多文化共生の一つのモデルケースだったのかもしれない。

ERIKO
モデル・定住旅行家
ERIKO 東京コレクションでモデルデビュー。英国、米国、イタリア、アルゼンチン、ロシア、インドで語学習得のための長期滞在をきっかけに、様々な土地に生きる人達の生き方や生活を体感することに興味を抱く。スペイン語留学で訪れたアルゼンチンでの生活をきっかけに、ラテンの地と日本の架け橋になるという目的を持って、2012年から1年4カ月をかけて中南米・カリブ25カ国を旅した。これまで訪問した国は40カ国、約70家庭に滞在。モデルと並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で、現地の人びとの生活に入り、その暮らしや生き方を伝えている。
WEB:http://chikyunokurashi.com