“定住旅行家”という肩書で、世界各地で現地の家庭に滞在をしながら、住まうように旅をし、その国や地域の文化、人の暮らしを体感して伝える旅を続けている。これまで世界40カ国、さまざまな民族や人びとと交流してきた。毎年、1年の半分はさまざまな土地で定住旅行を繰り返している。

 今年の夏、定住旅行地に選んだ国、イタリア。日本人にとっても人気の旅行先の一つである。今回の訪問は私にとっては生涯2度目となるが、観光地を訪ねてみると昔はあれほどいた日本人の姿をほとんど見かけなくなった。目立つのは中国人と韓国人ばかりだ。ヨーロッパで起こったテロの影響なのか、若者が海外へ行かなくなったせいかは分からないが、少しずつ日本人の旅のスタイルや目的も変わってきているのだろうか。

 さて、イタリアは言わずと知れた歴史の国、ユネスコの世界遺産の数は世界一を誇り、文化遺産が48件、自然遺産が5件の合わせて53件が国内に点在している。この数字は過去の栄光をイタリア人が誇りに持ち続けていることの表れでもあるだろう。

地方が世界とダイレクトにビジネスを展開

 イタリアと一言でいっても、独立国家の集まりだったこともあり、それぞれの土地の特徴が濃く表れていて、方言も日本と同じくらいたくさんある。イタリア産業の特徴も、小さな都市単位で集積している。例えば、モデナはフェッラーリ、ムルジャは家具、エンポリはアパレルなど、高付加価値製品を世界に輸出し、地方が直接世界を相手にビジネスを展開している。

 国力が弱い中で地方がこれほど強い理由は、イタリア人のアイデンティティーが地元に強く帰属しているからだろう。地方によって歴史や個性が独特であるため、アイデンティティーが形成されていくのは、やはり生まれ育った場所。また、政治の不安定さから多くの若者は、イタリアの国家に不信感を抱き、恩恵をあまり感じていない。さまざまな要因が作用して、国に頼らず地方が世界とダイレクトにビジネスを展開しており、日本の地方創生のモデルとしても取り上げられている。

 ここ10年ほどイタリアでは経済危機が続いており、移民は増える一方で、多くの若いイタリア人は出稼ぎに海外へ流出している。そんなイタリアでは、これまでになかったトレンドが出てきている。それは、「物を捨てない」ことだ。

レストランで残したピザを最近は持ち帰られるようになった
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 「物を捨てない」ことから、新たなビジネスも生まれている。仕立屋さん「Sartoria サルトリーア」である。仕立屋さんは既存の職業であるが、これまでの仕事といえば、衣服などを修理することがその目的であった。最近になって、この仕立屋さんの役割は服を修理することだけでなく、新しく現代のスタイルに蘇らせる仕事として確立するようになった。

 着なくなった衣服などをリサイクルしたり、古着として販売したりするのは、これまでにもあったことだ。最近では、若い人たちの間でも新しい洋服を買うのではなく、おばあちゃんやお母さんが着ていた古い服やかばん、アクセサリーなどを、現代のファッションや着る人に合ったようにリメーク、デザインして蘇らせて活用しているのだ。