整形はステイタス

 町を歩いていると1日に数回は、鼻が包帯で覆われた男女を見かける。初めの頃は、単純に鼻を怪我しているのかと思っていたが、そんなに多くの人が偶然鼻を怪我するはずがない。彼らは鼻を整形した人たちなのだ。日本であれば、整形は公表するものではなく、どちらかと言えば、他人に気づかれないようにする、隠すことが一般的だ。しかし、イランでは整形は一つのステイタスであり、自慢要素でもあるのだ。

 ではどうしてこんなにもイランで整形が流行っているのか。現地で多くの患者を抱えるドクターのM氏に話を聞いてみた。21時、病院の待合い室は診察を待つカップルであふれている。座って順番を待っていると、隣のお姉さんに「あなたはどこを整形するの?」と聞かれた。誰もが自分の整形を隠すことなく堂々としてる。

――いつ頃から整形をする人が増え始めたのでしょうか?

 10年ほど前からです。イラン人の鼻は概ね高いです。それによって、呼吸障害が生じたり、また外見のコンプレックスからメンタルの問題を抱えることがあるのです。そのため、鼻を低くしたり、小さくするための手術を行います。

 昔は、今より自分に自信を持っている人が多く、それを個性と捉えていました。最近はSNSなどの普及で、みんなが共通して感じる美しさが認知され、それに自分を合わせる人が多くなっているのではないかと思います。ただ、私の場合は、前述の医学的な問題がない限り、単純に美しさを求めるためだけの手術はしていません。

――患者さんはどの年齢層が多いですか? また男性と女性の割合はどのくらいでしょう?

 一番多いのは、22歳-30歳です。若い人では18歳くらいの方もいます。男女比は、私の感覚では、女性7割、男性3割くらいではないでしょうか。また、ヨーロッパや中東から来る患者も多いです。イランはこの辺りの国と比べると手術費用が非常に安く、鼻の手術であれば、約500万トマン(日本円で約13万円)ですることができます。

――先生は、イラン女性が顔を整形する一番の理由を何だと考えますか?

 それは間違いなく、ヘジャブでしょう。顔でしか美を判断できないので、女性はそこに注力します。イランの女性が目や唇のメイクをしっかりしているのは、髪で自分の個性を表現することができないためだと思います。イランでは他国と比べて、体の整形は圧倒的に少なく、鼻を始め、頬や唇が圧倒的に多いのです。昔の人に整形が少なかったのは、イスラム教になる以前、いわゆるヘジャブの着用が義務付けられておらず、髪型や自由な服装によって自分を表現できたからという理由もあると思います。

 実際に整形をしたガハゼルさん(24歳 看護師)にもお話を伺ってみた。

――鼻を整形したきっかけを教えてください。またいつ手術しましたか?

 手術したのは、去年(2017年)の7月です。私の鼻は大きくて筋が曲がっていて、それにコンプレックスを感じていました。イランは整形費用もそんなに高くないですし、周りの友だちも経験がある子が多かったので、特に迷いもなく手術を受けました。

去年整形をしたガハゼルちゃん。手術後の鼻
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――実際にやってみてどうでしたか?

 思っていた以上に痛かったです(笑)。でも、今は自分の鼻に満足しているし、自分は前より美しくなれたと自信がつきました。現在は定期的に術後の様子を診察してもらいに病院に通っています。

――ご両親はどのような意見を持っていますか?

 私の両親は整形に賛成だったので、彼らも満足しています。私の写真をいろんな人に見せて、自慢しているようです。

ガハゼルさん(左)と彼女の母親(中)
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手術前のガハゼルさん
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手術後:術後で包帯を巻いた状態
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 整形をトピックとして扱いたいと思ったとき、誰が質問に答えてくれるだろうかと不安に思っていた。しかし、実際はガハゼルさんのように、ぜひインタビューしてほしいと手を上げてくれる女子がほとんどで、イランでは本当に整形がステータスの1つなのだと感じた。イランには目がぱっちりとして、まつげの長い、目鼻立ちのはっきりした美女が多いが、彼女たちは日々メークアップ技術や顔を際立たせることに余念がない。デパートに行けば、化粧品売り場は多くの女性でにぎわっている。日本にはたくさんのコスメが存在するが、それがイランで展開されたら、大きな話題になるような気がしてならない。

ERIKO
モデル・定住旅行家
ERIKO 東京コレクションでモデルデビュー。英国、米国、イタリア、アルゼンチン、ロシア、インドで語学習得のための長期滞在をきっかけに、様々な土地に生きる人達の生き方や生活を体感することに興味を抱く。スペイン語留学で訪れたアルゼンチンでの生活をきっかけに、ラテンの地と日本の架け橋になるという目的を持って、2012年から1年4カ月をかけて中南米・カリブ25カ国を旅した。これまで訪問した国は40カ国、約70家庭に滞在。モデルと並行し、「定住旅行家」として、世界の様々な地域で、現地の人びとの生活に入り、その暮らしや生き方を伝えている。
WEB:http://chikyunokurashi.com