各地の家庭で生活を体験する、“定住旅行”を行なっている私が43カ国目の滞在先に選んだのは、中東イラン。女性であれば中東という地域のオリエンタルでエキゾチックな雰囲気に一度は漠然とした憧れを抱いたことがある人も多いのはないのだろうか。私もその一人であった。近年、不安定な情勢を抱える中東エリアで、治安に問題のない国といえば、イランくらいだろうという理由で、この国に滞在することを決めた。

 渡航前はイメージが湧きづらく、メディアから知る情報はとても好感が持てるものではなかった。だが、実際に来てみるとすぐに大好きな国になってしまった。おいしい食事、国内に点在する価値あるペルシャ帝国時代の史跡、現地の人の手厚いおもてなし、治安の良さ。旅行先に悩んでいる人には、真っ先にお薦めしたい国である。

 さて、イランは多くの人のイメージ通り、イスラム教を国教としている国である。その社会体制から、女性社会と男性社会では、それぞれに異なった世界が見えてくるような気がする。私は女性なので、今回の滞在中は男性よりも女性と接するほうが圧倒的に 多かった。その中で、私が何度も目にすることになったのが、イラン女性の「整形」の実態である。

国ごとに違う、美女の条件

 世界各国で滞在を繰り返す中で、国や地域ごとの美意識の違いを感じてきた。例えば、イタリアでは黒髪のロングは美の象徴と言える。私が長い髪を短く切った途端、イタリア男は私を“おばあちゃん”と呼ぶようになり、町で男性から声をかけられることはすっかりなくなったことがあった。

 また、中南米で整形といえば、お尻を大きくするための豊尻が一番ポピュラーである。お尻だけでなく、全体的にふくよかな女性のほうが圧倒的にモテる。日本人が好む痩せ型や小尻とは真反対とも言える価値観だ。

 美女の激戦区ロシアでは、美しく長い髪やスタイルの良さ、日焼けした浅黒い肌の女性が人気がある。街を歩く女性たちは、これからパーティーにでも行くのかと思うほど普段からオシャレをして、着飾っている。男性からの視線獲得を競うように美を強調する背景には、女性の人口比率が高いことも影響しているのではと考えられる。

ヘジャブで半減する女性の美しさ

 では、イランではどういった外見の女性が美しいと思われているのだろうか。質問に対して、多くの女性はこう答える。「目が大きくて、まつ毛が長く、小顔で鼻が小さい女性」。体全体で判断する他国と違って、イランでの美の判断基準は全て顔にある。それもそのはず、イランでは女性は体のラインが分からないように膝丈のコートやマントの着用が義務付けられている。また、ヘジャブやチャドルと呼ばれるスカーフで髪を隠さなければならない。そうなれば、公の場での美の判断基準はもっぱら顔だけとなる。

女性はヘジャブで髪を覆うように義務付けられている
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テヘランのランドマーク
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学校の制服。9歳以上の女性はヘジャブを着用しなければならない
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 ヘジャブを身につけた状態で美しければ、それはものすごい美女であることはほぼ間違いない。美しい女性がヘジャブをつけると、どうしてもその美貌は半減してしまうし、とりわけ美しいとも言い難い女性がヘジャブをつけると、素人の盗人のような姿になってしまうこともある。髪というのは人の顔の印象に偉大な貢献をしているということがわかる。イランで美女を見つけたら、その女性は超絶な美女であるだろう。ちなみに、現地のシャンプーのCMは、女性用であってもほとんどが男性のモデルを起用している。

 私がイランに到着した日、巻き方も分からないまま、とにかく髪が隠れるようにヘジャブを装着して飛行機を降りた。日を追うごとに、イランの女性が様々な巻き方をしていることに気づき、ただ単に頭に巻きつけていたスカーフを気にかけるようになった。

 こちらは私がイランに来て間もない頃のヘジャブ。

ヘジャブBefore
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そしてこちらが、1カ月たった後のヘジャブである。

ヘジャブAfter
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 ご覧の通り、巻き方も進化しているし、生地もずり落ちないものに新調した。被り方、色、生地によっても顔映えが随分変わってくるものである。今となっては、観光客と現地の女性との差はヘジャブの巻き方で分かるほどになった。

 ちなみに、人によって全身を黒い布で覆うタイプのチャドルを身につけている人と、モダンな服装にカラフルなヘジャブを着用している人がいるが、その差は個人や家族単位での信仰の深さに比例している。